海賊と火星の姫①
ハイドラ級巡洋艦ぎゃらくしぃ号のブリッジには久方振りにブリッジクルーが勢揃いしていた。
艦長席に座ったユイと操舵士席の雄大は先程から堂々巡りの会話を続けている。
「だ~か~らぁ、別にもう怒ってないんですってば。俺も裕太郎のヤツ、親父とは仲良くしたいと思ってますよ、いずれはね」
「じゃ、じゃあ、お正月に一緒にお月様に行ってくれますか?」
「いいや、それはちょっと」
雄大は即答する。
「えっ、え~? な、なんでですかっ!?」
「いずれは、って言ったでしょ。ルナシティには帰るけど三が日は避けないと。裕太郎は三が日終わったらすぐ幕僚会議の仮庁舎に出掛けるはずだからその頃を見計らって遊びに行こうよ。そうしたら俺も裕太郎もお互いに顔を合わさずに済む。今のところはそれが一番、きっと向こうも同じ気持ちさ」
「も~! どうしてそこで変な意地を張るんですか?」
「ユイさんこそ、どうしてそんなに俺と裕太郎を仲直りさせたいの? やっぱり目当ては裕太郎のコネで、別に俺のことなんかそこまて好きでも無いんでしょ?」
「意地悪なこと言わないで──もう~!」
ユイは唇を真一文字に結んでムッとした表情を作ると艦長席から立ち上がり、後ろから雄大の肩を掴んで揺さぶる。
「雄大さん、雄大さん?」
「あーもう! 操艦中ですよ、ユイさんは離れて」
「いやです、お正月にご実家に連れて行ってくれるまで離しませんよ」
「だだをこねないでくださいよ、子供みたいだなぁ」
「小さい子みたいに駄々をこねているのは雄大さんでしょ?」
雄大は突然、操舵権を火器管制士席のマーガレットに移譲する。
「マーガレット、ユーハブコントロール!」
「ひゃっ? あ、ああアイハブ!?」
ユイと雄大の痴話喧嘩的なやり取りを羨ましそうに眺めていたマーガレットのコンパネがスライドして操舵のためのスティックとトラックボールが出現する。慌てて舵を握ったので船体が大きくブレるがすぐに補正システムが作動してぎゃらくしぃ号の船内は何事もなく平穏だ。
『ピン、ポーン──ジャイロ正常稼動中──只今、本船は高速移動中です、多少の揺れを感じることがございますが運航に大きな支障はございません。ご安心の上お買い物を続けてください』
マーガレットは冷や汗をかきながら舵を固定する、海図をひらいてログでぎゃらくしぃ号のとったコースを確認すると航路内をいっぱいに使って大きく蛇行していた。
宇宙船での移動は高速のためボヤボヤしていると操舵の数センチのズレが数キロのブレにも繋がりかねない。
(あ、危なかった……)
心臓がばくんばくんと早鐘をうつように鼓動する。
ブリジットとの組み手や海賊をなぎ倒している時よりも現在のこの状況を生命の危機だ判断したのだろうか、マーガレットの身体はアドレナリンを大量分泌していた。
約100人ほどが乗り込む宇宙船のコントロールには大きな責任が伴う。装甲服を着込んで本能の赴くままに低重力下を飛び回るようにはうまくいかない──自分の身体を動かすのとは勝手が違う。
(宇宙船の操縦って──ホント慣れないわ)
「ねえラフタ? お客ってまだ乗ってるんだっけ?」
動揺を隠しながらマーガレットは進行方向右手にある通信士席に座る大人しい青年、ラフタの方を見る。ラフタの方は何事もなかったかのように落ち着いていて、雄大とユイの他愛もない言い合いを微笑ましい光景として楽しんでいる風だった。
「うん、エウロパ船籍のヨットが三つ便乗してるよ、クラブ活動の合宿なんだって」
ぎゃらくしぃ号の船底には民間の小型艇がコバンザメのように張り付いている。
「ゆ、揺れたかな?」
