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なんの変哲もない普通の人生。
これが今まで生きてきた総評だ。
私は今年17歳になるが、学校などでは特に問題らしい問題も起こさず品行方正だと自信を持って言える。成績は中の上程度だけど。
両親も健在どころか弟か妹ができるのではないかというレベルでラブラブだ。今も結婚記念日だとかで1週間の欧米旅行に行っている最中だ。
なぜこんなことを考えているかというと、両親がいないからあと三日分の三食を自分で用意しなければならないからだ。
ちなみに今日の朝食は起きるのが遅かったのでなしです。
信号機の誘導音が鳴り、私を現実に引き戻した。
横断歩道の先に私をじっと見る人を見つけてしまった。あいつの名前は七平維弦。
集合時間に間に合わなかったからか、睨まれた。
「遅いぞ。どうした?なんかあったか?」
「いやね、今日の晩は何を食べようかなーって考えてた」
やっぱり魚かな?肉も捨てがたいな。けど昨日も魚食ったからどうしよ。
「しょうもな」
「いやいや。死活問題でしょ」
私が食事を何よりも楽しみにしているのを知っているくせに冷たいことを言いやがる。
なんて失礼なやつなんだ。……遅れたから文句言えないわ。
「珍しく深刻な顔してると思ってたらこれだもんな。心配する気が失せたわ」
「そんな顔してた?」
「ここ数年は見てないレベルではあったよ」
「そこまで深刻ではないでしょ」
「てか早く行くぞ。お前が遅れたせいだからな!」
「怒るなって、ハゲるぞ」
「お前置いてくわ、また明日。」
「ごめん、遅れたのは謝るからさ」
「ハゲは?」
「それもごめん」
「適当だな。まぁいいか、遅刻するから急ぐぞ。」
「一体誰のせいなんだろうな」
「君が悪いからね?分かってる?」
これだから素で真面目な人間は面倒くさい。まったく、私のユーモアが分からんとは。
私みたいに見られているときだけ取り繕えばいいのに。
「てかこのペースで大丈夫?間に合う?」
「ギリギリだね、走ったほうがいいかも」
「じゃ、そうしますか。」
そう言い、足早に学校へと走る。
校舎に近づくほどに道幅が狭くなっていく。
そんな中、轟音が遠くから聞こえた。
「事故かな?」
「多分そうだろ、遠くっぽいし関係ないだろ」
そちらに気を取られながら信号機のない横断歩道を渡っていると、突如横から強い衝撃が襲ってきた。
勢いそのままに、壁面に全身を強く打った。
衝撃の正体は自動車だった。
意識ははっきりとしているが、体がピクリとも動かない。頭から猛烈な痛みを感じる。
自分から血溜まりが広がっていくのが見えた。
維弦が何か私に呼びかけているのが見えたが、言葉としては聞き取ることができなかった。
耳まで聞こえなくなってしまったようだ。
体から絶えず溢れ出る血から感じる温もりは強くなっていくのに比例するように、猛烈な寒気が私を襲う。
横断歩道の向こう側で談笑しながら、こちらにカメラを向ける群衆が見える。
痛みや温もり、寒気すら薄れてきた。
だが、それすらどうでもいいと思えてきた。
あの群衆に身を焦がすほどの怒りを抱いた。
だが、死が近づいて来ていることを感じ維弦に言葉を残そうと最後の力を振り絞り、声を出す。
さて、なんと言おうか。まぁここは素直にいきましょう。
「………ありが…と」
霞んでいく視界に涙ぐむ顔が見えた。
ただそれだけで救われた気がした。
そうして、私の意識は途切れた。
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