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忘却の魔法  作者: さり猫
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はじまり

人はいつか大切な思い出さえも忘れてしまう生き物だ…。

夢を見る。神社でひどく悲しそうな顔をしている女の子に声をかける夢。背丈は今の俺と同じぐらいか少し低めだが、顔にはモヤがかかっていてよくわからない。そして声をかけるところでいつも目を覚ます。

「今日もか。。」

俺は目をこすりながらベッドから起き上がり、目覚まし時計を確認する。[8時30分]

「どわぁーーー!!!遅刻じゃねぇーか!!」

俺は急いで制服に着替えて家を出る。蝉の声が夏を感じさせ、強い日差しが俺のやる気を下げてくる。

「あちぃ、、どうせ間に合わないし、さぼるか。」

俺は学校へ向かうのをやめて家に戻り、誰もいないリビングへと向かう。テーブルに一万円札と置手紙がある。

『しゅうへ おはよう。お母さんは先にお仕事に行ってきます。朝ごはんは冷蔵庫に作り置きがあるから食べてね。今日も帰りが遅くなると思うからお昼と夜ごはんはこのお金でなにか買って食べて。 お母さんより』

俺の親は俺が小学5年生の時に離婚した。それ以来、母親は女手一つで俺を育ててくれている。ソファーに寝ころんで二度寝を決めようとした時、『ピンポーン』とインターホンが鳴った。

「誰だよ、こんな朝早くに。」

出るのが面倒だから無視を決めていると、『ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン…』インターホンが鳴り続ける。

「うるせぇーよ!」

俺はしぶしぶ玄関に向かいドアを開ける。

「はーい。」

そこには、俺と同じ制服を着ている大柄な男子とその横に小柄な女子が立っていた。

「よっ!やっぱ、まだ家にいたか。」

「ねっ?私の言った通りだったでしょ?」

二人は顔を合わせて笑っている。

「なんでお前らがここにいるんだ?」

玄関の前にいたのは俺と同じクラスの大里 大和と今宮 蛍。二人は小学生の頃からの友達で幼馴染ってやつだ。

「待ち合わせ場所にいつまでたっても来ないから迎えに来てやったんだろうが!」

大和がそう言うと、俺の首に腕を回してきた。

「わりぃ、、寝坊した。」

申し訳なさそうに俺がそういうと、蛍が心配そうな顔をして、聞いてくる。

「修、どうしたの?なんか元気ない?また、夢見たの?」

夢のことは二人に話したことがある。ここ1ヵ月ぐらい、二人も似たような夢を見るそうだ。顔も声もわからない女の子と一緒にいつもの神社で遊ぶ夢。

「あぁ、、なんだろうな。これ。」

下を向きながら俺が言うと、二人は黙り込んでしまった。

「「「・・・」」」

蝉の声だけが響き渡る。この重たい空気の中、口を開いたのは大和だった。

「よし!いつもの場所行くか!」

突然のことで俺と蛍は目が合う。

「学校はどうするのよ?」

「今から行っても間に合わないし、1日ぐらいさぼっても文句言われねぇよ。」

手を腰に当てて、なぜか自信満々の大和。

「気分転換に行くか。俺も今日はさぼろうと思ってたとこだったし。」

俺がそういうと、大和がニヤリと笑みを浮かべながら蛍に聞く。

「蛍はこのまま学校に行くか?」

答えのわかりきったことを聞くところは性格が悪い。

「さぼる。。」

蛍は口をとんがらせながらつぶやくと、大和は満面の笑みになる。

「よーし!そうと決まればしゅっぱーつ!!」

大和の掛け声とともに俺も蛍もつられて笑顔になる。やっぱり大和にはかなわないな。

学校とは反対の方面に歩いていくと木々が生い茂る中、長めの階段が見えてくる。

道中は日差しが強くて暑かったが、階段を上っている最中は日光を木々がさえぎってくれてか意外と涼しかった。

頂上までたどり着くとそこには古びた神社がある。

小学生の頃はよくここで遊んでいたが、長年手入れがされていないのかいつ崩れてもおかしくないため、立ち入り禁止になった。それでも俺たちは、誰かが落ち込んでいるときや悩んでいるときはここに来て話をしたりしていた。

日差しはあるが、風が心地いい。

「やっぱりここは落ち着くなー。」

大和が大きく伸びをする。ただでさえでかいのにさらにでかく見える。

「私たちの思い出の場所だもんね。」

「そうだな。最後に来たのは大和が上条先輩に告白してフラれた時だっけ?」

「半年前の話を掘り返すなよ!」

「「「あははは」」」

『・・・けてくれ。』

かすかに女の人の声が聞こえた。

「蛍なにか言ったか?」

「ん?何も言ってないよ。」

蛍は首をかしげる。気のせいか。。

『助けてくれ。』

「えっ?」

やっぱり女の人の声が聞こえる。

「どうしたんだ?修。変な声出して。」

大和が不思議そうにこっちを見てくる。

「今、女の人の声が聞こえなかったか?」

「怖いこと言わないでよ。」

困り顔で蛍がこっちを見る。二人には聞こえてないのか?

『どうか、馬鹿な妹を助けてやってくれんか。』

やっぱり聞こえる。助けるって言ったって何をどうしたらいいんだよ。

『今の魔力では一人が限界じゃ。妹の友であるお主に託す。』

魔力?妹?託すってなんだよ。

『妹を頼んだぞ』

ドクンッ!

急に心臓が圧迫されるような感覚に襲われる。息ができない。激しい頭痛と吐き気が一気に押し寄せてくる。

「修っ!?」

「どうしたの!?修!?」

胸を押さえながら俺はその場に倒れこむ。

「蛍!救急車だ!」

「わかってる!」

意識がもうろうとしてくる。

「今・・・呼んでるから!」

「・・・ぬなよ!絶対・・・けてやるからな!」

二人の声がどんどん遠のいていく。目の前が真っ暗になる。俺、死ぬのか。

せめて最後に、母さんに感謝を伝えたかった。。。

『私を友達と呼んでくれてありがとう。』

夢に出てくるあの女の子、君は一体誰なんだ。

――意識が戻ってくる。なんか騒がしいな。大和と蛍か?いや、人の声が多いぞ。

ゆっくりと目を開けるとそこは見たこともない場所だった。

「どこだ!?ここはぁぁーーー!!!」


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