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17 奇跡

二話投稿、二話目です。



 計画通りだ。


 上手く進みすぎて、笑ってしまうくらいに。


 掲示板で手に入れた、王宮の爆発とアイーダが行方不明という情報。そして元近衛騎士であるジョシュアの経験から、アイーダが王に追われていることは予想がついていた。そしてアイーダであれば、ただ逃げるだけでなく、王の行いを正そうとすることも。


 そうなれば、取れる選択はおのずと絞られる。まずは貴族街からの脱出。馬鹿正直に街門から出るわけがないから、使うのは学院時代に世話になった魔導管だ。


 昨日、アイーダが行方不明という情報を知ってすぐ、魔導管を確認した。蓋は砂埃をかぶっており、使用された形跡は見つからなかった。その時点でアイーダが商業区に移動を開始するのは今日、日が昇ってからだと推測できる。その際、魔導管の蓋が開いたときに俺だけが分かる反応があるよう、細工をしておいた。


 警備兵の詰め所に「アイーダらしき人影を商業区で見た」と情報を与えれば、捜索に当たる警備兵の数は増える。さらに、商店街、飲食街で買い物客を装い「さっきアイーダ様に似た人を見て……」と店の者に言えば、噂が広がる形で情報は拡散する。


 間接的にとはいえ、魔導管の出口のうち、二つを封鎖できる。警備と人ごみの中に突っ込んでいくような馬鹿なら行動は読めないが、アイーダはそんな愚かな選択は取らない。なら、残る選択肢はこの花街しかない。


 二つの魔導管が使われたことを確認し次第、移動時間を計算して花街にある抜け道の存在を警備兵の詰め所にリークする。そうすれば、アイーダと警備兵の遭遇戦をセットできる。


 アイーダは警備兵に手が出せない。もし戦う選択をしたとしても、逃亡で疲弊してまともに戦えない。そこで、俺の出番というわけだ。



「ジーン」



 俺の名を呼ぶアイーダの瞳を見る。


 涙に潤み、その手は震えている。俺が生きていたことに、再会できた幸運に打ち震えている。そんな感じだ。


 俺がこの国を、魔法をよしとする全てのものに復讐しようとしていること、ましてや、その計画に自分の命が使われようとしているなんて、微塵も思っていない。


『なぜそこまで手の込んだ仕掛けをする? 魔導管で合流すれば済む話だろう』


 昨日、この作戦を説明したとき、ジョシュアが尋ねてきた。確かに言うとおりだ。俺とアイーダには学院時代の積み重ねもある。

だが、それだけでは弱いんだよ。


 再会を喜びはするだろう。幸運に感謝もするだろう。だがそれだけだ。アイーダを俺の思い通りに動かすには、過去ではなく、現在を手に入れる必要がある。


 信用という、時間をかけなければ手に入らないものを、ただの演出によって手に入れる。


「ありがとう、ジーン。生きていてくれて……」


 未だに信じられないという瞳で、声で、呟かれる再会の言葉。そして、


「私を、助けてくれて……!」


 感極まった様子のアイーダが俺の胸元に飛び込んでくる。俺はその肩を優しく抱き留め、その目から零れ落ちる涙をそっと拭った。



 ――これが答えだよ、ジョシュア。



 人は、ただ与えられるだけの偶然を信じようとはしない。だが――。



 苦難の末に勝ち取った奇跡は、信じたがるものなのさ。




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