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十一話 魔女と聖騎士 前編

 感想への返信等は、何か話を投稿した際の活動報告で行っております。

 著者の執筆速度が遅いため、返信も遅くなってしまう事をお許しください。

 ある日の事だった。

 ルドルフが家を訪ねてきた。


「姉上。シルバニアの王子より聞き及んだのですが、どうやらブロンゾ聖堂会が姉上を討伐するために聖騎士を派遣したそうです」


 唐突な来訪は、どうやらその情報を私に伝えるためらしかった。

 シルバニアの王子という事は、レネくんだな。

 前に依頼を持ってきたので、面識がある。


 ブロンゾ聖堂会の本拠地はシルバニア国内にある。

 レネくんは、その動向を知りやすい立場だ。

 それで、わざわざ知らせてくれたのだろう。


 有難い事だ。


 それから数日。


「ん?」


 昼食後、優雅に紅茶を嗜んでいる時だった。

 森への侵入者に気付き、私は声を漏らす。


「何かございましたか?」


 その声を聞きつけたゲオルグが問いかける。


「侵入者だ」

「侵入者、という事は……」

「武装してる」


 森の中に入り込んだのは、一人の女性だった。

 歳は二十歳前後。

 赤い髪をオールバックに撫で付け、全身を白銀色の鎧で包んでいた。


 背中には赤いマントをはためかせ、両手にはそれぞれランスと大きな円形の盾を持っている。


 そして盾と彼女自身の額には、見覚えのある印が描かれていた。


 確か、前にも武装した男が森へ侵入した事がある。

 その時に男が額へ描いていた印と一緒だ。


 白銀鎧のいでたちは、聖騎士という言葉がぴたりとはまる。

 この女性がルドルフの言っていた聖騎士だというなら、前に来た男性もブロンゾ聖堂会の人間だったのかもしれない。


「とりあえず、見るからに敵意があるので……」


 私は彼女の頭上に召喚魔法陣を出現させ、巨大な拳を落とした。

 女性は「ぐへぇっ!」と声をあげてその場に突っ伏した。

 そのまま気を失ったようだ。


「ゲオルグ。村まで送ってあげてちょうだい」

「かしこまりました」




 翌日。

 また彼女が森に入ってきた。


 今度は森に入るや否や、槍を構えて走り出す。

 まぁ走ってこられると頭上からの召喚魔法は当て難くなる。

 その場合、横向きに出すんだけどね。


 私は彼女の進行方向に魔法陣を展開し、前から拳を召喚した。

 拳は見事に直撃し、彼女は殴り飛ばされて派手に転倒する。

 そのまま動かなくなった。


 ……生きてるよ。

 非殺傷設定だから。


「ゲオルグ。村まで送ってあげてちょうだい」

「かしこまりました」




 翌日。

 また例の彼女が森へ侵入した。

 今回は、周囲を警戒しながら慎重に進む作戦のようだ。


 私は拳で迎撃したが、彼女はそれを即座に察知して避けた。

 なかなか身体能力が高いようだ。


 どんどん拳を放っていくが、次々に避けていく。

 むぅ、手ごわい。


 じゃあ、これはどうか?

 私は彼女を囲むように六方向へ魔法陣を展開した。


 この悪魔は腕を六つ持ち、拳は六つまで出せる。


 同時に放たれる拳。

 彼女は真上へ跳躍してそれを避け、そして……。


 真上に展開された魔法陣から召喚された足に踏み潰された。


 ちなみに足も召喚できる。

 今、両腕六本と足を召喚された悪魔は元の次元……えーと魔界と言えばいいのかな? でかなり窮屈な格好を強いられているだろうな。


 私の召喚術はこの世界と近い次元に住む悪魔に協力してもらう魔法だ。

 が、彼らの住む場所がどんな世界なのか、いまいちよく知らない。


「ゲオルグ」

「かしこまりました」




 その翌日。

 性懲りも無く、彼女が来た。

 もう手がないのか、森の際から中をうかがっているだけだが。


 もうそろそろ諦めて帰ってくれないかなぁ?

 いや……。

 迷った末、最終的に意を決して突撃してきそうな気がする。


 面識は無いけど、なんかここ数日でなんとなくこの子の性格がわかってしまった。


 そんな時だった。

 彼女とは別に、五、六歳程度の女の子が彼女の前を通って森へ入ろうとした。


 この子は、アンナさんの娘で名前はヘルガちゃんだ。

 たまにうちへ遊びに来る。


「待ちなさい」

「なぁに?」


 聖騎士がヘルガちゃんを呼び止める。


「この森は危険です」

「大丈夫だよ。森の中は、魔女様が守ってくれるから絶対に安全だもん。だからヘルガ、お母さんからもここなら一人で来て良いって言われてるの」

「むむ……」


 聖騎士は、何か思い悩むように眉間へ皺を寄せる。


「じゃあ、ヘルガ行くね」

「ま、待ってほしい」


 ヘルガちゃんへ手を伸ばし、聖騎士は彼女を呼び止める。


「私を連れて行ってくれませんか」

「えー? でも、知らない人についていっちゃダメってお母さんに言われてるし……」

「え、いや、ほら……。私についていくのではなくて、私がついていくのだから大丈夫です」

「えーでもー」

「私の名前はキアラ。で、君はヘルガちゃん。ほら、もう知らない人じゃないでしょう?」


 どこのピエロだテメェは?


