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短いです。ごめんなさい。
「レインってどういう人なの?」
今はもうレインはいなかった。
アメリの今後の対応について検討しなければならないと言って早々にこの場をあとにしていた。
アメリが神子ではないと言っていること、また記憶がないことを報告しなければならないらしい。
アメリは王宮の一室にいた。
それを聞いたとき自分はなんて場違いな場所にいるのかとひっくり返りそうになった。
アシャルドはマルティーナが神子だ。神子が二人もいるはずがない。こいつは侵入者だ、と豪語していたらしいが、まだアメリが神子だという可能性も捨てきれなかったため、見張りをつけ、言葉のわかるシュベニアを側につけて世話をさせていたらしい。
こうして目が覚めて事情を聞けたからにはアメリをすぐに追い出したくて仕方ないのだろう。
「レインハルト様は立派な方です」
ここにいないレインハルトのことを思い浮かべるシュベニアの表情には尊敬と敬愛の色が見てとれた。
元々クラシャン公爵一家は火の国で代々伝わる公爵家のひとつだった。
今は三つに増えた公爵家も元の始まりはクラシャン家だった。
王に忠誠の誓いをたて、皇女の降嫁を許していたのもクラシャン家のみで、レインの母であるレイ夫人も今の王であるファッケル皇帝の妹君にあたった。
父である王家の誇る騎士団を率いてたダニエル・クラシャンは三年前、水の国との戦いでその命を落としたという。
そして、十三という若さでレインハルト公爵が誕生したそうだ。
(え? ということはレインって今は十六歳? ゲームでは一つ上の学年だったからマルティーナたちはまだ学園に入学してないってこと?)
「レインハルト様は学業に加え、騎士をまとめあげ、水の国と隣接している国境の領地も統治しています」
何それどんな社畜。と思ったが、口には出さない。
水の国とはもう何百年も戦争を繰り返しているという。
火の国の土地を侵略しようといつも隙をねらっており、ここ数年は膠着状態にあるという。
「雨が降らないせいでずっと水不足に悩まされていましたが、レインハルト様のおかげで水の確保ができるようになり、水の国の横柄な交渉にも屈せずに済むようになりました」
水は生きる上で重要なものだ。
水の国は水の妖精に頼れば水を出すことはできるが、他の国は違う。
火の国でレインハルトは唯一水を生み出すことができる貴重な存在だった。
「神子が来ることによって火の国だけじゃなくて他の国にもその恩恵はあるの?」
「もちろんございます。木の国からも雨が降り芽が出たと喜びの報告が相次いでいると聞いています」
木の国は火の国とは比較的友好的らしい。
まあ木が火には敵わないもんね。と言おうと思ったがシュベニアの髪の色を見てやめた。
「アメリ様の処遇はレインハルト様が最善を尽くしてくださるので、安心して大丈夫ですよ」
「ハハ……」
つい乾いた笑いが出てしまったのを許してほしい。
ゲームの中でアメリはクラシャン公爵の妹君だった。
ということはこの世界もその道に進む可能性が高い。
アメリが否定したことによって国外に出されるとかそういうことにならないかな。と期待を胸にまだ雨の止みそうにない曇った空を見上げた。