「大丈夫、今ぐらいのブレなら何も感じない。コップに注いだソーダにも波一つ立たない──安心していいよ」
ふぅ~、と安堵の溜め息を漏らすと、マーガレットはようやく人心地ついたのか頬杖をついてユイ達の方を眺める。
「……いい加減にして欲しいものだわ」
「社長がいると賑やかになるよね」
縁側に座って庭で孫たちが遊ぶのを眺める好々爺のように落ち着いているラフタ、いついかなる時においても平常心を保つという点に置いてマーガレットはラフタに大きく劣る。
泰然自若──マーガレットは彼が激しく感情を表に出すのを見た事が無い。
「ハァ、わたくしもまだまだ修行が足りないわねぇ……」
「まだ修行し足りないの? マーガレットは逆に修行し過ぎなのかも」
「どうも宇宙船の操舵や海図の読み取りは苦手だわ。航宙ライセンスも中途半端。嫌になる」
「ちょっと独学で勉強しただけでトリプル、BBBライセンスまで取得できるんだからマーガレットは修行、努力の天才だね」
「あら……いいこと言うのね。ありがとう」
マーガレットはジーッとラフタの顔を見つめる。
「何?」
「いえ、ラフタ。あんたって火星じゃ相当モテたんじゃない?」
「別に。何で?」
「ルックスは良いし、優しくて頭良いし、控え目で余計な事は言わないけど話し掛けたらちゃんと返してくれるし、何より女の子のフォローが上手いわよね……もしかして恋人とかいた?」
「いや、僕自身は女の子にまったく興味無いから」
「は?」
じゃあ男が好きなのか、とマーガレットは言いかけてやめた、これ以上個人の趣味に踏み込むのはラフタに失礼かも知れない。何より図星だった時が怖い。
「だからといって金星の人達みたいな奔放な趣味は無いかな」 考えが顔に出ていたのか、青年は先回りしてマーガレットの疑念を払ってくる。
「そうなの……」
「僕、そもそも大嫌いだし、人間」
「えっ?」
サラッと怖い事を言うラフタ。
「人間って、過度のコミュニケーションを強要してくるくせにひと皮剥いたら利己的で冷淡な生き物でしょ? 親しくするのは猫で十分。それにこの船の皆が僕にとっての家族だよ。これ以上距離感の近い人間は要らないかな」
笑顔の奥に垣間見えるのは人生に疲れ果てたような醒めた瞳。マーガレットはどうコメントしてよいかわからず苦笑いしながら相槌をうつしかなかった。
(ラフタって得体が知れないとこあるわよね、火星東部の人間って皆こんな感じなのかしら?)
ラフタはにこやかに笑いつつ、コンパネの操作に戻った。
「──何これ?」
ラフタはメインビューワーに広域レーダーの情報を映し出す。レーダーには『unknown』という表示が4つと火星船籍の民間船が航路を出たり入ったり、妙な動きを見せている。
「ん?」
ユイと問答を続けていた雄大もこの異常な動きに気付いて、ユイの口に手のひらを当てて塞いだ。
「ちょ、ちょっと休戦、ごめんねユイさん」
「~~??」
ばたばたと手を振り回すユイを残して雄大は操舵士席に座る。
「──海賊だ、間違いない!」
「まあ海賊?」
「チェッ、少し遠い──間に合うかな──」
「間に合わせてください」
舌打ちする雄大の背中を押すようにユイが声をかける。
「今から急げば何とか──マーガレット?」
「はい、宮城操舵士、ゆ、ユーハブ」
「よし、アイハブコントロール!」
雄大はワープドライブの出力を徐々に上げていく。先程まで言い争いをしていた雄大の右肩に手を掛けるユイ、雄大の左手がその上に重ねられる。
「──あ」
自然なふたりの仕草がマーガレットの胸に小さな棘となって刺さった。
(ユイ様と宮城──)
