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異世界家族 パパと僕、ときどき、ママ、わたし  作者: 芝大樹
第二部「魔法使い、ガイコツと踊る」
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第二部 第1章―6

「自由にしてくれていい」

「思い通りにやってくれればいい」

 ザインの言葉を要約すれば――いや要約せずとも、本当にそれがハルヒコに伝えられた、すべてであった。

「何をすればいいのですか?」

 はたして、そんな愚かな質問をハルヒコはしただろうか。いや、その問いかけこそ愚問というものだ。何をすればいいか――それさえも任せるとザインは言っているのだから。

 元の世界にいた頃のハルヒコなら、突如こんな重責を担わされれば、ただただ戸惑うばかりであっただろう。だが、今のハルヒコには、村長として村の運営を任された経験がある。課題を見つけ、人をまとめていく。その経験は――いや技術と言ってもいい――どんな時間、どんな場所でも活かすことができるのだ。

 ――どんな問題が山積していることやら……。

 それらを見つけることもまた、ハルヒコに課せられた務めであった。

 ――それにしても……だ。

 どうして、こっちの世界の人間は――。

 バラディン城の謁見の間で思い浮かべた言葉がよみがえる。

『よく知りもしない人間に、こんな重要な仕事を任せられるのか……』

 それほど自分のことを買ってくれているのだろうか。

 ――いや、ただ単に呑気に構えているだけなのかもしれないな……。

 そして、これは大仕事になるだろう――。

 ここまでのマギアの敷地や建物の様子を見るに、それは箱物だけの問題ではすまされない予感がした。もっと根本的なところで歯車が抜けているような、狂ってしまっているような気がする。

 ――経営も厳しいんだろうな……。

 まずは、しっかりと現状を把握することだ――。

「それでは、学内を見学させてもらってもよろしいでしょうか? 入ってはいけない所があるなら気をつけますが――」

「いや、そんなことを気にする必要はない。これから、そなたはこの学院の経営を担うトップになるのだから。何を遠慮することがあろうか。好きなとき、好きな場所に、ずかずかと入っていっていいんじゃよ」

 どこまで本気なのか分からない笑みを浮かべ、ザインはそう言った。

 代表理事をするとはそういうことなのか――ハルヒコはあらためて事の重大さを、いや深刻さを思い知らされるのだった。

「マルロ!」

「はい――」

 廊下にひかえていた青年がすぐに部屋へと入ってきた。

「今日から理事長として赴任されたハルヒコ殿だ。学内を案内してやってくれ」

 マルロは一瞬、疑いの眼差しをハルヒコに向けた。だが、すぐに「わかりました……どこまでお見せすればよろしいでしょうか」とザインに問う。

「そなたにしては愚問じゃな」

 ザインは、わずかながら残念だという色を見せた。

「どこまでも、好きなようにじゃ――」

 その言葉を聞いて、あらためてマルロは襟を正す。ハルヒコはその礼節ある若者に、自分から声をかけなければならないと感じた。

「突然のことで申し訳ありません。どうぞ色々と学院内のことを教えてください」

「はい、それではどうぞこちらに――」

 ハルヒコは「学内を見学させていただきます」と、マルロに続いて学長室の扉をくぐろうとした。

 そのとき、ハルヒコの背中にザインの声が投げかけられる。

「おお、そうじゃ。ハルヒコよ、城からの褒賞は出ていようが、そなたもこの学院で働くのじゃ――その分の給与はしっかりと受け取るのだぞ」

 ハルヒコは慌てて振り返った。

「いや、しかしそれでは……」

 ザインの表情は読み取れなかったが、その豊かな白ひげの向こうには、にやりと小さな笑みが口元に浮かべられているような気がした。

「それが、ここで働くための条件じゃ」

 城からの月々の褒賞に加え、マギアからも給料が受け取れる。棚からぼた餅のような話だが、このときのザインの言葉は、ハルヒコの耳には違って聞こえたのだった。

 すなわち――。

「自分の食いぶちも何とか捻出するのだぞ」と……。


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