2 おに
その日、じいじは、ぼくの目のまえにじいじのおもちゃばこをおいた。
「さあて、きょうは、どんなおもちゃが出てくるのかな? 」
「……」
「よし、きょうは、これだあ」
といいながら、じいじはきょうのおもちゃをとり出そうとしている。
じいじは、立てたふたのかげで、ぼくになにをしているのかわからないようにしている。
「じいじ――。どうしたの? はやくみせてよ――」
じいじは、いつものやさしいこえではなくて、ふとくてこわそうなこえを出しながら、おもちゃばこのふたをしめた。
「いたずらっ子はどこだあ。わがままっ子はどこだあ。おやのいいつけをまもらない子は……どこだあ――。いたら、おにさまが、くってやるぞう。」
といいながら、口にきばをつけ、手のゆびにはながいつめをつけ、りょうほうのうでをのばしたじいじおにが、ぼくにせまってきた。ギャ――といいながら、ぼくは、にげた。
はっ、はっ、はっ……
じいじは、わらいながら、きばとつめをはずした。
「じいじ、きょうのは、こわすぎだよ……」
「じいじもな、むかぁし、おっとうからおどされたよ。まめまきの日だったんだ。おっとうのおにがな、こわすぎてな、まめをなげるまえに、おっかあのとこへにげてしまったんだ……そのあと、おっとうとおっかあが、なんかはなししていたのをおぼえてる」
「……」
「たぶんだけどな、おっとうのおにがこわすぎ、っていって、おっかあがおこってたんじゃないかなあ。だから、そのあと、おっとうが、じいじに、ごめんなって、あやまってくれたのをおぼえてる……」
「やさしいおとうさんだったんでしょ? 」
「ああ、そうだよ。いつも、じいじとあそんでくれてた……」
「そうちゃん……そろそろ、かえるよ。じいじにさよならをいってね」
「うん、おかあさん。じいじ、またくるね。バイバイ……」
「ああ、いつでも、おいで……」