二度あることは三度ある
今回も読んでいただきありがとうございます!
「はぁ〜……」
私は大きなため息をつく。
大きなため息をついている理由は、今置かれている状況にある。
昨日の夜の私と羽崎の戦いから一夜開けた今日。
昨日のことについて私と羽崎はガミガミと怒られている。
理由はもちろん夜の外出。
私と羽崎は登校後すぐに会議室に呼び出されて、説教を受けているのだが、これがとても長く正直怠くなってきていた。
そのため、ため息をついていたのだ。
「ため息つきたいのは寧ろこっちなんだけど?まったく……」
新澤先生も深いため息をつく。
『すいません……』
隣にいる羽崎と私の声が重なった。
羽崎の表情をちらっと見ると、本当に疲れた顔をしていた。
それもまぁ、無理はない。
なぜなら、もう一時間経っているのだから。
「一時間目が戦闘だったから良かったものの、違ったらどうするつもりだったの?」
その戦闘担当の教師は今ここで、椅子に足を組んで座り、やかましく説教をしている。
それに対して私と羽崎は一時間の間立ちっぱなしなのだが、いい加減気付いてもらえないだろうか……。
耳を澄ませると僅かに聞こえる生徒の声は、恐らく外から。
つまり戦闘の授業をしているようだ。
副教師がいるからどうにか授業は成立しているらしい。
「いや、あの……。いくらなんでも授業サボってまで説教をしなくてもいいのでは……」
と、ここまで無言で耐え続けてきた羽崎が遂に不満を漏らす。
「あのね……。あなたたちのために、わざわざやっているのよ?」
「だったら必要ないですね。僕達は先生の説教を希望している訳では無いのですから」
「捻くれた論説はいいから、大人しく説教されてなさい!」
羽崎が説教を早く終わらせようとしたのが裏目に出て、寧ろ長くなりそうだ。
しかし、本当に教師というのはよく分からない。
論破されそうになったら、年上だからとか先生に逆らうのかだとか。
『実力至上主義』のくせにそこは変わらないなんて、あまりにも都合が良すぎるのではないだろうか。
「それで、あなたたちはあんな場所で何してたのかしら?」
「あ、あぁ……。それはですね……」
私の額から汗が滲み出てくる。
とても、『実力至上主義を止めるためにどちら意見を通すか決めるのに、戦いをしていた』などと言えない。
どうしても焦りは隠せない。
「どうしても言えないのかしら?」
「い、いえ……。そんなことは……」
どんどん新澤先生は、突き詰めてくる。
このままではいずれ吐かされてしまう。
どうしようかと、必死に頭で考えていた時だった。
「単なる痴話喧嘩ですよ」
羽崎が話に割って入った。
どうにか助かった……。
そう安堵したのも束の間。
「痴話喧嘩で、あんな大技使う必要あったのかしらね?」
ギクッ、として私は再び焦り始める。
次はどうするつもりなのか、と隣を見てみると、なせか羽崎はどこか冷静だった。
「なんで大技使ったって分かるんですか?」
「羽崎君は、雷狼の欠片。天候が急に悪化して、いきなり雷が落ちた。ここ周辺にはそんなことが出来る魔法士は、あなたくらいしかいないのよ」
羽崎は、新澤先生からの説明を受け納得した表情をする。
羽崎はその後、小さく安堵の吐息をついた。
「残念ね、羽崎君。話を逸らして回避しようとしても無駄ね」
「げっ……」
羽崎は新澤先生の言葉を聞き、一瞬で焦りの表情に変わった。
どうやら図星のようだ。
その羽崎の焦りようを見て、私も焦り始める。
焦るのも当然のこと。
新澤先生の顔が黒いことを考えている時のものだったからである。
「まぁ、でもこの辺で説教は終わりにしようかしらね」
と、新澤先生が優しく話す。
それを聞いた瞬間、私と羽崎は一気に肩の力を抜いて安堵した。
「ただし、明日反省文提出……、あ……」
私はまたもや汗が滲み出てくる。
一番恐れていたことが起きてしまったからだ。
しかしこうなると、最早手遅れだ。
新澤先生が、何かを思い出したようにニヤリとして私に話す。
「西宮さん?」
「は、は、はい!」
私は慌てて返事をする。
新澤先生の表情は微笑んでいるにも関わらず、とても怖い。
羽崎もその表情を見て怯えていた。
「あなた、二枚の反省文はいつになったら出すのかしら?」
実は、夕方に外出したのと羽崎にベランダを壊された件に対する反省文を未だに出していない。
しかし、私が忘れていたことを新澤先生も今の今まで忘れていて何とか回避してきた。
……が、もう回避不可能である。
「明日、出さなければ階級落とすわよ?」
「はははは、は、はい!必ず出します!」
新澤先生の顔は過去最凶レベルで怖かった。
正直、見てはいけないくらいの顔面崩壊。
大人っぽいイメージなど一寸たりともない。
暫くして私と羽崎は、解放された。
気付けば二時間目開始五分前で、私たちは一言も言葉を交わさず教室に向かっていった。
その日私は、大人しく家に帰って反省文三枚をほぼ徹夜で仕上げたのだった。
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