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差別のない国  作者: 薬うり
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episode 3 怪物の街

 アユムは、街を出たものの、少し困っていました。


 差別の無い国には、街は三つ。


 しかし、その街は、地図からは消されてしまっています。


 誰もその理由を語ろうとは、しませんでした。


 噂では、差別のない国に在って差別があるために消されてしまったらしいのです。


 一体どっちに行ったらいいかも分りません。


 アユムが途方にくれて道端に座っていると、道の彼方から砂煙が近付いてきます。


 よく目を凝らすと、見たことも無い生き物がこちらに凄い速さで走っています。


 大きな目玉にとんがった耳。そして口に足が生えているだけの生き物です。


 そして、土煙を残してあっという間にアユムの前を走り過ぎて行きました。


 アユムは、慌ててその後を追いかけて行きました。


 きっと、その先に未来があると思ったからです。


 しかし、その生き物は、あっという間に見えなってしまいました。


 アユムは、残された足跡と土煙を必死に追いかけました。



 気が遠くなるほどの距離を歩きました。


 周りの景色も草原を越え、森を抜け、草もまばらな荒地に変わっています。


 とうとう景色が砂ばかりの砂漠に変わろうかとする頃にやっと建物らしきものが見えてきました。


 近付いてみれば、かなりの大きさの街の様ですが、今迄のように大きな門も扉も在りません。


 アユムは、ここが怪物の街だと確信しました。


 道を行き交う生き物、その全てに統一性がありません。


 様々な姿の生き物が、様々な色をしています。そして、様々に動いています。


 宙を浮くもの、地べたを這うもの、時々消えたり現われたり、その移動方法すら多様です。


 アユムは、あまりの状況に少し呆然としていました。


「どうしかしたのかい?何かお困り?」


 何者かが、声をかけてきました。


 振り返ると、依然見かけた大きな目の生き物です。


 アユムを興味深そうに見つめています。


「ええ、ちょっとびっくりしちゃって」


「おや?移民かい?なら、移民局へいけばいいよ。そこの角を曲がって突き当たりの大きな建物だからすぐ分るよ」


 アユムは、いままでの二つの街での経験から思わず聞いてしましました。


「僕は、みんなと同じじゃないし、出来ない事も沢山あるけど大丈夫ですか?」


「あはは、ここは怪物の街だよ?同じのを探す方が大変さね。出来ない事?当り前だろ?みんな違うんだから。

 そんなもの補えあえばすむじゃないか。わたしをごらん、私の種族は、ランニングアイ。この通り手も何も無い。買い物に来ても荷物一つ持てないよ。でもね、私の旦那が私の変わりに持ってくれる。ほら、あそこにいるよ。」


 目線の先を追うと、身の丈3mはあろうという巨人がこちらに歩いてくるところでした。


 しかも、手が四対、八つもある岩の巨人です。


「彼が、私の変わりに力仕事を引き受けてくれる。代りに私は、この何千キロも見渡せる目と何でも聞こえる耳とあらゆる言語を話す口で彼を助けるの。ギブアンドテイク、補いあいね。・・・でもね、私は、彼がただの石ころでも彼と結婚したわ。私を大事に想ってくれるし、彼は、とても優しいの。それが伝わるから。何を言わすんだい、子のは。まったく。あんたー先行くよー」


 ランニングアイは、嬉しそうに恥ずかしそうに微笑むと、すごい速さで行ってしまいました。


 しばらくすると、ドシンドシンと岩の巨人がやってきました。


 アユムとすれ違いざま、巨人は、少し屈んでアユムに耳打ちしました。


「僕の奥さん、素敵だろ?何でも見えるし何でも聞こえる。でも、本当は、そんなことどうでも良いんだ。彼女は、とてもシャイでキュートだろ?それに優しいんだ。僕を想ってくれる。それだけでいいんだ」


