PM 7:00
扉を開けると、頬に突き刺すような夜風が舞い込んできた。此処は現実なのだと、私に身をもって教えてくれている。
閉まった扉には、「CLOSED 」の板が掲げられた。今から一時間後には、夜の店と変貌を遂げているのだろう。一度も入ったことはないので、事実は定かではない。
それにしても、私と店長に認識の相違があるとは思ってもいなかった。
不思議な不思議な少年のお話。
どちらかが勘違いしているのかもしれない。少なくとも、私は正しいだろう。それは、仲の良い友人ではない、とか血筋の通う親ではないから、とかという理由ではない。信じられることは、自分が見て、聞いたもの、感じたものだけだからである。
もし私がただの見間違いなのだとしたら・・・そのときは、この現実を疑おう。
・・・あの場自体がそもそも幻想なのではないか
ふと私は推考する。考えてみれば、目の前の作業を支えるくらいの明るさしかない喫茶店とは一体何なのか。そういうお店なのだ、と言い切ってしまえばそれで終わりだが、闇を侵食し光が蔓延る今日ではなかなか珍しい。前に訪れたときはどうだったか、記憶を辿るがどうも霞がかっている。
ピリリリッ
今時のガラケー。しかし、情報のフィルタリングには役立っている。勝手に無駄な情報が入ってきては気分が悪いからな。
「はい、佐々木です」
明日は、早めに出勤した方が良さそうだ。それにしてもこの時期にこの寒さはこたえる。帰りにおでんでも買っていこう。