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閑話 魔女狩りの男

 タイトルを変更いたしました。

 旧題 転生魔女は森で隠居する

 現題 転生魔女の妖怪事件簿


 聖騎士編です。

 終わりまで、だいたい八話くらい毎日更新予定です。

 その森には、魔女が住んでいるという。

 噂を聞きつけた俺は、早速その地へと向かった。


 森の近くには、村があった。

 一見してそこは、のどかな村にしか見えなかった。

 だが、その村は魔女が住まう森の近くにあるのだ。


 それが見せ掛けだけである事を俺は知っていた。

 魔女に支配された村を俺はいくつも見てきたからだ。


 村には意外な事に、ブロンゾ聖堂会の教会があった。

 俺は情報収集のため、ひとまず教会へ足を運ぶ事にした。


「旅の方ですか? 礼拝……ではありませんね」

「俺は魔狩人まかりゅうどだ」


 答え、俺は魔狩人の証である剣と盾を模った銀製の紋章を見せた。

 魔狩人とは、ブロンゾ聖堂会に所属する邪悪を狩る者達の総称である。


「この付近の森に魔女がいると聞いた。情報がほしい」


 単刀直入に用件を切り出すと、神父は表情を若干硬くした。

 平静を取り繕っているが、その変化を俺は見逃さなかった。


「何かの間違いではありませんか? ブロンゾ聖堂会が教会を置く地の近くに、魔女が住むなどという事はありえませんでしょう」


 魔女に支配された村人達は魔女への畏怖によって魔女の存在を隠し、余所者を極端に避ける傾向がある。

 そんな村人達の姿と神父の態度はとてもよく似ていた。


 ブロンゾ聖堂会は、神の名の下にその威光によって世から邪悪を滅する事を目的とする組織である。

 よって邪悪を排除するための武力を持ち、邪悪に付け入られぬよう人々に教え諭す活動を行っている。


 その武力の一端を担っているのが、俺のような魔狩人だ。


 だというのに、その神の下僕たる神父の態度はあまりにも頑なであり、俺は顔を顰めた。

 それだけ、ここに住む魔女は強いという事なのかもしれない。


「この私が言っているのですよ」


 神父はそう言うと、金で作られた魔狩人の紋章を見せた。

 その紋章に俺は驚く。

 この神父は俺と同じ魔狩人だったのだ。


「!」


 それも金製の紋章は最上位ランクの魔狩人だけが持つ事を許された物だ。

 俺はそれよりも劣る銀製の魔狩人である。


 確かに、この紋章は彼の言葉に説得力を持たせている。

 しかし、俺の持つ情報に間違いは無い。

 それだけに精度の高いものだ。


 だから、魔女は必ずいる。


 つまり、ここに住む魔女は最上位の魔狩人が屈するだけの力を持っているという事だ。


 ここに住む魔女は只者ではない。

 その手口も巧妙である。


 並の魔狩人であれば、恐らくこの教会へ立ち寄るだろう。

 そしてこの神父に説得されれば、帰らざるを得ない。


 そうして、新たな魔狩人が訪れる事を防いでいるのだ。

 それが今まで、この地に住む魔女の存在が露見しなかった理由だ。


「わかりました」


 俺はそう言うと、教会を出た。


 多くの魔狩人達が、こうしてこの教会を去った事だろう。


 納得して去った者もいれば、納得できなくとも帰らざるを得なかった者もいるだろう。

 最上級の魔狩人を屈服させる魔女がいる。

 そう思えば、身の危険を感じるのも仕方がない。


 しかし、俺の足はそのまま森の方へ向かっていた。


 こののどかな村の裏で、魔女によって苦しめられている人々がいる。

 その苦しみから早く解き放ってやらねばならない。

 俺はそう、決意を新たにした。


 それが、神の下僕たる魔狩人の使命なのだ。


 俺は森に踏み入る前に、特殊な薬液で額に印を描いた。