 優しく微笑むと岩の巨人は、ドシンドシンと後を追いかけて行きました。


「ありがとう」


 アユムは、何だか嬉しい気持ちになって移民局へと行きました。


 移民局の中には、フクロウに似た役人がいました。


 品定めをするようにアユムを観察しています。


「移民か?この街に住むのか?この街では、差別もあるぞ?それでもいいのか?」


 役人は、アユムに住む家の鍵を渡しながら言いました。


 この街での生活は、とても快適でした。


 街の人は、皆親切でしたし、助け合って生活していました。


 しかし、何も無かった訳ではありません。


 どの店にも『ゴルゴンお断り』と張り紙がしてありました。


 訳を聞いても、誰も教えてはくれませんでした。


 聞かれた者は、何かを恐れているような軽蔑しているような表情をして去って行くのでした。


 ある日、いつものようにアユムは、買い物に出かけました。


 すると、アユムがいつも買いに行く店から一人の少女が追い出されてきました。


 少女は、店主に何かを訴えて追いすがろうとしましたが、諦めたように俯くとトボトボと歩いて行きました。


 どうやら、少女は、目が少し不自由なようでした。


 アユムは、気になって店主に何があったか聞いてみました。


「どうしたんですか?追い出すなんて」


「どうしたもこうしたもないよ。ゴルゴン族が来たから追い返しただけだ」


 それ以上は、なにも聞けませんでした。


 家に帰る途中、少女を見つけたのでアユムは、声をかけてみました。


 少女は、とても驚いた様子でしたが寂しく微笑んでくれました。


 別の種族に声をかけられるのは初めてらしく、とても驚いたそうです。


「ねえ、どうしたの?何か困っているの?」


 その寂しげな表情にアユムは、何か力になりたいと思い聞いてみました。


「えっ?うん。妹が病気になってしまったから、お薬を買いにきたんだけど、どこのお店も追い出されてしまって・・・」


 哀しそうな顔にアユムは、切なさと理不尽なことに対する怒りが湧きました。


 幸いにも、その薬はアユムがさっき買ったので分けてあげました。


「ありがとう。私はトピリといいます。本当にありがとう」


 少女は、何度も振り返り、何度も頭を下げると妹の待つ家へと帰っていきました。


 アユムは、怒りを胸にさっきの店に戻り、店主に言いました。


「なんで何も悪いことをしてない人を追い出したりするんだ!」


 店主は、軽蔑した眼差しをアユムに向けながら言いました。


「悪いことをしていない?ふん、なんにも知らないくせに何を言ってるんだ。一昨日きな」


 アユムは、気分が悪くなりました。


 帰る途中に移民局へ寄ってみました、用事がある分けでもないのですが、何となく足が向かいました。


 そこには、いつものようにフクロウに似た役人が応対をしてくれました。


「ねえ、なんでゴルゴンは差別されているの?何も悪いことはしてないでしょ?」


 役人は、静かに優しく答えてくれました。


「そうか、ゴルゴンにあったんだね。そうだ、彼女達は、差別されている。しかし、それには、原因もあるんだ。丁度良い、図書館に歴史を記した本があるから一度読んでみたら良い。それから自分で何をするか考えるんだ。いいね?」


 アユムは、早速、図書館に行き、とてつもなく大きな一冊の本を見始めました。


 その本には、各種族の街での歴史が細かく載っていました。


『ゴルゴン(ゴーゴン):Gorgon

 この種族は、とても美しい姿をしており、全ての種族を魅了する。種族の特性として生まれる子供は全て女であり、他の種族との交配を必要とする。特殊能力として、全ての生物を石化させる瞳を持つ。恐らく、女性しか存在しない故に自衛手段として発達した能力と思われる。

 街の創世記には、彼女達を巡り多くの種族が争い奪い合いが起こり、血が流れた。

 また、彼女らを恨む多種族の女性からの迫害(虐殺)から、全住民の8割が石化させられる事件が発生。

 以来、一定地域をゴルゴン地区と定めた、しかし、事件以来、彼女達への排斥運動が起こる。

 現在では、ゴルゴン地区へ出入りする者は、彼女達を含め絶えて久しいが、未だに排斥運動が続いている』


 役人が、空から降りてきました。


「どうだ?わかったか?」


 アユムは、怪傑な笑顔を向けました。


「はい。彼女達は、何も悪いことしていないということが。少なくともトピリはね」


「そのとおりだ。過去に哀しい事件はあったが、彼女達が仕掛けたことでは無い。それに遥か昔の事だ。しかし、未だに過去を引きずっている者がいることも、また、事実。しかし、彼らを責めないでやってくれ。父や母を石にされた子供達を・・・」


