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1 パーティー追放



 「おい雑用(ルカ)! お前、今日で俺達のパーティーから追放な」


 

 雨の降る音と雷が鳴り響く天候の悪い朝。

 僕は所属していたパーティーから解雇された。


 「理由は言わなくても分かるよなァ? 今回のクエストで俺達は晴れて最強の称号であるSランクパーティーに任命された。 そこにお前みたいなクズの居場所はないからだよ」


 パーティーのリーダーは机の上に足を組んで乗せて僕を見下ろして、周囲にいるメンバー達はクスクスと僕を嘲笑う。

 

 「・・・分かりました。 今までお世話になりました」


 僕は反論するわけでも睨み返す事もせずに言われたがままに解雇を受け入れ部屋を後にした。


 「あぁそうだッ! お前冒険者向いてねぇよ! どっかの店で便所掃除してた方が向いてるかもだぜっ!!」


 部屋の扉を締め切る直前にリーダーは笑いながらそういうと、他のメンバーからも大笑いが廊下まで響き渡った。

 

 

 ◆ ◇ ◆ ◇


 

 パーティーから追放されて一週間後。

 僕はギルド受付場にあるクエストボードの前で仕事を探していた。 


 「えっと・・何か僕でも出来る仕事は・・・はぁ。 やっぱり薬草集めしかない」


 クエストを受けるには最低ランクであるGランクからSランクまで階級が決められており、冒険者がクエストを受けるにはそのランクにあった仕事しか請け負う事ができない。

 その理由は勿論、自身のランク以上の仕事を無暗に請け負い死亡させるリスクを無くす為だ。

 

 「最低ランクの下から2つ目のFランクである僕じゃ、精々薬草集めしかないよね」


 魔物の討伐クエストや、ダンジョンの探索クエストなどは最低でもDランク以上が必要とされている。

 Dランク以下の冒険者はまだ実力不足とギルドから判断され防具どころか短剣以上の武器さえ購入を禁止されているのだ。

 そんな低ランクの装備で出来る仕事と言えば街の簡単な依頼やポーションや毒や麻痺などで使用される解毒薬の薬草集めくらいの仕事だ。


 「とりあえず今日の一食分のご飯代は欲しいし、このパーション薬草のクエストを――」


 一番下に張り付けられている簡単なクエスト紙を取ろうとした時、ギルドの入り口で女性冒険者やギルドの女性職員達の歓喜ある叫びが聞こえた。

 

 「おい見ろよ! ウォーリア・ゴッド(神の戦士)だ!」

 「え? あの最強パーティーのッ?!」


 隣にいた冒険者達は遠目で女性達が囲むパーティーを見る。

 

 ウォーリア・ゴッド。

 神の戦士と名付けられたそのパーティーの名前を僕は知っている。

 この数年、誰も討伐する事が出来ずにいたSランク討伐クエストであるダンジョンのフロアボスをたった1つパーティーが討伐する事に成功した。

 そのパーティーと言うのが彼らだ。


 「おぉ! あのデカいのがウォーリア・ゴッド最強の盾。 ダンテか」

 「マジかよ。 ありゃもう巨人族じゃねぇか!」


 女性陣に囲まれている中でもひと際目立つ巨漢な男。

 一歩足を踏み出す事に床が揺れ、背中に背負っている斧は岩をも簡単に真っ二つに出来る。


 「それじゃあ、あの別嬪さんがッ!!」

 「我らが女神! マリア様だッ!!」


 穏やかで凛々しく、そして神々しいとも言える美しさを持つ真っ白な修道服が目立つ女性。

 慈愛に満ちた微笑は男女共に見惚れ目が離せなくなる。

 そんな彼女は女神に認められた聖女として有名であり、習得の難しい治癒魔法を数人同時に発動する事が出来る。


 「おい見ろよ! マリア様の後ろ!」

 「ほぉぉぉぉぉッ!! こりゃあすげぇや! マリア様とはまた別の意味で美しい! イザベラ様だ!」


 強調される豊満な胸と相手の心を見抜くような鋭い瞳。

 長髪の黒髪をなびかせ、露出の多い服装は多くの男を魅力させる姿はまさに魔女。

 彼女はウォーリア・ゴッドの中でも魔術を得意とする魔術師だ。

 サポート魔術以外にも攻撃、防御、詮索といったあらゆる分野を得意としており、すでに魔術師の中で数人しかいない賢者の称号を持っている天才だ。


 「そしてあれが・・・」

 「ウォーリア・ゴッドのリーダー、サミエルだ」


 そして中でも一番目立って女性達に笑顔で手を振っている男。

 ウォーリア・ゴッドの最強のリーダー。

 魔術・武術・剣術どれもがSランクであり今回のクエストで大きく貢献してパーティーを最強の称号にまでまとめ上げた男である。

 気品よし、顔よし、筋肉質な身体よし、そして性格よしとして世間からは英雄候補とも呼ばれている。


 「やっぱり短期間でSランクにまで上り詰めた天才パーティーは空気が違うぜ。 俺達とは住んでる世界が違う感じっていうかよ」

 「まったくだ。 ・・・ってあれ? そういえばウォーリア・ゴッドって5人パーティーじゃなかったか?」

 「ん? そうだったか? 元々4人だった気がするが?」

 「あれ~? 気のせいだったかな~??」


 遠目からウォーリア・ゴッドを眺めていた冒険者の2人は笑い合いながら他愛ない話をしているのを横で聞き流しながら、僕はフードを深く被り隅っこまで移動する。

 その理由の1つはウォーリア・ゴッドの彼らに見つからないようにする為。

 僕は先週まであのパーティーに所属していた。

 しかし

 フロアボスを倒したその翌日に追放宣言をされて今はチマチマと自分のランクにあったクエストをこなしながら生活をしている。

 そして2つ目の理由は―――


 「う・・グスッ! うぅ・・ッ!!」


 どれだけ止めようとしても止まる事の無いこぼれ落ちる涙を、誰にも見られないようにする為だ。


 僕の名前はルカ。

 元ウォーリア・ゴッドのメンバーの1人で、役に立たない事から追放された魔術も剣術もできない最弱の冒険者だ。


最後まで読んで頂きありがとうございます!


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