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階級の差

今回も読んでいただきありがとうございます!

 



 時刻は午後三時。

 授業がいつも五限までしかないため、下校する時間はだいたいこの時間だ。

 まだ夕方でもない、日中とも言い難い微妙な時間帯だ。


 学校から学生寮までは徒歩十分。

 学生寮の周りには多くのショッピングセンターがある。

 近くに便利な店がある方が便利だと考えた創設者が、わざわざ少し学校と離れた位置に建てたらしい。

 その学生寮へと私と美彩が横に並んで歩く。

 少し道幅の広い歩道を歩いていると、よくスーツの人とすれ違う。

 というのも学生同様、完全帰宅時刻が三時と決められているからだ。

 それを過ぎると、私たちのように反省文を書かされたり、場合によっては別の罰を与えられたりする。

 そのため、基本的には皆同じような時刻に帰るようになったのだ。




「そう言えば、今日の呼び出しの件はどうでしたか?新澤先生の声のようでしたけど」



 いつも下校は共にしている私の友達の美彩とはクラスが別。

 そのため、学校内で会話する機会はあまりなく、いつもこういう話題は下校の時にされるのだ。


 私は、朝ポケットにしまったものを手に取って見せる。



「疾風の欠片(チップ)。風を操れるみたい」


「二つ目ってことですか?凄いですね!」



 美彩は目を丸くして欠片(チップ)を凝視する。


 国家によって特別に作られた欠片(チップ)は全て同じ形、同じ色で作られている。

 一辺二センチの小さな正方形。厚みは約一ミリ。その中に大量のデータが刻み込まれている。


 各欠片(チップ)の種類の判別は、裏面の下に記載された八桁のシリアルコードでしか判別することが出来ない。

 ちなみに蒼炎の欠片(チップ)のシリアルコードは『27860517』で疾風の欠片(チップ)は『39746882』だ。


 自身が持つ樹氷の欠片(チップ)と見た目は全く変わりないにも関わらず美彩は、物珍しそうに欠片(チップ)を見回している。



「なんか、選ばれし者(エンペラー)には特別に与えられるみたい」



 私は二枚目を与えられた理由をあえて一部伏せて説明した。



「凄いですね……。私なんてまだ低魔法士なのに……」



 美彩は少し俯いてそう呟く。


 二枚目を与えた理由が、他の階級の人達との差を更に広げて大人数に対する襲撃も打ち勝てる能力を与えるため。つまり、更なる階級の差別化だ。

 低魔法士である美彩との差が広がったというのは事実で、それを言うのは少し嫌だった。

 それに選ばれし者(エンペラー)、つまり最高魔法士の私を、わざわざ他の人のいないところに呼び出して内密に話をした。つまり、あまり他の階級の人にその情報を与えたくないという意図があったのだ。


 それら二つの理由があって美彩には一部伏せて説明したのだ。



「大丈夫だと思うよ。別に階級は固定されているわけじゃないし、今後上がることだってあるんだよ?」



 私はガクンとテンションの下がった美彩の気持ちを和らげようとする。

 すると、美彩は顔を上げて私を見た。



「そうですけど、今後の伸びも含めてその階級にされています。一つならまたしても二つ上がるのは厳しいと思います」



 美彩は正論を口にした。


 階級を決める三要素の中に、期待値がある。

 今後見込める伸び具合を示した値だ。

 それが大きければ低階級にいることは無い。

 つまり低魔法士である美彩は、期待値もさほど高くないということなのだ。



「そっか……。でも、きっと大丈夫」



 でも所詮は見積もり。

 それが百パーセント正しい情報とは限らない。

 本当は美彩は物凄い潜在能力を持っていて、それを計り損ねただけかもしれない。



「どういうことですか?」


「人生ってさ、何があるか分からないじゃん。可能性がゼロってことは決してないんだよ」



 例にあげるとすれば、中国の井陘の戦い。

 数的不利で漢軍が完全に負けると思われた戦いは、背水の陣という戦略を用いて趙軍を破った。

 勝利できる可能性はゼロにほぼ等しかったが、ゼロではなかった。

 そのほんの僅かな可能性を漢軍は勝利に繋げた。


 それはこのことだって一緒なのだ。



「確かにゼロになることはありません。ですが、限りなくゼロに近いと思います。それはゼロと同義ではないですか?」


「信じていればきっと、その小さな確率でも的中するかもしれない。だから、心から信じ続けることが大事。諦めたら小さな可能性すら無くなっちゃうんだからね!」



 私がそう微笑んで話すと、美彩の表情も明るくなった。

 どうやら希望を持ってくれたらしい。



「そうですね。頑張ります!」



 そう美彩は強く返事をした。



 私たちは、その後も会話に花を咲かせながら学生寮に向かうのだった。




次回も読んでいただけるとありがたいです。

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