 そう言うと役人は、また、空へと昇っていきました。


 次の日、トピリが訪ねてきました。


「昨日は、ありがとう。どうしてもお礼が言いたくて移民局で聞いて来ちゃった」


 トピリは、舌をペロっと出して可愛く笑い、一輪の綺麗な花を差し出しました。


「ありがとう。すごい綺麗な花だね」


「ありがとう。私が大切に育てた子なの。ほら、挨拶して」


「コンニチワ、ハジメマシテ」


 アユムは、とても驚きました。花が言葉を発したのです。


 それから、毎日二人は話をしました。二人で散歩もしました。


 トピリは、花を育てて暮らしていました。


 ある日、二人で花の世話をしている時に、トピリが話し始めました。


「アユム、知ってる?花はね心を込めれば、ちゃんと答えて綺麗に咲くのよ」


「だから、トピリの花は、とても綺麗で言葉も話すんだね」


「そうよ、花に言葉を教えることができるのは、私達だけなの。でも、私達は、その花の美しさを見ることは一生ないわ」


「え?どうして?」


「アユムには、知ってて欲しいの。私の事・・・」


 そう言うと、トピリは、花を一輪、目の前に置くと目を開きました。


 目から光が溢れるような錯覚を受けながらも、アユムは、黙って見ていました。


 途端に、トピリが持っていた花が石になってしまいました。


 トピリは、ポロポロと泣きながら言いました。


「アユム・・・。貴方が好き。でも、私は、貴方をこの目で見ることもできない。こんな私を好きになってもらえるはず無いのはわかっているけど。それでも、貴方が好きなの」


「トピリ、僕を見て」


「でも、それじゃあ、石に!」


「いいんだ。石になっても。僕も君が好きだ。そのままの君の全てが。だから、僕を見て。そして、石になった僕を戻す方法を見つけるんだ。いいね?」


 アユムは、笑いました。


「うん」


 トピリは、涙を落としながら目を開けました。


 初めて見るアユムです、笑っていました。


 石になっても・・・。


 トピリは、自分を受け入れてくれる人を見つけた喜びと、失った悲しみを抱えkissをしました。


 そして、その胸で泣きました。

 一体、どのくらいの時間が経ったでしょう。


 誰かがトピリの頭を撫でました。


 びっくりして顔をあげるとアユムが微笑んでいました。


「トピリ、泣かないで。ほら、元に戻る方法が見つかったんだから」


 二人のシルエットが重なりました

 それから、二人は一緒に暮らしています。


 未だに、ゴルゴンは差別されていますがアユムは、気にも止めませんでした。


 トピリは、トピリ。その全てが大切だと想ってたからです。


 それに、あの日以来、トピリの石化の力が無くなってしましました。


 あの店主も、少しずつですがトピリを受け入れてくれるようになりました。


 しかし、差別は無くなりません。


 全てを帰ることは、難しいかもしれません。


 しかし、ちょっとずつなら自分にもできるかも知れない。


 アユムは、そう思うようなりました。守りたい人がいるから。


 移民局の屋上に役人がいます。


 誰かに何かを言っています。


「あの人間という種族もわるくないな。ゴルゴンは、本当に愛された時には能力を失ってしまう。それは、守るべき相手を見つけたから。守ってくれる相手を見つけて自分を守る必要がなくなった証。そうだったね?」

「ええ、そうですよ」

 そういって傍らに、トピリに似た女性が立ち寄り添いました。


 今日も、タイカは、規則正しい生活を送っています。

 キーユとアパスは、自らの力を奮っています

 アユムとトピリは、差別と闘いながらも生きています。

 どこの街が一番良いとか、正しいとかはありません。

 進む道は違っても三人は、三人とも幸せに暮らしています。

 貴方に合う街もきっと何処かにありますよ。

 大切なのは、一歩を踏み出す勇気だと思います。


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