 聖印と呼ばれる物である。


 魔女は悪魔との契約によって、常人ならざる並外れた魔力を得ている。

 しかし、この聖印を額に刻む事で悪魔の力をある程度無効化する事ができるのである。


 直接的な魔法攻撃を完全に防ぎきる事はできないが、相手を察知する魔法程度なら防ぐ事ができる。

 力の強い魔女ならば、自分の領域≪テリトリー≫に『目』を持っているという者もいるのだ。

 その『目』を無効化する狙いがあった。


 剣を抜き、その刀身を見る。

 刀身には複雑な紋様がびっしりと刻まれていた。

 これで斬れば、魔女と悪魔の契約を切り離す効果がある。


 悪魔との繋がりを切り離された魔女は、大幅にその力を失う事になる。

 この剣が魔狩人最大の武器なのである。


「よし」


 一度息を吐き、改めて決心し、森へ一歩踏み込んだ。


 その瞬間である。

 俺の体は上空から現れた巨大な拳によって叩き潰された。




「明らかに敵意があったから、召喚魔法で攻撃したんだけど……。やりすぎたかな?」

「よろしいかと思います」


 私が訊ねるとゲオルグはそれに賛同してくれた。


「そう。じゃあ、村まで送っていってあげてくれる?」

「かしこまりました」


 そう言って、ゲオルグは恭しく頭を下げた。




 卑劣な魔女の一撃によって、俺は意識を失ってしまった。

 そして気付けば、教会の一室で目を覚ます事になった。


「あの森にはやはり魔女がいる!」


 と神父に掛け合ったが……。


「あなたは夢を見たのですよ」


 神父はそう言って取り合わなかった。


「ここに、邪悪な魔女はいないのです。だから、この地から去りなさい」


 神父は逆に、諭すように言う。

 俺は何を言っても無駄だと悟り、教会を出た。


 同じく、扉を開けて一人の女が教会へ入ってくる。

 全身黒尽くめの異様な姿の女だった。

 その両肩には、二つの星のマークがあり、同じく星のマークをあしらったフィンガーレスグローブを手に嵌めていた。


「あ、どうもこんにちは」


 女はあっけらかんとした様子で俺に挨拶すると、教会の中へ入っていく。


「エドアルドさん、とても良いワインを貰ったので一緒に飲みませんか?」

「おお、ご相伴に預かってよろしいのですか?」

「ええ、もちろん。ですが、わかっていますね?」

「ゲオルグくんには、私が依頼をしたという事にしておきます」


 魔女を放置し、酒に逃げるか……。

 たとえ最上級の魔狩人だとしても、そんな人間にはなりたくない。


 確かに敵は強大だ。

 だが俺は、魔狩人として屈するわけにはいかない。


 俺は再び、森へと挑んだ。


 聖印を使って森の中へ入ると、今度はすんなりと侵入する事ができた。

 前はどこかで失敗したのかもしれない。


 そして、森の中を歩いている時だった。


「ここまでです」


 声をかけられ、見ると一人の少年が立っていた。


 奇妙ないでたちの少年だった。

 青黒い服にそれと同じ色の短パン。

 その上に虎のような黄色と黒の縞模様をした羽織を着込み、足には木製の奇妙な履物を履いている。

 その髪は色の一切が抜けたように白く、その髪で半分隠れた顔もまた白い。

 ただ、目だけが赤かった。


 その整いすぎた容姿や、常人とは思えぬ色合いはこの世の者とは思えなかった。

 否応無く、警戒してしまう。


「貴様は何者だ?」

「ベルベット様の執事です。生憎、ベルベット様はご不在ですのでお帰りいただきたく参上致しました」


 中性的な顔立ちの少年は、そう言って恭しく一礼した。


「ベルベットとは、この森の魔女か?」

「はい」

「その魔女はどこにいる?」

「大事な御用があるとおっしゃっておりましたので……。恐らく、どこかでお酒でも呑んでいるかと」