「マーガレット、粒子砲の準備を。ヨットのロックを再確認」
「は、はい」
「社長、進行方向の民間船からのSOSを確認、正式な治安維持活動として記録するよ、銀河標準時ヒトゴー、サンマル」
「はい、ラフタさん──船内と繋いでくださいませんか──」
ユイはビューワーに向かって呼び掛ける。
「本艦は只今から宇宙軍の代行として航路内の治安維持活動を行います。船員は戦闘と救護の備えをお願いします。くれぐれもお客様に危害が及ばぬよう万全の注意を払ってください──繰り返します、本艦は只今から航路内の治安維持活動を行います──」
ハイドラ級巡洋艦のコアが稼働してエンジンに出力を供給する。
「ユイ様、どうかお席に」
「はい」
雄大の操船は巧みなもので船体は安定、繊細なタッチでぐんぐん加速していく、ブレは無い。
むしろ加速していくほどにぐっと安定感が増すような、そんな不思議な気分になってくる。高速移動中でもユイはよろめく事なく艦長席に座りシートベルトで身体を固定する。
最大戦速、船外カメラからの映像確認、ウェポンベイから主砲である二連装粒子砲が姿を見せた。
派手な宣伝文句が消え、船外のホロパネルには木星帝国と連邦宇宙軍、ふたつの旗印が浮かぶ。
まるで太めの猟犬が重たい身体を起こして立ち上がり、牙を剥き出しにしたような獰猛さ。ハイドラ級はもともと機能重視の厳つい外観でありユニコーン級巡洋艦のような洗練されたフォルムは無く、またフェニックス級のような純粋な戦闘艦艇としてのスマートさも持ち合わせてはいない。艦底に店舗エリアを増設した姿はアンバランスで、およそ貴人の乗船としての優雅さとは縁遠い代物であった。
『ブリッジどうぞ、おい宮城どうなってる? 何があった?』
ビューワーに六郎とブリジットの姿が映し出される。
「六郎さん、海賊です。四隻がかりで火星の船を追い回してる。助けないと」
『四隻っておい──近くに他の宇宙軍の船は居ないのかよ。こちとら客乗せてんだぞ? 何かあったら笑い事じゃ済まん』
「襲われてる船のクルーも笑い事じゃ済まなくなりますよ」
あ~、と唸りながら六郎はバリバリと頭を掻いた。六郎には雄大の吐く正論がむず痒く感じる。
『まあそりゃあそうだけどよ。お前のそういう危なっかしい正義感につき合わされる方の身にもなってくれよ……君子危うきに近寄らず、って言うだろ。敢えて危険に飛び込むこたぁねえんだよ』
「六郎のいう事ももっともではありますが……こういう時の雄大さんの判断に間違いは無いと思うのです」
雄大の判断は艦長であるユイの意向に沿ったものだ、それなら六郎には拒否できない。
『まあ……皇女殿下がそうおっしゃるのなら』
「そういう事だから六郎、あんたは残ってるお客様の安全に気を配っておいて」
マーガレットが手のひらを上に向けてお手上げのジェスチャーをしながら命令する、六郎はそれを見て観念したように溜め息を吐く。
『──命令なら従いますけど。四隻相手ってのはなァ……』
『ねえねえ、火星船籍の船なら徒党を組んで船団単位で移動するから宇宙軍とは別の護衛艦とかついてるはずじゃん?』
ブリジットが頭を掻きつつ素直な疑問を口にする。
「もうやられてしまったのかも」
ラフタの言葉に否が応にも緊張感が増す。
『海軍や魚住さんの支店はどうだ? 応援間に合いそうな位置にはいないのか?』
「一応、メッセージは送っておいたけど」
『やつら、肝心な時には居ないよな、頼りにならねえ』
「六郎、文句ばかり言っても始まらなくってよ?」
『てすがねえ閣下……』
「ぼやかないの、あんたは船内で待機、ブリジットはエルロイと一緒にエグザス着用、揚陸艇で待機ね」
