蒼炎と樹氷
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かつてこの国は年功序列制度によって、より歳月を経たもの程、位が高くなるという社会が形成されていた。
生きた年数が僅かに違うだけで、場合によっては生まれた日が一日違うだけで、人と人の間には格差が生まれ、逆らうことを許さなかった。
長い年月を経てその制度は風化。
次第に制度を無視し始めたり、不満や疑問を持つ声が大きくなった。
そのため国では、年功序列制度は今後数年の間に廃止するという決定がなされた。
そして、代わりとなる制度を国は提案した。
『実力至上主義制度』
実力があるものほど報酬は増え、位が上がるという制度。
賛成は多数で圧勝かと思われたが、反対もかなりおり、採決は一時中断。
賛成派、反対派が何度も会議を重ねた結果、『実力至上主義制度』を試験的に実施することにした。
だが、あくまでもそれは一部であり全国での試験的導入ではない。
行われたのはこの国の首都、東京。
さらに二十三区あるうちの、僅か一区のみ。
それは私たちの住む、ここ新宿である。
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新宿。
かつては、大量の人で覆い尽くされていた東京の言わば中心部。
そんな場所だったのは、もう昔のこと。
今は、区自体が隔離されここから出たり、外から入ったりすることは出来ない。
必要物資は国が手配し、特定の人達のみしか出入りすることを許されていない。
そのため、外部と繋がっているものは全て使用出来ない。
電車、及び新幹線は外と繋がっているため完全に止まっている。
今、利用価値のない駅の前には誰一人として姿はない。
私たちはその駅の前を通り学生寮へと向かっている。
夕暮れ時。
普通なら帰宅する人の姿などが多く見られるはずなのだが、ここでは全く見られない。
「それにしてもガラリと変わったわよね〜」
「それはそうでしょう。日本の一般常識や風潮などは大きく変わってしまいましたから」
「そうね。遥か昔に捨てたはずの戦いが、また復活したのだから変わるのも当然か……」
『実力至上主義制度』は、強いものが高い位につくことが出来る制度。
その優劣をつけるのは、戦闘である。
世間一般では、暴力や武器の所持は認められないのだが、この区のみ許されている。
更には、能力値(知力、運動力、期待値の三種の総合)が高いもののみに与えられるものがある。
『欠片』
この欠片には、特殊能力や能力強化のソフトがプログラミングされていて、それを手の甲にかざすと欠片は体の一部になり、能力を得ることが出来る。
欠片には、様々な種類があり特殊能力も能力強化も大きく異なる。
私、西宮 彩椰と赤田 美彩はその選ばれた人の一人であり、欠片を所持している。
「あ、そうだ!美彩は、何の欠片だった?」
「樹氷の欠片です」
「へぇ〜、氷なんだね〜。私と反対」
「ということは、彩椰さんは火ですか?」
「蒼炎の欠片だよ」
「今思えば、能力使ったことないですよね?」
「あ、そう言えば……。使い方は分かるけど、使う場面がね〜」
「あの〜、丁度いい実験台が居ますよ」
「え、どこどこ?」
「後ろですよ、後ろ」
私たちが後ろを振り向くと、そこには男が二人いた。
下卑た目でこちらを見てくる。
「全く……」
「夕刻になると人の姿が消えるのは、恐らくこういうのが居るからでしょう」
「まぁ、いっか。いい練習になるだろうし」
「さっきから何をゴチャゴチャ話してんだ、おい。ガキはとっとと帰ってお寝んねしてろ!」
金髪の男が私たちに威嚇してくる。
私は、右手を相手にかざした。
「逃げるなら今のうちよ?丸焦げになってもいいのね」
「なんだと?」
「『バン』」
私の右手から放たれた火の玉は、金髪の男の横を掠めて遠くへと飛んでいった。
男はそれを見て怯えていた。
「これで、分かったかしら?」
「わ、分かった。分かったから許してくれ〜」
私はニヤリと笑った。
その表情を見て、男達はさらに焦り出した。
「じゃあ、丸焦げじゃなくて、氷漬けで勘弁してあげるわ。美彩、あとはよろしく〜」
「了解です」
美彩は、右手を左から右に振った。
手から放たれた冷気は、男達を氷漬けにするのには充分だった。
男達は、完全に動かなくなった。
「凄いわね、美彩」
「いえ。能力値は彩椰さんの方がかなり高いですし、特殊能力も素晴らしいです」
「とりあえず、余程強い敵が来ない限りは大丈夫そうね」
「油断は禁物ですよ?彩椰さん」
「分かってるって」
二人は再び、学生寮へと歩き始めた。
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