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閾(しきい)の少女

作者: 健野屋文乃
掲載日:2026/09/22

「眠れない。眠れない。眠れない。

と呟いたところで、眠れるはずもない。

はあ、もう夢が終わってしまった」


抱きしめているはずの彼女の声で目を覚ましたけど、彼女はいなかった。

ホテル内は静まり返っていて、さらに誰もいない。


取りこのされた気分だ。


誰もいないカプセルホテルを出ると、そこには誰もいない街があった。

まるでちょっと前まで、大勢の人が溢れていたであろう街。


「そこの君、こんなところで何をしてるんだ」

赤いツナギを着た少女に呼び止められた。

赤いツナギには【閾】と言う文字が大きく書かれていた。


「彼女と逸れたみたいで、探してるんですけど」

「彼女?とは恋人と言う意味の彼女?」

「まあ、そうですね」

「君は何を言ってるんだ?ここは背景倉庫だよ」

「背景倉庫?」

「うん、もうここの世界は終わったからね。片付けてるところだよ」

「片付けているところ?」

「そう」

「僕の彼女、恋人の意味の彼女はどこに?」

「多分、違う世界で生きてるんじゃない。違う世界だからきっと君の事知らないよ。違う世界で違う夢を見始めてるはずだ」

「えっ?」

「だって違う世界だもん。当然でしょ」

「僕はどうすればいい?」

「ここにいると言う事は君は【閾】でしょ」

「しきい?解らないけど」

「とりあえず、ここの世界の片づけを手伝ったら」

「えっなぜ?」

「管理官とは当分連絡が着かないから」

と言われた。


誰もいない街。

僕は、その静まり返った風景を見渡した。

とりあえず、僕は赤いツナギの少女を手伝う事にした。




完




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