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異世界家族 パパと僕、ときどき、ママ、わたし  作者: 芝大樹
第二部「魔法使い、ガイコツと踊る」
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第二部 第6章―1

 ――これは……なんだか違う感があるな……。

 ハルヒコはマギアの敷地の奥まった場所で、ひねり出すように試行錯誤を繰り返していた。

 畑をなんとかできないか――。

 マギアに赴任してより、ずっと考えてきたことだ。実はもうすでに、この人気のない場所に小さな畑を作り、冬越しの野菜も植えている。

 畑は馬に鋤を引かせて耕した。ハルヒコはもっと畑を拡張したいと思っていたが、

 ――馬も忙しいからな……。

 マギアの馬車を市民に貸し出す事業が順調に軌道に乗り始めていたのだ。それゆえ、土魔法を応用できないかと他の方法を模索していたのである。

 土魔法単体では論外であった。地面を耕そうにも自分の足元だけにしか魔法の効果は及ばない。耕地面積いっぱいに歩き続け、魔法を使い続け、気力も体力もすぐに底をついてしまう。

 ならばと、魂を付与した土魔法を試してはみたものの、これも先にあげたハルヒコの所感通り、やはりこれじゃない感が否めなかったのである。確かに土魔法は嬉々として、ほぼ全自動で荒れた土地を掘り起こしていってくれた。だが、その出来栄えが何度やってもハルヒコの満足のいくものにはならなかったのだ。

 ――もう少し、こう……ふんわりと耕せないものだろうか……。

 どこか塀や壁を補修したときみたいに、カチカチに踏み固められた畝がレンガのように並んでいくのだ。

 ――やっぱり馬に鋤を引かせた方が断然いいよな……。

 だが、馬はバルトと共にレンタル馬車の事業で大忙しの身だ。

 ――何か馬に代わる動力はないものか……。

 また若い学生達をこき使って、人力でやってみるか?

 もちろん冗談で考えてみたにすぎない。魔導士を目指す彼らに、この体力仕事は酷というものだろう。

 ――それに、せっかく覚えた魔法だからな……。

 やはり、それを使ってなんとかしてやりたい。

 ――人力……人……。

 人……人……人……。

 ――人……?

 次の瞬間、はっとしてハルヒコは目を見開いていた。

 ――人……!

 不意に、ひらめいたのだ。

 ――やってみる価値はある……。

 だが、この場所で「あれ」は作れない。

 ――こんなやわらかい土ではダメなんだ……。


 何かにひらめいたハルヒコがやってきたのは、かつて庭園と呼ばれていた場所であった。今は崩れ落ちたレンガや石材が折り重なって廃墟のような景観が広がっている。

 ――いや……これはもう立派な廃墟か……。

 いずれ、この場所にも手入れはしていきたい。だが、今ここを訪れた目的は別にある。

 ――さて、じゃあやってみるか……。

「テロン――!」

 ハルヒコは土魔法を唱えた。

 そう、今回は土魔法だけを唱えたのだ――あるイメージを頭に思い描きながら。

 崩れていたレンガや石材の一角が震え出し盛り上がっていく。それらは意思を持っているかのように――まるで試行錯誤をするかのように――何かの形をとろうと必死にうごめいていた。

 ――鋤を引かせるんだ……。

 体格はもっと大きく、屈強な姿にしてやらないとな――。

 やがて、そのもやもやと悩んでいたレンガや石材達の一塊は、自分達がとるべき姿を見定め、その形を成していったのである。

 ――よし……。

 それは巨大な人型であった。レンガや石塊でできた、圧倒的な質量を持った巨人――。

 だが、それだけではただの像にすぎない。

 ――でも、この像に魂が宿れば……。

「アニモ――!」

 ハルヒコは唱えた、あの魔導書に書かれていた魂の魔法を。

 本来なら人が手を触れるべきではないはずの、禁忌の魔法を――。

 巨石の人型がぶるぶると震え出す。

 ――こちらの世界では、これを何て呼んでいるんだろう?

 そもそも、こんなものが存在するのかも定かではない。

 だが、元いた世界のファンタジーで、それがどう呼ばれていたのかをハルヒコはよく知っていた。

 ゴーレム――。

 魂の宿った石像の巨人――。

 ハルヒコが初めて生み出した瞬間であった。


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