表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
純白幻想物語 吸血鬼の記憶の旅  作者: 水橋キレシ
第1章 呪われた国
14/92

迷える少女 13

「……ねえ、エリズ、もう結構長い時間、森の中を歩いているよね……お腹空いたよ……」


 リズミアがぼやく声に合わせて、彼女のお腹も「ぐーぐー」と音を立てた。


 そんな彼女のやる気のない姿に、エリズは仕方なく長く息を吐いた。


「さっきご飯を食べたばかりなのに、もう食べたいの? まあ、用事が終わったらすぐに帰ろうよ。おじいちゃん、もう夕飯を作って待っているだろうし。」


 エリズは振り返りながら、リズミアの柔らかい頬を軽くつまんだ。


 その微笑の中には、ほんのわずかな寂しさが垣間見えた。


 再び歩き出してしばらく経った頃、リズミアとエリズが足を止めたのは、ちょうど夕暮れ時だった。


 地平線に沈みかけた夕日が、半分だけ空を照らし、残された陽光が黄昏と夜の境界を曖昧にしていた。


 星が点々と瞬く空は、まるで天の川のように広がっていた。


 道の先に光が見え、その先には崖の端にポツンと立つ墓石があった。


「お母さん、オリサが来たよ。」


 エリズは呟き、墓石へと足を向けた。


「エリズ……ここに眠っているのが、あなたの会いに来た人なの?」


 エリズの心情を感じ取ったリズミアは、追いかけることをためらい、ただエリズの背中を見つめた。


 今のエリズは、さっきとはどこか違うように感じた。


 今は、彼女に近づいてはいけない。


 そう感じた。エリズが、誰にも邪魔されたくないと。


「エリズは……本当に……長い間、お母さんに会いに来られなかったから、きっと……寂しかったよね。」


 エリズは道端で摘んだ花を墓前に置き、涙で滲んだ目で墓石を見つめた。


 その口調には、いつの間にか悲しみが混じり始めていた。


「次に会いに来る時には、強い子になってるって……約束したのに……でも、やっぱり耐えられなかった……ごめんなさい……」


 彼女は、誰にも泣いている姿を見られたくないかのように、両手で顔を覆った。


「一度だけでいい……会いたいよ……お母さん……」


 彼女は墓前で膝をつき、まるで自分を責めるように、すすり泣きながら呟いた。


 リズミアは静かに、涙を流すエリズを見つめ、その悲しみがまるで海嘯のように押し寄せてくるのを感じた。


 ただ、そこでエリズの泣く姿を見ることしかできない自分が、卑怯に思えた。


 何かしなきゃ。エリズのために。


 何としてでも、エリズを助けなければ。


 しかし、その思いとは裏腹に、無力感がリズミアを締め付け、体を動かすことができなかった。


 そうして、どれだけの時間が経ったのか分からないまま、リズミアはただ、エリズの背中を見つめていた。


 時間の流れが無限に長く感じられ、粘りつくような絶望感に包まれた。


「……さあ、リズミア、帰ろう。」


「エリズ……」


 リズミアは、立ち上がったエリズを見つめ、その悲しみが胸に重くのしかかる。


 しかし、エリズが振り返ったその瞬間、リズミアの涙腺は自分でも気づかないうちに崩壊した。


 背後の夕日が照らすエリズの顔には、涙痕がくっきりと残っていた。


 それでも、彼女はまるで悲しみを隠すように、微笑んでいた。


 その笑顔は優しく、強く見えたが、死にかけるほどの苦しさと同じくらいの絶望を感じさせた。


 まるで輝きを失った星のように、儚く淡い金色の光を放っていた。


 ——エリズのお母さん、もう亡くなっているの?


 ——じゃあ、エリズとベファレスおじいちゃんは、二人で支え合って生きているの?


 無数の疑問がリズミアの心に浮かんだが、彼女はそれをエリスに聞く勇気がなかった。


 胸の痛みを抱えながら、次の言葉を待つしかなかった。


 どれほどの時間が過ぎたのか分からない。


 ようやくエリズの唇が微かに動き、ぼそっと呟いた。


「……もう夜も遅いし、帰らないと道に魔物が現れるかもしれない。」


「……うん、わかった。」


 本当は……


 エリズがお母さんにもっとたくさん話すと思ってたのに……


 もっと、彼女の心に近づけると思ってたのに……


 でも、なぜか分からないが、エリズの決断を前にして、リズミアは安心感を覚えていた。


 彼女の心に触れるのは、まだその時じゃないのかも。


 そんな思いを抱きつつ、リズミアは再び無邪気な笑顔を浮かべた。


「お腹すいたよ〜早く帰ってエリズの作った夕飯が食べたいな〜」


「リズミア、先に行ってて。私もすぐ追いつくから。」


「じゃあ、エリズ、私を置いてかないでね〜」


 リズミアは言い終わる前に、山を駆け下りていった。


 エリスはその銀色の背中が遠ざかるのを見つめ、再び墓石に目を向けた。


 夜が深まり、文字の読めない墓石を眺めながら、彼女は静かに呟いた。


「……お母さん、私、もう一人じゃないよ。」


 エリズは微笑みながら、温泉から持ってきた水を墓石に注いだ。


 この別れの後、次に会うのはいつになるだろうか。


 グランドの人々は、永別の際に手に水を注ぎ、相手の未来の道の無事を祈る風習がある。


 そして、これがエリズと、記憶の中で最もぼんやりしている大切な母との最後の別れだった。


 墓石を伝う水が、彼女の決意を強くした。


「この道を進んでいけば……きっと、お母さんが教えてくれた『幸せ』を手に入れられるよね。」


 エリズは手に握った瓶をぎゅっと握りしめ、涙を浮かべた瞳に、強い決意の光が宿っていた。


「どんな危険があっても……お母さん、守ってくれるよね?」


【大事なおはなし!】



本作品を読み進めていく上で気に入ってくれたら、


・ブックマーク追加!


・下の【☆☆☆☆☆】からポイント評価!


この2つを行ってくれると、作品の大きな力になります!


初めての小説創作なんですけど、何卒よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