表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

プロローグ

はじめて小説を書いてみました。

至らない点は多いと思いますが、

連載を通して、

技巧も向上していければ、と思っております。


感想及びアドバイスをいただけると、今後の励みになります。

何卒、よろしくお願いいたします。



*注

恐らく、私は遅筆の気がありそうです。

第一章UPまでは、

お時間をいただくと思いますのでご了解ください。



「お前アホだろ」

 アンドリュー・ロイスは罵倒された。オブラートに包まれることなく、はっきりと。

 ユーティリス大陸東に位置する大国アレーリア。その首都・イズレニスの中心にある公園は、休日の昼間にふさわしく、ほかほかと初夏の 陽光( ひかり)が差して、咲き誇る紫陽花はそれを健康そうに喜んでいた。子供が駆け、親は笑い、カップルが睦み合う。ここには、憩いと幸せが満ちている……そう、ベンチに並んで腰をかけた、若者以外は。

 アンドリュー・ロイスは、髪に溶かした真鍮を塗り、瞳にサファイアをはめた眉目秀麗。顔かたちの勝れたことは言うまでもなく、稀代の名工が造形した面をつけたかのように美しい。そんな彼は、横から右耳を直撃する、連射可能な言葉の弾丸に、眉を顰め、目を閉じる。それでも止むことのない銃撃に、虚空を見上げると、やれやれ、といわんばかりに肩をすくめた。

「――ほんっとうに、お前はダメなヤツだな。なんだよさっきのは。『今日一日だけ結婚してくさい』ってのは何なんだ。そんなナンパのしかたがあるか、このバカやろう。今日はたまの 解放日(・・・)なんだぞ。かわいい女の子とキャッキャ、ウフフな一日にするんじゃなかったのかよ」

 とレノン・グリシャリムは必死に言う。優しげな印象をあたえる、たれ気味の目元が、今はつりあがり、子供と変わらぬほどの小さな鼻を目いっぱいに広げて怒る。

「あ~、なんだ、その、世の女性は『結婚』という言葉に弱いのかと思ってだな、甘い言葉をささやけば、たちまち恋に落ちてくれるものか――」

「――んなわけねぇだろ、糞イケメン!! 頼むよ、なんでそんなに格好いいのにモテないんだよお前は。いいか、俺らのパラダイスはすぐそこだぞ相棒。鬱積した日々の不満を解消するんだよ。長い付き合いだからわかってるよ、お前がナンパを苦手だってのは。でも仕方がないじゃないか……俺は 中途半端(・・・・)なんだから。俺がお前みたいに格好よければいくらでも俺が担当するよ。頼むよドリー、もうひとがんばりだ」

 レノンはドリーの正面に立つと、両肩を掴みながら懇願をした。数瞬の沈黙の後、しかたがない、といった感じでドリーは立ち上がると、

「……これが最後だぞレノン。これが無理なら俺にナンパを期待するな。今度はさっきとは違う方向でいく」

 といって、公園の中央にある噴水広場に向かった。ドリーは周囲を見渡すが、目ぼしいターゲットは見当たらない。正面の芝生には、家族連れが穏やかにランチを楽しんで、噴水脇のベンチでは、カップルが笑顔を浮かべて語り合っていた。散歩をする老夫婦も、ペットの散歩をする子供もあるが、若い女性の姿はない。

「これは、ナンパの成功・不成功以前の問題だな」

 とそう呟いたとき、

「退いてください!! 」

 ドリーの背後から、少女のような可愛らしさと、凛とした響きを併せ持った声がした。

「え? 」

 振り返ると、そこには天使がいた。これは陳腐な比喩ではない。光を浴びて金塊の如く輝く髪に、雪のように白い肌、長いまつげに、青い瞳、そして純白のドレス。ドリーは、間違いなく“天使”を見たのだ。衝突を避けるために、ドリーは半身になって道を空けると、目の前を少女が走り去り、その後ろを黒服の男が二人追走していった。しばらく呆然としていたドリーだが、ただならぬものを感じて、その後を追うように走り出すと、秋には一面が紅黄に染まる並木道にたどり着いた。公園の深部にあたるこの場所は、人出のある休日にもかかわらず、人の姿はない。ドリーは周囲の気配を探り、少女と黒服を捜す。目を閉じて、心を澄ませ、風の声・大地の声を聞く。すると、北西の方角に気配を探知した。すぐさま、ドリーは駆け出し、入り組んだ道を50メートルほど走ると、黒服を視界に捉えた。ちょうど、少女を追い込んだところのようで、歩を詰めようとするところを、ドリーは滑り込むようにして間に割り込んだ。

「ちょっと失礼。皆さんはどんなご関係で? 女の子を追い回すなんてただごとじゃあないでしょう」

 そういって、黒服を睨めつけた。

「お前には関係ない。これは内輪の問題だ」

 と生気のない瞳で黒服の片割れが言ったが、ドリーが不信の目を向けると、――疑うのであれば、その娘に聞いてみるがいい――と続けた。ドリーは男達から視線を外さずに、少女に問うた。

「この人たちの言っていることは、本当なの? もしもそうなら、俺はいなくなるけど、本当に大丈夫かい? 」

「……ほ、んとう、です」

 しぼりだすような小さな声だった。たしかに、少女と黒服の間にはなんらかの関係があるのだろう。が、普通とは思えない少女の反応に、ドリーはあらためて黒服と対峙する。

「申し訳ありませんが、納得いたしかねます。ここは、お引取りいただけますか」

 ずっと沈黙を保っていたほうの黒服が、一歩前へ踏み出すと、突然逆足で顔をめがけて蹴りを放った。ドリーはそれをスウェーでかわして、残った軸足を軽く払う。踏みしめる地面を失った男は、横向きに地面へと叩きつけられた。立ち上がろうと、体を起こしかけた男の顔に、カチ上げるように蹴りを見舞うドリー。この一瞬の攻防の末、男は気を失って崩れ落ちた。

「そっちがその気なら、容赦はしません。言っておきますが、俺は 強い(・・)ですよ」

 そういって、残った男に笑みを向けた。生気のなかった男の瞳に怒りの炎が灯ったが、分が悪いと踏んだのであろう男は、一人で逃げ去った。

「あ、あの、ありがとうございました」

 そういって、少女は深々に頭を下げた。とりあえず、ここを離れよう、と声をかけたドリーは少女と公園の中心部まで戻ってきた。すると、前方からレノンが駆け寄ってきた。

「おいおい、どこいってたん――」

 やっと気付いたのであろう、少女を視界に入れたレノンは言葉を失った。まるで、壊れたブリキの人形のように、ギッ、ギギッ、といった風にドリーへと顔を向けると、右手の親指を立てて、最高の笑顔を浮かべた。どうやら、少女に話を聞くまでにやらなくてはいけないことができたようだ。ドリーはため息をつくと、奇妙な笑みを浮かべながら言った。




「レノン。俺もお前も、別の意味で、退屈しない一日になりそうだ」




読了いただきまして、まことにありがとうございました。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