迷える少女①
「ここ……ここはどこ……?」
少女は両手で自分の体を抱きしめながら、震える声を漏らした。
彼女は吹き荒れる雪原の中、必死に歩いていた。
顔に当たる豆粒大の雪を感じていたが、凍りついた頬はその冷たい痛みを感じることさえできなかった。
少女は薄い淡い青色のドレスを身に纏い、当然ながらこの暴風雪には耐えられない。
赤いリボンで束ねられた水色の長い髪は、狂風に吹かれて空中を舞い続け、一瞬も垂れることはなかった。
滑らかで繊細なシルクのような素材で織られたその青い衣装は、この強風にさらされて寒さを凌ぐことなどできない。
風に乗った雪は、連続して彼女の体に叩きつけられていた。
少女の華奢な体は、周囲の雪松と比べてもあまりにも頼りなく、立っているだけでも全力を尽くさなければならなかった。
それでも、凍える風は彼女を見逃す気配はなかった。
むしろ、この禁域に不遜に足を踏み入れた哀れな者を罰しているかのようだった。
フィンリル山脈を越えようとする旅人はしばしばいるが、ほとんどが戻ることができない。
たまに生還者がいるが、その者たちは恐怖の表情で、山々の間に巨獣の咆哮が響いていたと語る。
山脈の両側に広がる雪松は、その枝に厚く積もった雪に覆われ、遠くからはその緑色がまったく見えない。
白く連なる山脈と灰色の空、雪の幕に覆われた地平線が広がるだけだ。
深い積雪に埋もれた平原は、白の恐怖を完璧に表していた。
旅人たちは、吹雪に耐えながら老人のように体を折り曲げて進むしかなかった。
方向感覚を失った絶望の中で、希望を捨て、この雪原に永遠に眠る者も少なくない。
もしかしたら、生還者が聞いた咆哮は、この山谷が彼らの無知に対して与えた厳しい警告だったのかもしれない。
「誰か……誰か、助けて……」
彼女は震えながら呟いたが、そのか細い声はすぐに吹き荒ぶ風にかき消されてしまった。
【このままここで死んでしまうのだろうか?】
進むべき方向さえわかれば、もう少し頑張れたかもしれない。
しかし、分かれ道に立たされ、進むべき道が見えない絶望感は、想像以上に胸を締め付けてきた。
全ての力を使い果たした彼女は、ついに雪の中に倒れ込んだ。
倒れるとすぐ、背中には降り積もった雪がのしかかり、もう立ち上がることはできなかった。
生きたいという意志はまだ消えていなかったが、同時に「ここで倒れても仕方ない」という悪魔の囁きが、彼女の耳元で響いていた。
ここで倒れたら、永遠に眠り続けることになる。
体が震え続けているが、彼女はその理由がわからなかった。
寒さで体内の最後の熱が奪われているのか、それとも死の恐怖に体が最後の抵抗を示しているのか――。
「寒い……お腹もすいた……」
呟く声さえ弱々しく、リズミアはもう一歩も進めないことを悟っていた。
感覚を失い、体の動きは自分の意思では制御できなくなっていた。
上空で吹き荒れる風の音さえ、徐々に彼女の意識から遠ざかっていく。
ただ一つ感じ取れるのは、自分の意識が遠のいていく現実だけだった。
もう限界だ。
「ここで倒れた方が、むしろ幸せなのかもしれない……」
彼女は自嘲気味に呟きながら、ゆっくりと目を閉じた。
その絶望に満ちた心は、今、少しだけ安らぎを感じていた。
【大事なおはなし!】
本作品を読み進めていく上で気に入ってくれたら、
・ブックマーク追加!
・下の【☆☆☆☆☆】からポイント評価!
この2つを行ってくれると、作品の大きな力になります!
初めての小説創作なんですけど、何卒よろしくお願いいたします!