エナの愛 ⑩
「エリズ……さっきのメリーゴーランド、本当に楽しかったの?」
リズミアはぼやきながら、隣でまだ満足そうな表情をしているエリズを見つめた。
彼女には、このくるくる回る台座に取り付けられた馬の形をした椅子が、延々と回り続けるだけというのが奇妙に思えて仕方なかった。
それに、ただ上下に動くだけの椅子に乗って、歓声を上げている子供たちを見ると、彼女はますます自分が場違いに感じた。
本当に楽しいと言うなら、リズミアはむしろ、少し離れた場所にあるアトラクションの方が興味を引かれていた。
遊園地全体を囲むように張り巡らされたコースター、その上を猛スピードで疾走する鉄の箱……ただ見ているだけで、メリーゴーランドよりも圧倒的に楽しそうだと感じていた。
軌道から聞こえてくる、スリルに満ちた叫び声も彼女の心を引きつけた。
「楽しいというわけじゃないけど、リズミアが思っているほど退屈でもないよ……ただ、グランド帝国を離れる前に、ベファレスおじいさまが連れて行ってくれた時の思い出をもう一度味わいたかったんだ」 「そうなんだ……」
もっと何かを言おうとしたが、エリズの顔を見ると、彼女は何も言えなくなった。
エリズはまだ名残惜しそうにメリーゴーランドを振り返り、その瞳には時間の壁を越えるような懐かしさが浮かんでいた。
「それで、エリズ、次はどのアトラクションに行くの?」
「リズミア、さっきから目を輝かせてあのジェットコースターを見つめてたでしょう?ずっと乗りたかったんじゃない?さっきは私の好きなものに付き合ってもらったから、次はリズミアの番だね」
エリズがそう言いながら、突然フラッとよろめき、リズミアに寄りかかってしまった。
突然の出来事にリズミアは驚き、彼女の体をしっかりと抱きしめた。
周りを見渡すと、「カスの館」と書かれた奇妙な小屋の前に、空いているベンチが一つだけあった。
エリズの苦しそうな息遣いを聞いたリズミアは、すぐに彼女をベンチに座らせた。
しばらくすると、エリズの顔色が少し良くなってきたが、リズミアは心配で彼女の手をしっかりと握って離さなかった。
「毎回このカス遊園地に来るとこうなるの……ここは魔術式のアトラクションが多くて、私はどうもこの魔力の流れに弱いみたい。以前もおじいさんが連れてきてくれた時も同じで、少し休めば魔力の流れに慣れるのよ」
「魔術式?それって何?」
「魔力を直接使う魔法とは別の魔力の使い方だよ。空間の造形や効果を作り出すために使われるもので、カス遊園地みたいに広い場所ではよく使われているんだ」
エリズは少し苦しそうな顔をしながらも、リズミアの疑問に丁寧に答えた。
【おかしい……他の場所でも魔術式はあるはずなのに、ここではこんなに強く反応してしまうなんて。遊園地がわざわざ魔力が強い空間を作り出すはずがない……】
その奇妙な魔力の流れはエリズの体にまだ影響を及ぼしていた。頭がぼんやりし、まるで大量のワインを飲んだ後のように意識がぼやけていた。
「エリズ、もしまだ体調が悪いなら、何か食べに行かない?朝ごはんを食べていないのが原因かもしれないし、お腹が空いてるだけかもよ?」
「そうだね……そういえば、朝ごはんはちゃんと食べてなかったな」
「次からはちゃんと食べなきゃダメだよ!おいしいものを食べると、元気が出るし、何事にもやる気が湧いてくるんだから!」
「食べ物と元気に直接関係はないと思うけど……」
エリズはそう言いかけたが、リズミアの心配顔が和らいだのを見て、自然と笑みがこぼれた。
彼女はバッグから2枚の金貨を取り出し、リズミアの手に渡した。
「これで、あそこの屋台でフルーツパイを2つ買ってきて。一緒に食べよう」
リズミアが分からないかもしれないと思い、エリズは遠くにある「カースフルーツパイ」と書かれた屋台を指差した。
しかし、食べ物を見たリズミアはすでに待ちきれない様子で、すぐに頷くと、金貨を握りしめ、屋台へ飛び出していった。
金貨をカウンターに叩きつけ、休んでいた店主を驚かせてしまった。
「……お嬢さん、フルーツパイを2つでいいんですよね?」
「あなたが言ってるのがそれなら、そうかも!」
興奮して期待に満ちた目で店主を見つめるリズミアに、店主は少し困惑した表情を浮かべた。
「……ごめんなさい、彼女は私の友達なんです。フルーツパイを2つお願いします、看板のものです」
「エリズ!体調がまだ万全じゃないんだから、無理しないで!」
突然隣に現れたエリズに驚いたリズミアは、彼女を咎めながらも、エリズを再びベンチへと戻すように押した。
「もう大丈夫だよ。リズミア、ジェットコースターに乗りたかったんでしょ?フルーツパイを持って、あそこに行こう」
リズミアはまだ疑わしそうにエリズの顔を見つめていた。
先ほどまで顔が青ざめていたのに、今は何事もなかったかのように振る舞うエリズが、どうにも不自然に思えた。
「お嬢さんたち、フルーツパイができましたよ」
彼女たちが話している間に、店主はすでにフルーツパイを2つ作り、手のひらサイズの紙皿に乗せて差し出していた。
その紙皿には、薄切りにされたフルーツが山のように積み上げられ、間に四角いクッキーが差し込まれ、爽やかなバニラの香りが漂うクリームがたっぷりかかっていた。
さらに、そのクリームの山の上には、ピンク色のさくらんぼが一粒乗っていた。
リズミアは待ちきれずに紙皿を手に取り、クッキーでクリームとフルーツをすくい上げ、一気に口に運んだ。
フルーツの甘さと、クリームに混ざった氷のような冷たさが口の中に広がっていった。
「これ、美味しい!エリズも食べてみて!」
「私は自分の分があるから、大丈夫だよ」
リズミアの満面の笑みを見て、エリズの心の中にあった不快感もいつの間にか消え去り、彼女の顔にも笑顔が浮かんだ。
ベファレスはもうそばにいないけど、もう寂しさは感じなかった。
リズミアの隣を歩きながら、エリズは心の中でそう思った。
【大事なおはなし!】
本作品を読み進めていく上で気に入ってくれたら、
・ブックマーク追加!
・下の【☆☆☆☆☆】からポイント評価!
この2つを行ってくれると、作品の大きな力になります!
初めての小説創作なんですけど、何卒よろしくお願いいたします!