『良かった、ちょうど暇してたんだ! 白兵戦あるといいなぁ』
『良くねえよ! 馬鹿だねお前は!』
六郎が手を伸ばしてポカリとブリジットの頭を小突く。
『なんでえ? わたしの存在意義否定しないでよぉ!』
船と船の闘いは接舷されてしまえば最新鋭の軍艦も何も関係無い、性能差はほぼ無くなり小回りの効く船の方が有利になるという遠距離の砲雷撃戦時とは真逆の逆転現象が起きる。そして肉迫してからの強襲揚陸戦闘ボーディングアサルトはシールド出力や艦載機など装備の質で劣る海賊が好む戦法だ、ブリジットの出番は十分考えられるだろう。
(こんな時、艦載機や長距離ミサイルでもあればまた違うんだろうけど。そんなスペースがあるなら在庫確保するもんな)
尚且つ艦載機やミサイルの類は他の兵装と比べて維持管理費用がべらぼうに高い。特に有人艦載機の場合はパイロットの雇用も大きな負担になる。
粒子砲と近接魚雷だけでなんとかするしかない──
◇
ぎゃらくしぃ号は快速をとばしてあっという間に所属不明船と通信可能な宙域にまで距離を詰めていた。
「こちらは正統木星帝国所属ぎゃらくしぃ号です。月の宇宙軍からの依頼で治安維持活動を代行しています。所属不明船の皆さん、直ちにエンジンを止めて武装解除してください」
ユイの声でメッセージを広域発信するが返答は無い。
「こっちが見えてるはずだぞ、一隻だからって舐めてるみたいだな」
こうしている間にも火星民間船の脇を不明船粒子砲がかすめていく。
撃沈するつもりは無く動きを止めるための威嚇射撃を繰り返しているようだ。
「あっ」
突如としてレーダーから4隻のunknown表示が消滅、偵察ドローンからの映像からも不明船の影がかき消えた。
「バカにしてる、いまさら電子暗幕かよ」
「逃げ出したのかな?」
「ならいいけど」
雄大の見立てでは──不明船はいずれもアステロイドパイレーツのドナ級駆逐艦、そしてわざわざ姿を隠したのはぎゃらくしぃ号から逃げるためではない、彼らは武装商船ぎゃらくしぃ号も獲物と考えているからだろう。
(おそらく腕自慢の連中でパトロール艦隊との戦闘経験も豊富だろうけど)
雄大はぺろりと舌で唇を舐める。
(こっちだって海賊のやり口と対処法については士官学校の座学やシャイニーロッドでの研修で熟知してるわけさ)
雄大の操船するぎゃらくしぃ号は最大戦速のまま戦闘宙域に突入した。
コンピューターに不明船の予測進路を入力、主砲出力を抑え、粒子砲を連射用に調整。
「粒子砲射撃準備完了、いつでも」
「射撃のタイミングは雄大さんに一任します」
「左舷上部主砲回頭90度だ」
雄大はコンピューター予測の確率が最も高い座標に主軸を合わせた。ロックはかからないのでオートエイミングは無効、マニュアルで座標を指定した上で照準補正もカットする。
「主砲回頭よし」
「主砲発射、三連準備!」
「主砲三連準備よし」
雄大が叫びマーガレットが復唱する。
「撃て!」
ぎゃらくしぃ号左舷上部の主砲がにわかに光り金属粒子を高速で撃ち出す。それと同時に雄大はトラックボールを操作してぎゃらくしぃ号を左に傾けた、ちょうど艦首を中心にぐるりと横回転するぎゃらくしぃ号の船体。
主砲の三連射は同じ射線を通らず、扇状に広がるような弾幕となって漆黒の宇宙空間を明るく照らす。回転と発射間隔の遅延がもたらすズレは粒子砲のカーテンを発生させた。
突如、何も無いはずの空間が割れて濃緑色の大きな綱板の塊が現れる、重金属粒子が叩きつけられたそれらは激しく揺さぶられ糸の切れた凧のようにコントロールを失って無様に回転した。
「やっぱりドナ級、アステロイドパイレーツだ!」
