ビッグファミリーデストラクション
ジャンル変更SF→文学 2015 08 14
自由と合理性と経済性を愛した人類は、幾度目かの国家と家族の解体に乗り出した。
最初に企業は吸収合併を繰り返し無国籍化した。企業の体内を数多の人種民族が行き来し、各大陸の資源を嚥下していった。
彼らは十分に賢く立ちまわった。最初に目をつけられたのは造幣権だ。最初は些細なものから始まった。やっていることは銀行の利子の変わらないようなものだった。世間で様々な仮想通貨が流通する頃には企業は自らお金を刷ることが可能になった。
この頃に政府は喜んで企業のために力を尽くした。献金云々というよりは他国の企業が純粋に怖かったためだ。最終的には国家が解体された。
企業は彼ら流にもたざるものに施した。彼らは人材を欲していた。そこで古代幾度と試された方法をとった。子どもたちは一箇所に集められ、集団で育てられるようになった。
親はというといわゆるポリアモニスト(複数恋愛者)が増えていった。これには強い理性の力が要求された。
結果的に金持ちは多くの人を養う義務が生まれたのだ。一部の巨大企業は王朝とかしていき、それは一つの家族のように見えた。それと同時期にある施設では・・
「だって彼が私のパパよ」
「そんなのおかしいよ。あの人達はみんな僕らの両親だろ?」
リュータは納得がいかなかった。僕らはみんなあの人達の子供だし、あの人達みんなが親だろう。
「ぜんぜんわかってないわね、あなた。私はあんたのことけっこうすきだけど、大多数は嫌いよ」
「・・どうしてそんなことを言うの?」
「事実だからよ。あの人達は私とは色も違うし、鼻の形も違うわ」
「そんなの関係ないよ」
「ほんとうにそう思ってるの?少なくとも私はそう思わないわ」
「君が何を言ってるのかわからないよ」
「わからないならそれでいいのよ。わからないうちはここで生きていけるんだから」
「じゃあ君は・・」
「ええ出て行くわ。私は私の生きやすいコミュニティを創るの」
「ぼ、ぼくも・・」
「あなたには無理よ。同じ思いを共有できなきゃね。私の言ってることが理解できるようになったら、そのとき来ればいいわ」
「じゃあね、リュータ」
「・・またね、ミカ」
この後ミカはビッグマザーとして母系社会を築いた。ミカのもとには意志を同じくするものが多く集った。
かなりの数の人間たちが多種多様な人種の中で集団で暮らすことに耐えられなかったのだ。
あのまま行くと黒いのと白いのと黄色いので血みどろの殺し合いになる可能性もあった。
案外ミカは救世主だったのかもしれない。
そしてミカは齢を取りビッグマザーを引退してリュータと二人で暮らした。
ミカの子どもたちや集まった多くの同士は気が合う物同士ツガイを作り一夫一婦制に戻っていった。
「私の言いたいこと分かった?」
「そう責めるなよ。昔のことは」
昔から疑問に思っていたことをリュータはミカに尋ねた。
「でもさ、僕達が混ざり合って人種なんか失くなるとは思わなかったの?」
「思わなかったわよ。私達は自我があるでしょ。それといっしょ。人は誰かといっしょにいたいと思うのと同様に独りでいたいと思うものよ。
もっと言えば誰かといっしょにみんなと違うところにいたいと思うものなのよ」
「そんなものか」
「そんなものよ」
ミカの国はこのときになると様々な文化文明を築いていた。とくに創作物の分野ではこの国に比肩する企業はなかった。おそらく最初に集まった人達の中に多くの優秀な者たちがいたせいだろう。
もちろんガラパゴス化していたことも影響していた。
対岸では大きな内紛が起きようとしていた。
世界がバラバラになるのには後少しの時間でよかった。
あまりにもサイエンス要素なさすぎですね。失礼しました。