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氷魔法のレベルが上がっていますね

「考えられる可能性はいくつかあるかな」


 過去に戻る系のパターンは限られる……そこから紐解けば影山の考えも分かるかもしれない。


 でもとりあえずは休みたい。時間が戻った影響で体力も有り余ってるけど、何せ溺れた後だし……精神的な休息が必要だろ。


 しばらくは海に近づきたくもないし──────


「……来栖クン?」


 背後からかけられた声に、俺は振り向く。


 案の定そこにいたのは灰崎廻。さっきまで一緒にいて……意識が消える前、最後に見たのも飛び込んできた彼女だ。


「先輩、俺だけじゃないですよね?『戻った』のは─────」


「来栖クンッ!!」


「いてっ」


 かなり強い力で肩を掴んできた灰崎先輩。これじゃあ前回と……最初にこの海に来た時と逆だな。


「い、生きてるんだよね?ワタシ達……戻っちゃったんだよね?」


「時計を信じる限りは。まぁ未来に飛ぶ事が出来るなら過去へ行くのも出来て当然とも言えますか……」


「え、あ、うん……」


「となると、そうか……俺達の記憶が消されたって説が消えますね。やっぱり影山は時間を─────」


「……ごめんね」


「え」


「ワタシの、せいで……」


 俺の肩を握る手は、あり得ないほど震えていた。


「ワタシがちゃんと見てれば、あんな……」


「いやいや、先輩のせいな訳無いじゃないですか。俺も少し不注意でしたし、それに現に今、俺は生きてる。重視すべきなのはこれからですよ」


 確かにビビったさ。もうしばらくは泳ぎたくないくらいにね。


 でも今は─────この意味不明な非現実的状況が、海への恐怖をかき消して俺の脳を危機感でいっぱいにしている。


「そ、そうだけどさァ……」


「とりあえず話し合いましょう。俺と灰崎先輩に記憶があるなら、彼も──────」


 と、その時だった。


「うぉおおおおおおおおおお!!」


 巻き上がる悲鳴。舞い上がる砂。


 周囲の人間など知らず、一直線に俺達の方へと向かってくる筋肉ダルマなんてそりゃ、一人しかいなかった。


「まずいぞ師匠ッ!」


「うん、流石に時間が戻るとなると……」


「七華との砂の城作りがあまりにもつまらなすぎて、多分寝ちまったんだろうな、オレ……いつの間にか11時だったんだッ!これってつまり、丸一日寝ちまってたって事だよな……ッ!?」


「……そっか……」


 詩郎園豪火の焦りに満ちた告白を聞き、抱いた感想はたった一つだった。


「そりゃつまらんでしょ……」










 ー ー ー ー ー ー ー










「まず一つ目が……」


『前回』と同じように灰崎先輩と豪火君と卓を囲み、飲み物を手に喧騒の中を過ごす。


「『俺が死ぬのを阻止するために影山が時間を戻した』説」


 あの時……俺は足を踏み外して海へ落下した。


 状況を理解しきれなかった俺は呼吸をすぐに止められず、意識を失い……そこで時が戻った。


「時間が戻るってよぉ……改めて聞くと、その……」


「でも実際に起こっちゃってるからねェ。受け入れるしかないってワケ」


「もちろん、影山にも何らかの制限はあると思います。そうじゃなきゃ、あいつは一人で引きこもってるはずがない」


 もし自由に時間を操れるのなら─────過去に戻って『来栖悠人を変えた発言』をしないようにするはずだ。


 そうしてこの世界を……『元通り』に戻したいはずなんだ。


「『7月26日午前11時に飛ばす』……それが過去か未来かは問わねェ。こんな感じ?」


「22日からここに来たのも同じ力によるものだとは思います」


 だが、これが何らかの『力』だとして。


『能力者は6人いる』という影山の言葉に、影山自身は含まれるのだろうか。


「……で、別パターンも考えられるんでしょ?『戻った理由』は」


「はい。……二つ目は、『12時半から11時へ1時間半巻戻される』説」


「ただ単に、それに偶然来栖クンが溺れる瞬間が噛み合ったって事?」


「そうなります」


「なるほどねェ……」


 灰崎先輩が少ししっくり来ていない様子だが、俺もそれには同意出来る。二つとも根拠が無い以上は、偶然だという可能性は信憑性が無い。


 仮に12時半が能力発動のタイミングなら、それは───────


「で、結局どうすんだよ。何のための話し合いだ?これ」


「え?」


「死ぬ時に戻るんなら、死ななければ良いじゃねえか」


 ……ただそれだけ。言われてみればそうだけど──────アニメの見過ぎなのかな。


 時間が戻るという異常事態は、例え条件付きだろうと無視出来ない危機感があった。


「死ななければ、な。あの時、来栖クンが海に落ちた原因の足場……アレは明らかにおかしかった」


「ん?どこがどうおかしかったんだ?」


「あまりにもピンポイント過ぎたんだよ、日常の波動が無い場所が。アレはまさに、誰かを海に突き落とすためだけに作られたような異常さがあった。しかも、あんな人気の無い場所に仕掛けられてたんだぜ?誰が来るかも分からない、誰も来ないかもしれないのに」


「……つまり?」


「──────この海の至るところに同じような罠があるかもしれねェ。しかも、ワタシですらそれに気付くのは近寄ってからじゃないといけない……」


 身の毛のよだつ可能性……しかし、十分にあり得る。


「一番の問題は、『記憶を引き継げる』のが能力者である俺達だけという事です。他の人が罠にかかってしまった場合──────」


「戻った後、そいつは死んだ記憶を持ってねえ……って事は何度も繰り返しちまうって事か!?」


「それならまだ良いなァ。ワタシ達以外が死んでも、過去に戻らず死んだまま世界が進む事もあり得るしねェ……」


「もしかすると、それが影山の狙いかもしれませんね──────」


 俺はそう言ってから、ジュースを口に含み……。


(……いや、違うな)


 自分で自分で言った事を脳内で否定した。


 影山の狙い?そんなもの、最初から分かりきっている。


 影山が誰を憎み、誰を嫌い、誰を殺したいのかは───────。

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