「その変な服装は?」

「ベルベット様の趣味です。三日ほど前に完成してから、ずっとこの格好を強いられております。はい」


 あまりにも素直に、魔女の執事を名乗る少年は答えた。


「何故、そうべらべらと答える? 何を企んでの事だ?」

「今日のあなたは、剣を抜かれておりません。敵意ある方とはお見受けしますが、訪ねる者があれば誰であれ丁重に持て成すよう、主から申し付かっておりますので」

「舐められたものだな。では、これならどうする?」


 言って、俺は剣を抜き放った。


「無理やりにでもお帰りいただくだけでございます。はい」


 この期におよび、それでも少年は態度を崩さずに答えた。

 本当に舐められたものだ。


 剣を構え、少年へ迫る。

 対して少年は、両足の履物を蹴り飛ばす。


 飛来するそれを叩き落す。

 履物は木製であり、さほど苦労せず叩き落せた。


 そして次の瞬間、少年は俺の目前まで迫っていた。

 しかし、それでもまだ剣の間合いである。


 俺は勝ちを確信する。


 俺は剣を振り下ろす。

 履物による目晦まし、それで距離を詰め切れなかった事がこの少年の敗因だ。


 剣が、少年の頭部へと迫る。


 その時だった。


 少年の拳が、剣を横合いから叩いた。

 腕を大きく回すような軌道で振られた拳は、難なく剣の軌道を外す。

 その隙に、少年はその身を俺の懐へと深く踏み込ませた。


「セイッ! ヤァァッ!」


 鼓膜を破らんばかりの気合に満ちた叫び。

 少年の口からそれが放たれたかと思うと、同時に痛みが腹を穿った。


 さながら、鉄塊で殴りつけられたかのような衝撃。

 臓腑が吹き飛んだのではないか、と錯覚するほどの激痛が腹部を襲う。


 俺は剣こそ手放さなかったが、あまりの痛みにその場でうつ伏せに倒れこんだ。


「が……は……」


 呼吸にすら苦痛が伴う。

 このような経験は初めてだった。

 そして、動けない。

 まるで、殴られた場所に杭が刺さり、地面へ体を縫い止めているかのようだ。


「終わりですか? 私如きに勝てぬようでは、ベルベット様に勝つ事などできませんよ」


 声と共に、足音が近づいてくる。


 殺される……!

 しかし、その恐怖すら紛れてしまうほどの痛みが、未だに俺の動きを苛み続けている。


 俺は未だかつてない程に追い詰められていた。


 そして……。


「何度、来ようと構いません。ベルベット様を狙うのも良いでしょう。しかし、もし万が一にでもあなたがあの方を傷つけるような事があれば……。その時は、私にある権能全てを尽くし、あなたを殺します」


 耳元でそう囁かれ、首を絞められた。

 遠ざかっていく意識は、ほどなくして完全に途絶えた。




 教会のエドアルド神父とお酒を酌み交わし、神父が酔い潰れたので私は帰る事にした。

 しかし、そのまま帰るとゲオルグに飲酒を看破されてしまう可能性があるため、策を弄する事にした。


 水を多めに飲み、少しでも酔いが醒めるように村の中を散歩し、今日のような日のため密かに作っておいたミントを始めとした各種香草を煮詰めた超苦い薬も飲んだ。

 アルコール臭はこれで誤魔化せる。


 完璧である。

 これなら、バレる事はない。


 あ、今日のベルベット様の呼気めっちゃさわやか、程度に思われるだけだろう。


「お帰りなさいませ。ベルベット様」


 そうして自宅に帰り着くと、コスプレしたゲオルグが出迎えてくれた。

 たまらねぇぜ。

 このコスプレを見ていると妖怪の住む森に住んでいる気がしてくる。


 いっその事、家の前にポストでも建てようかしら。

 手紙を届けてくれる人なんていないけど。


「ただいま。ゲオルグ」

「今夜の晩酌は控えていただきます」


 ひょ?

 唐突に、何でそんな事言うの?