撃沈こそ無いが薄いドナ級駆逐艦の装甲は最新型の高出力粒子砲には耐えられず、呆気なくひしゃげて艦内重要設備に相当なダメージを受けているようだった。
(すごい……隠れてる相手ニ隻をあっと言う間に無力化した)
マーガレットは雄大の豊富な一対多数の海戦の知識とそれを正確に実行する技術に驚嘆する。
民間船と海賊船の間に最大戦速で突っ込んで、すれ違いざまに扇状の弾幕を張って広範囲の敵を投網にでもかけるように攻撃したのだ。言うは易いが咄嗟にそういう判断が出来るものだろうか。
「艦首上げ! そのまま銀河水平面直上方向にターン! 大回りだ──食いつけよ?」
フットペダルを調節しながらスティックを倒す。
「右舷上部主砲、船体水平面より仰角90度あげ──発射準備」
「仰角最大、よし」
大回りで旋回する船体の真上に向かって砲身が屹立する、本来無防備な背中の部分に射線が通り、最速で通過した宙域への再攻撃を可能にする。
「撃て!」
遠ざかるぎゃらくしぃ号を追撃しようとした別のドナ級の艦首に主砲の一撃が直撃する。
平たいエイのようなドナ級の左舷が空気を入れた風船のように膨れ上がり、大きく弾ける。直撃──エンジンコアが爆発し小さなオレンジ色の火球がドナ級の船体を真っ二つに割った。
「ま、また命中……今度は直撃だね」
ぎゃらくしぃ号の後ろを取ったと思い艦首砲の軸線を合わせたのだろうか、虚を突かれた海賊船は思わぬ反撃に回避運動も防御もままならず致命傷をうける羽目になったのだった。
雄大からしてみれば難易度高め海戦シミュレーションのおさらいをやっているような感覚だが、海賊側はこの100秒にも満たない戦闘で一気に戦力の七割を失ってしまって茫然自失となっていることだろう。
茫然としているのは海賊だけではない、ぎゃらくしぃ号のブリッジクルーですらあまりの展開の速さに理解が追いついていない。ユイなどはまったく状況が飲み込めていないのか、ハラハラしながら雄大の背中を見守っていた。彼女の頭の中では戦闘は今から佳境に入るところのようだった──
◇
当てずっぽうに放った威嚇射撃が偶然命中した、と雄大の叩き出した戦果にケチを付ける者もいるだろうが──回転式の主砲を持つ最新鋭艦で、据付型の武装と雷撃がメインの旧型駆逐艦と戦うことを脳内でシミュレーションすれば当然こういう絵が浮かぶだろう。
士官学校で得た知識を100%活かした操船と、海賊行為で培った自己流の操船の差が如実にあらわれたというだけで、別にこれぐらいの戦果があっても不思議ではない。
「ユイさん、降伏勧告を」
「は、はい……ええと」
ちょっとパニックになっているユイに代わって雄大は残り一隻となったアステロイドパイレーツに呼び掛ける。
「もう勝ち目は無いぞ、電子暗幕とシールドを解除して降伏するんだ──あ、こらそこの火星船、危ないからこっちに来なさい」
火星の民間船はこれ幸いとばかりに宙域を離脱しようとしているようだ。
目を丸くしたラフタとマーガレットは互いに顔を見合わせた。
(えっ、終わったの? こっちは一発も撃たれてないわよ)
(たぶん……よくわからないけど勝ったみたいだね)
ふたりは自分達が乗っているぎゃらくしぃ号が『高性能軍艦』であることを再認識した。
(これが本来のぎゃらくしぃ号の姿)
マーガレットはあえなくデブリと化したドナ級の残骸を見ながら生唾を飲み込んだ。ガレス号と戦った時よりも雄大は着実にこのハイドラ級巡洋艦を上手く乗りこなしている。
(やっぱりコイツって、すごいかも……)
普段の何倍も雄大の横顔が頼もしく見えたマーガレットだった──