「んー、じゃあいいかな」


 こんなんで言いくるめられるヘルガちゃんに私は少し不安を覚えた。

 今度、何かあった時のためにお守りでも作ってあげよう。

 害意を向けられた時に、何かを召喚するような奴を。


 ヘルガちゃんに案内されて、キアラと名乗った騎士は私の家へ向かって歩き出す。


 ああ、ヘルガちゃん。

 木の実の目印教えちゃダメ。


 しかし、どうやらキアラともついに対面しなければなさそうだ。


 そうこうしている内に、二人が家に到着した。


 と同時に、槍を突き出したキアラが扉を突き破って家の中へ突撃してきた。

 激しいノックである。


「慈覚ビィィィム!」


 私はそんなキアラへ向けて目からビームを放つ。

 これはいつの日か訪れるであろう、手長足長との対峙において彼らを調伏せしめんと編み出した必殺技である。


 どうにかそれを盾で防いだキアラだったが、防ぎきれずに後方へ吹き飛ばされた。


 吹き飛ばされた方向にヘルガちゃんがいたので、彼女にバリアを張ってキアラがぶつかるのを防ぐ。


「がっ!」


 そのバリアにぶつかってキアラは地面へ突っ伏した。

 槍を地面に突きたて、杖代わりにしてキアラはすぐに立ち上がる。

 槍の切っ先をこちらへ向ける。


「私はブロンゾの聖騎士、キアラ。人心を乱す邪悪な魔女め! 我が槍の一貫にてその乱れを正す!」


 奇襲の後に名乗りか。

 実はこの人、ニンジャなんじゃないのか?


「うおおおっ!」


 私が何か言う前に、キアラは槍を構えて突撃してくる。

 ゲオルグが前へ出ようとするのを手で制し、両手の平をキアラへ向けた。


「体内電気!」


 雷光に匹敵する電流がキアラへ向かう。

 が、私の放った電流は、彼女の構えた盾を上滑りするようにして受け流される。

 彼女が平然と迫ってきている所を見れば、流された電気も完全に無力化されているようだ。


 その内に、キアラは私の目前まで迫っていた。

 あまり近づかれる事がないので少し焦る。

 くっ、仕方ない。


 私は魔力で身体強化し、突き出された槍を力任せに殴りつけて軌道をそらす。

 思わぬ反撃にキアラは驚いていたが、すぐさま繰り出された私のパンチを盾で防ぐ。


「ちょあっ! ちょあっ!」


 金属同士がぶつかり合うような音が室内に響き、一撃毎にキアラの体勢が崩れた。


「くっ、掛け声も動きも気の抜けたものなのに、どうしてこんなに重い!?」


 最終的にキアラがよろけ、その際に当てられた一撃で家の外まで吹き飛ばされる。

 何とか倒れずに踏みとどまったキアラは、盾をこちらへかざした。


「聖印の力よ!」


 そう唱えると、盾の印が赤く光った。

 そこから、赤い光線が私へと発射される。


「慈覚ビィィィム!」


 お互いの放った光線がぶつかり合う。

 そして、私の光線が押し切って勝った。


「うああっ!」


 ビームを盾で受け止めるようにして吹き飛ばされたキアラ。

 地面に着地するとすぐに槍を構えるが、その眼前に私は悪魔の拳を召喚する魔法陣を展開した。


 魔法陣から放たれた拳をキアラは盾で防いだ。

 が、その直後に背後から放たれた拳をまともに受ける。


「ごああっ!」


 私は慈覚ビームを放ちつつ、複数の魔法陣を周囲に展開していた。

 体勢を崩した彼女へ、私は拳を一斉に放った。


 ぼっこぼこに殴られたキアラが宙を舞い、地面にどさっと落ちた。


「痛そう……」


 そんな様子を見てヘルガちゃんが呟く。


「痛いと思う。でも、大丈夫だよ」

「大丈夫?」


 顔をうかがいながら、ヘルガちゃんは私に訊ね返した。

 私は深く頷く。


「なら大丈夫だね!」

「うん。大丈夫」


 非殺傷設定なので死なない。

 痛いだけだ。

 慈覚大師が直接目からビームを放ったわけではないんですけどね。


 身体強化をした魔女のパンチは、甲冑武者の体幹ゲージを一撃で削る程度の攻め力がある。


 キア「神へ祈る間も無く、ここで死ね! ベルベット!!!」

 ベル「AAAGH!」

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