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選ばれし者(エンペラー)の特権

今回も読んでいただきありがとうございます!

 



 私と同じ選ばれし者(エンペラー)である羽崎との戦闘から一夜明けた。

 疑問点を残した昨日の出来事に、私は頭を抱えていた。

 昨日羽崎は、二枚の欠片(チップ)を所持していた。

 同じ選ばれし者(エンペラー)であるにも関わらず、私は一枚しか所持していない。


 ちなみに選ばれし者(エンペラー)とは、実力至上主義制度にある階級の一つ。正式には最高魔法士と呼ぶ。

 最高魔法士、高魔法士、低魔法士、そして愚民の四階級に分けられていて、最高魔法士を最高階級としている。

 その最高魔法士はここ新宿に約十人所在し、そのうち五人が私たちの通う園庭学園(えんていがくえん)にいる。

 その五人を選ばれし者(エンペラー)と呼んでいるのだ。


 羽崎、そして私もそのうちの一人。

 二人とも同じ階級にいるにも関わらず、なぜか欠片(チップ)の所持数に差があった。

 このことに私はずっと疑問を抱き、心地よく眠ることは出来なかった。



 いつも通りの時刻に学校に着くと、突然放送がなった。



『西宮 彩椰さん、今すぐ会議室に来てください』



 声の主は、私の担任の教師。

 大人っぽい声は、教室内の雑音で聞こえにくかったが確かに呼び出された。

 私は小走りで会議室に向かった。




 会議室の扉を開けると、そこには担任が一人だけ椅子に座っていた。



「ここに座って、西宮さん」



 私は指示通り黒色の椅子に深々と座る。

 担任の教師の名は新澤(あらざわ) 露子(つゆこ)

 担任教師であり、私たちの学年の戦闘を教えている。



「早速だけど、紙は持ってきた?」


「紙?」


「とぼけないの。反省文よ」


「あ……」



 反省文とは、二日前に夕方以降外出禁止というルールを守らなかったため出された大量の宿題の一つだ。

 他の課題は終わらせたのだが、反省文を書くことだけ完全に忘れていた。

 というのも、反省文を書こうと思った時にちょうど羽崎が攻撃を仕掛けてきたからだ。

 おかげですっかり記憶から飛んでしまっていた。


 私は反省の色を顔に出して、忘れてきたということを伝えた。

 すると、新澤先生は呆れた顔をして話し続ける。



「本当に忘れていたのね?全く……」


「すいません」


選ばれし者(エンペラー)だって言うのに、自覚を持ってほしいわ」



 選ばれし者(エンペラー)と新澤先生が口にしたことで、思い出した。

 なぜ、同じ階級である私と羽崎に欠片(チップ)の数の差があるのか。

 ちょうど戦闘の担当教師である新澤先生がいるのでいい機会だと思った。

 私は、少し声を大きくして話をぶった斬る。



「そ、そう言えば!」


「な、何?話の途中なんだけど」



 新澤先生はなお一層呆れた顔をした。

 ついでに幸せが全部逃げていきそうなほど大きなため息をつく。



「あの、昨日羽崎と会ったんですけど、なんで二枚持ってたんですか?」



 その私の言葉を聞き、先生は拳を叩く。



「そ、そうだ。ごめん、忘れてたわ」


「え?」


「実は選ばれし者(エンペラー)にはもう一枚配るようにって上から言われてるのよ。ただ、西宮さんには、私忘れてて……」



 私同様、新澤先生も忘れっぽいようだ。

 あはは、と苦笑いをして誤魔化そうとしている。



「でもなんで二枚目を配る必要があるのですか?」


「このままだと、高魔法士たちが纏めてかかってこられたら、いくら最高魔法士でもやられてしまうわ。それを阻止するための救済措置として最高魔法士にはもう一枚与えることになったの」


「なるほど。昔の江戸幕府がそうだったように、纏めてかかってきて幕府を潰されないように遠くに大名を配置したのと同じ仕組みですね」



 私は、得意分野の歴史を使い例を挙げた。

 すると新澤先生は、戸惑った表情をした。

 分かりにくかったのだろうか。



「まぁ、そんな感じね。個人では圧倒的でも、流石に多くの数を一度に相手するのは大変だから」


「でも、結局それだけ最高魔法士を強くしても格下に負けることだってありますよ。本能寺の変みたいに」


「一応あなた達最高魔法士に対する救済措置なのよ?ありがたく受け取っておいた方がいいわよ」


「そうですね」



 自分に対する救済措置である二つ目の欠片(チップ)の配布。

 自分にとってプラスの事なのに何だか気が乗らない感じがしていた。

 だけどその気持ちの正体は、今の私では把握出来そうになかった。

 だから私は受け取ることにした。



「あの、私の二枚目の欠片(チップ)ってどういうやつですか?」



 そう言うと、新澤先生はポケットから一枚の欠片を取り出した。



「疾風の欠片(チップ)。風の生成や風を操ったり出来るわ。物理的ダメージを与えることは風のみでは殆ど出来ないけど、使い方によっては蒼炎の欠片(チップ)の能力を引き出すことも出来る」



 新澤先生は、右手に欠片を持ちこちらに差し出してくる。



「気に入らないかしら?」


「いえ。ありがとうございます」



 私は疾風の欠片(チップ)を受け取り、すぐにポケットにしまった。

 それを見て新澤先生はニコッと微笑んだ。



「あ、そうそう。学生寮の件、寮長から聞いたわよ?それについての反省文、明日提出ね」


「え……。だってそれは……」



 学生寮の件とは、昨日の羽崎の電気玉によるベランダの破損のこと。

 ただそれは、羽崎が悪いことであって私は全く悪くない。



「羽崎は面倒くさいのよ。呼び出しても応じないから」


「それ、先生の都合でしかないじゃないですか。私のことも考えてくださいよ」


「あ、じゃあ欠片(チップ)は要らないのね?」


「……」



 先生は相変わらずニコニコと笑っている。

 でもその微笑みはとても怖かった。



「ってことで、二日前の件のやつと合わせて明日よろしく!」



 新澤先生は見た目と裏腹に、物凄く性格が悪い。

 その事をたった今思い知った。



 こうして私は二枚目の欠片(チップ)、疾風の欠片(チップ)を手に入れた。




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