「何を言っているのです?」

「お酒を飲んでいらっしゃいましたよね?」

「いいえ、ちっとも」

「私の目を見ながら誓えますか?」

「もちろん」


 私は身の潔白を証明するため、ゲオルグの目を見据えた。

 まっすぐなゲオルグの視線と私の視線が交じり合う。


 見よ、曇りなきこのまなこを。

 しかし、不思議な事に私の視線は少しずつ横へずれていった。


 やましさには勝てなかったよ……。


「……ごめんなさい。お酒を飲みました」

「ベルベット様のそういう素直な所が私は大好きです」

「私もゲオルグの事が大好きですよ。晩酌を許してくれたらもっと好きになってあげますよ」

「ダメです」


 とても可愛らしい笑顔で拒否された。

 ちぇっ。


「それで、私の留守中に何かありましたか?」

「いいえ。特別にお伝えするような事はございませんでしたよ」

「そう。留守番、ありがとう」


 平和なら、それが一番だ。




 シルバニア国内。

 ブロンゾ聖堂会本拠地。


「それが、あの地にて私の経験した事です」


 俺はある一室で、森での一件を語り終えた。

 相手は、知り合いの聖騎士である。


 聖騎士はブロンゾ聖堂会における兵士と呼べる存在である。

 邪悪を滅するという任務は同じだが、同時にブロンゾ聖堂会を守り、対人の戦力も担う。

 与えられた武装も、本人の力量も、魔狩人とは雲泥の差があり、選ばれた人間しか務める事のできない役職である。


 あの村での一件があってから、俺はブロンゾ聖堂会の人間に魔女と繋がっている者がいるのではないかと疑念を抱くようになった。

 だからこそ、俺は一番信頼できる聖騎士にこの事を相談した。


「そうですか。知らせてくれて、ありがとうございます。こちらで調べてみます」

「ブロンゾの内部にも、魔女の手先がいるかもしれません。お気をつけください」


 俺が言うと、彼女は視線を鋭く細めた。


「私はブロンゾの同志を信じています。そのような人間はいないと、そう思っています」

「……すみません」

「ですが、私はあなたの事も信じています」


 謝ると、彼女はそう言って笑みを向けてくれた。


「忠言はありがたくいただいておきます。その地へ、行く必要がありそうですね」

「はい。では、あとはお願い致します。キアラ様」

 ベルベットは自前の魔力だけを使っており、悪魔から力を得ているわけではないので聖印の効果を受けません。


 以降、関係ない話の長文です。

 著者が書きたかっただけです。

 読み飛ばしてください。


 ここで書くことではないのですが、こういう事を書ける場所もないのでここに書きます。


 某妖怪アニメの六期が始まった時、このシリーズのあとがきでその話に触れたいと思っていたのですが……。


 終わって数年経ちましたね……。


 河童、すねこすり、猫仙人の話が強く印象に残っています。

 猫仙人の口から多頭飼育崩壊という言葉が出た事が衝撃的でした。

 ある意味でねこ娘まみれの雪女回もよかった。


 画皮の話では、声優のキャスティングのため別の妖怪アニメののっぺらぼうのエピソードを思い出しました。


 あと、性癖全部乗せみたいなねこ娘、ビーム兵器になってしまった指鉄砲、いまだかつて無い大物感の溢れるぬらりひょんやら、楽しかった。

 できれば百話以上続いてほしかったのですけど。


 なんとなく、五期が好きです。

 ステーキとラーメンを食べる話が特に好きです。

 三期のやたらねずみ男に厳しい所が苦手です。

 ねこ娘が禿げた時にデレたのは好きです。


 それから最近、ゲゲゲっぽいデジタルなモンスターのアニメが始まりましたね。

 設定を聞くとウォッチっぽいですが、被害がガチなのでどちらかというとゲゲゲ寄りでしょう。


 最近、コレクション目的でカードゲームを二パック買って、ハマり込んでしまっていたのでこの組み合わせは嬉しいです。


 アルファが好きなので品薄気味のパックをどうにか買ったら、下乳モン(ググッたらこの名称で出た)が出ました。

 同じシークレットだがそっちではない、と思いましたがこれはこれで嬉しい。

 三銃士デッキを作らざるを得ない。


 それからアニメ一話目の奴は1900年〜1999年までの間を自由に行き来できるという設定があったはずですが、今の時代ではその力が失われているのでしょうか?


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― 新着の感想 ―
[一言] 物語再開に気づきませんでしたっ! わーい。 上空からコブシ…… ベルベットさんの趣味的には、足とか首とか馬の脚とかホントは召喚したかったんだろう、ナーw ゲオルグ君、〇太郎か…… 原作かウェ…
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