第二部 エピローグ
イージスター島からホムンクルス部隊が去ってから3年の月日が流れた。新設された民衆政府によって島は少しずつ復興していた。人が人を呼び、需要が産まれ、かつての支配が夢の様な日々を送っていた。
民衆政府の代表はサンディース。ホムンクルス部隊との戦いで名声を得た男だった。
[代表。他国より難民の受け入れを申告されています][ウム。経歴は調べとけよ。ホムンクルスだけはゴメンだからな][代表。取引をしたいと他国より話し合いがあるそうです][ウム。丁重にな。日程は?][………しばらくは無理そうですが。………明日なら][無理だ。明日は大事な予定がある]
サンディースは代表になっても年に一回、訪れる村があった。農民が営む小さな村。そこの村長さんに会いに行くのだった。
馬に乗り、村へ走るサンディース。
[村長さん。お久しぶりです][オオ。サンディース殿。すっかり役人の顔になりおったワイ][お土産置いときますよ。皆さんで。お身体は?][大丈夫じゃよ。村も復興の兆しが見えておる。最近は先の物が良く見えるワイ][3年ですかねー。もう。あれから。俺は力を使い果たしもうホムンクルスの能力は無いが][慕う人間がいるじゃろうが。良いのじゃよ][受け入れて頂き感謝していますよ。ここに来ると今でも思い出されます。あの頃を][3年かのう?早いのう][村長さん。1つ、ご質問があります。ナゼ貴方は民衆政府に来て頂けないんです?][若い連中に任せたからじゃよ。それに年寄りは御免じゃろうが。ワシも若くありたいのう。お前さんみたいに][たまには来ますよ。農作物も高く買いますから。好評なんですよ。町では。一度お越しください。勿論、いらっしゃる時にはご案内させますから。それに良い医者も居ますよ][遠慮しときますわ。サンディース殿。ワシにはまだやる事があるんでな。農作物の作り方やら教えないかんのでな。お互い別の道じゃ。それにワシには似合わんだろう。民衆政府など]
その後、直ぐに村長は天に召されたらしい。晩年はサンディース達の創る民衆政府を誇らしげに語っていたらしい。
一方、シェザーも無事に黄泉の方舟行きの切符を手に入れ霞の彼方へ消えていた。
[シェザー様。死霊達が騒がしいらしいのですが][私が出向こう。荷馬車を一台、貸してくれ]馬を操り死霊退治に出掛けるシェザー。
[向こう側では3年の月日が流れたらしいな。サンディース。ここに来ていない所を見ると元気そうだな。いつか酒でも呑みたいがな]腰に付けたヒョウタンからグビッと酒を煽るシェザー。[さて、仕事か。少しは高く売れそうかな]上空から荷馬車で旋回するシェザー。[ウオッホッ。活きが良いな。久しぶりの馳走だ!さて、排除しますかね]
彼は世界に出ようとする死霊退治を商いとしていた。ホムンクルスへの罪滅ぼしと本人は言っていたらしいが真相は知らない。
深海の深い闇の中、サンディース・ウオーウルフのホムンクルスの能力は尽きた。そして男達は新たな道を歩むのだった。誰かが話していた。[人それぞれだが、再生の船と破滅の船は似ている。乗組員はこれがどちらの船か判らない。ひょっとしたらその船は沈没した潜水艦かも知れない。だが、潜水艦にも乗組員はいる]目的も何もかも違う船の群れを、誰かが港で見ていた。ただ見ているだけだった。
ひょっとしたら人造人間ホムンクルス軍は撤退ではなく同化しただけかも知れないがイージスター島は復興の道を歩んでいた。
第二部 完結