~第二の錦織圭たちに贈る言葉(31)~ 『実力伯仲の接戦では技術的基本に忠実な選手が勝利する』
〜第二の錦織圭たちに贈る言葉(31)〜
『実力伯仲の接戦では技術的基本に忠実な選手が勝利する』
1. まえがき;
2019年7月のウィンブルドンテニス大会男子決勝をTVで観た。
ジョコビッチ選手 VS フェデラー選手の第一、第二シードの対戦であった。
7−6(7−5)、1−6、7−6(7−4)、4−6、13−12(7−3)で
3つのタイブレークを制したジョコビッチ選手の勝利であった。
ウィナー数:54−94、エース数:10−25、獲得ゲーム数:29−36、
獲得ポイント数:204−218
で、いずれもフェデラー選手が多かった。しかし、フェデラー選手は敗れた。
通常のゲームとセットの組合せは実力者が勝利出来るように確立論を考えた
ポイント構成になっている。
しかし、タイブレークは2本づつ交互にサービス権を行使する。
通常は最低4本のサービス権を連続して 行使する。
第一サーブでのポイント獲得率は74%−79%と、ほぼ互角であった。
サーブが連続してエースになる確率は低いのでサーブ力でタイブレークを制する
のは難しい。
そうすると、ストローク力の優れた方が勝利する確率が高い。
ジョコビッチ選手のフォアハンドストロークとフェデラー選手のフォアハンド
ストロークの基本忠実度が勝敗を分けることになった。
今回は、そこを検証する。
2. 贈る言葉;
まえがきでも述べたが、テニスはミスをしない確率が高い選手が勝利するようなポイント構成になっているゲームである。
ミスをしないために技術的な基本を身につけるのであるが、基本から外れたショットでエースを奪うタイプの選手も多い。ポイントを多く取れば勝つ確率が上がるが、ポイントを多く取ったからと云って勝利するとは限らないのがテニスである。
ゲームポイント、ブレークポイントを確実に取ることが出来なければ敗れるのである。
タイブレークでは、ここ一番のポイントを取るのに必要な能力が備わっているかどうかである。
その必要な能力とは何か。心・技・体の実力が高いかどうかである。
心が体を支え、体が技術を支え、技術が心を支える。心・技・体の支援循環が良好であると『勢いが着く』ことで勝利するのである。しかし、この決勝戦は『勢い』での勝負ではなかった。
私は今回の試合でジョコビッチ選手とフェデラー選手の心・技・体を比較しながら試合を観ていた。
その差は、フォアハンドストロークにあった。
フェデラー選手はセミオープンで打っていることがほとんどであったが、ジョコビッチ選手はスクエアースタンスで打てる場合は確実にスクエアでストロークしていた。
むしろ、スクエアースタンスで打つために素早く走っていたと言った方が良いかもしれない。(『テニスは手ニスではなく足ニス』と称される所以である)
贈る言葉(23)で述べたように、
スクエアスタンスなら、顔と胸はボールと正面に向き合ってインパクトできるが、
オープンスタンスでは、顔を胸に対して90°曲げていないと顔の正面でインパクト出来ない。通常は45°くらい顔を横にひねって打球する。この為、インパクトまでボールを注視せずに目をボールから離してしまってインパクトすることになる。最後まで注視しないので、インパクトの瞬間までに行うインパクトポイントの修正ができない。最後まで注視したとしても、目がボールを斜めに見てしまうのでインパクトの精度が落ちる。スイートスポットで最大の力を込めてインパクト出来るかどうかがストロークの威力を決める。
セミオープンでも同じことである。
また、スクエアスタンスの方がインパクトの瞬間における前方への体重移動が速いので打球のスピードもセミオープンより速くなり、ボール着地後の滑る度合が上がり、相手のミスを誘う確率が上がる。
この差によってジョコビッチ選手はタイブレークを取ることが出来たのである。
プロの選手で基本が出来ていない選手を時折みかける。
ここで、改めて、基本技術を簡単に確認しておく。参考にされたい。
サービスの基本技術:
テークバックをした時の肘の位置は左右の肩を結ぶ直線ラインより上にあること。サーブは肘を支点にして、ラケットを円弧状に移動させてラケットスピードを上げ、インパクトする。支点(肘)の移動距離が小さいほどサーブは安定する。
ストロークの基本技術:
フォアハンドもバックハンドもスクエアスタンスを基本とし、膝を曲げ、下腹に力を込め、しっかりと地面を踏ん張って、臍の高さでインパクトする。インパクト時は体を前に移動させる。ボールはインパクトするまでしっかり目で追う。テークバックをまず取り、そしてインパクトポイントに向かって走り、ボールに速く追いつきスクエアで打つ。(予測能力が優れているほどこれが可能となる)
計算条件の詳細を省くが、時速100キロの打球を打つ際、ボールをインパクトしている間に体を4センチくらい前に移動させないとボールの反力の影響を体やラケットが受ける。
ボレーの基本技術:
テークバックはラケットを45°引く。同時に、上半身を45°ひねり、ラケット面をネットと平行にする。
インパクトはパチンとボールをたたくようにラケットを少し前に押し出す。
フォロースルーは必要ない。
スマッシュの基本技術:
フォアサイドにロブがあげられたら、すぐにラケットを頭の真上にあげる。そして、体を横にひねり、足を交互に動かして後方に下がり素早くインパクトポイントの下に入り、打球の瞬間を待ち、頭の少し前方の高さでインパクトする。
バックサイドにロブが上げられたら、体をひねりながらラケットをバックサイドの肩の斜め上にあげ、インパクトポイントの下に向かって走る。そして、ネットに背を向けてラケットをネット方向に振り打球する。
ラケットを握っていない方の腕は身体のバランスを取る様に動かす。(体幹の軸が体の重心を外れないこと)
いずれのショットにも共通することは、まずテークバックを素早く行い、その後に身体を移動させることです。
3.あとがき:
35年前、ジョン・マッケンロー選手のサービススタイルを見た時、これでサーブの精度が上がるのかと思った。テークバックした時の肘の高さが、両肩を結ぶラインよりかなり低かったのである。しかし、よく観察すると、ラケットを振り出す直前に肘の高さは両肩を結ぶラインより上に移動していた。その後からマッケンロー選手のラケットが円弧を描いて動き出していた。これなら大丈夫だと思った印象が今でも思い出される。
『諸君の健闘を祈る』
目賀見勝利より第二の錦織圭たちへ
2019年7月16日