聖女なんてやってらんない〜それよりアイスが食べたいです〜
私が書くと何故こうなっちゃうんだろ(悩)
聖女ですが全然、聖女らしくありません(笑)
アイス生き甲斐の女子高生です。
少し口悪いです(笑)
よろしくお願いします。
「は、え?」
私の周りを変なローブのコスプレしたおじさん達が取り囲んで、なんか口々に『聖女なのか?』とか『髪が短い、男なのでは?』とか言ってる。
今、流行りの異世界召喚ってやつ?
私、正真正銘女なんだけど?ぴちぴちの女子高生ですよ。部活の帰りに、いつもの駄菓子屋でアイスを買って、まさにかぶり付こうとした瞬間ここにいた。
手にアイスは無い。あのアイス、マジ大好きで部活のシンドイ練習もあれがあるから耐えられた。
それが無い…キレていいですか?
一人の立派な髭のオジサンが近付いてくる。
「聖女様、よくぞお越し下さいました。私はこの国の宰相です。どうぞ、我が国のカイル王子をお救いください」
「あのさ〜、オジサン」
「お、オジサン?」
「先ず最初に謝罪だろ?人を誘拐しといてさあ」
「ゆ、誘拐など。召喚の呼び掛けに貴女様がお答え下さったのでは?」
「そんな訳ねえわ!これから至福の時間て時に、なんでこんなトコ来なきゃなんないんだよ!」
「ですが、聖女様」
「聖女もクソも知らねえわ!」
私がキレ散らかしていたら、やたらキラッキラしたイケメンの若い男が近付いて来た。
「聖女様、私はアルト・フェルディナンと申します。先ずは謝罪を。突然、この世界へお連れしました事、心よりお詫び申し上げます」
「はいはい、上っ面の謝罪は結構です。早く元の世界へ帰してよ」
早く帰らないとアイス溶けちゃうじゃん。
「それは叶いません」
「は?勝手に連れて来て、帰せません?ふざけてんのアンタ」
「召喚は一方通行なのです」
「ふっざけんな!自分の国の事は自分らで解決しろよ!簡単に他力本願してんじゃねえわ!」
イケメンは目を見開いている。
「こちらの世界に呼び込んでしまった以上、聖女様にはお詫びと、この国での生活は保証致します」
「当たり前じゃん、帰れないならアンタ達に一生面倒見てもらうからね」
「いくら聖女様とは言え、第二王子殿下になんて口の利き方を!」
さっきの髭のオジサンだ。へえ、このイケメンは第二王子なんだ。オジサンは無視だ、無視。
「で、これから私はどうなんの?」
「王宮に部屋をご用意致します。どうぞそちらへ」
「王宮なんてイヤだよ」
「ですが、市井に下りますには聖女様はこちらの常識をご存じないかと。色々と危険ですので…」
「治安、悪いの?」
「下町の方は少し…」
「ふ〜ん。そうだ、さっき言ってた王子を助けてって何すんの?そのカイル王子ってどの人?」
「カイルは私の兄です。兄は魔女に呪いを掛けられまして、聖女様なら助けられるかと」
「それ犯人が分かってるなら、その魔女に呪いを解いて貰えばいいだけじゃん」
「魔女は気まぐれなのです。もし呪いを解いて貰えなくても、我々は魔女には手出し出来ないのです」
「なんでさ?悪いのは呪いを掛けた魔女でしょ?」
「大昔、魔女に手を出して滅ぼされた国があるのです。それ以降、魔女は不可侵と言う決りができました。故に手出しは出来ません」
「てか私、普通の女子高生だよ。私に何が出来るってのさ」
「ジョシコーセーが何かは分かりませんが、聖女様には不思議な力があるはずです」
「って言われてもなあ…」
でも実際の所、何となく分かるんだ。体の中を今まで感じた事のない力が流れてるのを。
「で、その兄王子とやらはどこにいるのさ?」
「兄上をお連れしろ」
「はっ!」
きらきら王子が騎士みたいな人に声を掛けると、隣室にいたであろう貴族っぽい女の子が騎士に連れられ入って来た。何かを大事そうに抱き抱えて。
「ミリアム嬢、兄上を聖女様の前へお連れして下さい」
「はい、アルト殿下」
女の子はしずしずと私の前までやって来た。
「聖女様、わたくしはミリアム・ダルタン。カイル殿下の婚約者でございます」
ミリアムさんはカーテシーで挨拶してくれた。頭を上げないって事は聖女の方が立場が上ってことか。確か、上の者から声を掛けない限り頭を上げられないんだっけ。
「頭上げてよ、ミリアムさん」
「ありがとうございます。カイル殿下をお連れしました」
「って、どこに?」
「こちらでございます」
そう言って差し出してきたのは、大事そうに抱えていた、丸くて小さくて赤い物。
ちょっと待って!可愛い。タコのぬいぐるみみたいな何か。生きてんのかな?思わず、つんつんしてしまった。
「聖女様!何をなさいますの!」
…ミリアムさんに叱られてしまった。
「ごっ、ごめん。あんまりに可愛くて突付いちゃった」
「いえ、わたくしも失礼しました」
「聖女様、兄上の呪いは解けそうですか?」
「分かんない。もっと詳しく調べないと。どこか煩いオジサンとかいない静かな部屋は無い?」
「では聖女様。先程まで、わたくしが居た隣室に行きましょう」
ミリアムさんに案内して貰って隣室に入る。アルト王子と宰相のオジサンも入ろうとするから締め出してやった。
「私、静かな所って言ったよね?そこの煩いオジサンとか付いて来ないで。アルト王子も遠慮して」
「煩いオジサンとは何だ!」
「分かりました。聖女様、兄上を宜しくお願いします。ミリアム嬢、兄上を頼みます」
「かしこまりました」
アルト王子は物分かり良いけど、宰相のオジサンはいつまでも煩かった。
扉に鍵を掛けて、部屋に結界を張る。何となくだけど魔法を使う感覚が自然と分かるんだよな、不思議。所謂、チートってやつかなあ。
「煩いオジサンは追い出したから、本音で話そうよ。王子様?」
「ぴっ!」
喋り言葉が『ぴっ』って言うの面白いなあ。意味分かんないけど。
「聖女様、本音とは?」
「ぶっちゃけて言っちゃうと、カイル王子に呪いなんて掛けられて無いって事」
「では、このお姿は何故?」
「王子、自分の口からちゃんと婚約者さんに話してやりなよ」
「…ぴっ…」
「なら、代わりに言っちゃうけど、王子には魔力があって自分に魔法を掛けて、この姿になってるってわけ」
「そうなのですか殿下?わたくしに本当の事を話して下さいませ」
「ぴっ…」
カイル王子は諦めたのか元の人間の姿に戻った。
おお〜イケメンじゃん。
「殿下!」
「すまない、ミリー」
「謝るより、ちゃんと話して下さいまし」
「ミリー、私は王になりたくなかったのだ。アルトの方が私などより、余程王に相応しい素質を持っている。だから、何とか王位継承権を放棄しようとしたのだが、聞き入れて貰えなかった」
「ねえ、なんで本人が嫌がってるのに王位継承権を放棄できないの?」
「私が正妃腹で、アルトが側妃腹だからだよ。母上は自分の息子を王にしたいんだ。それに宰相が母上の父親で、彼が実権を握る為に私が王になる必要があるんだ」
「宰相かあ、あの煩いオジサンだね。たしかに厄介そうだ」
「色々考えたのだ。今流行りの大衆劇の様に下位貴族の娘と恋愛関係になって、婚約破棄からの廃嫡も考えたのだ。だが…」
「でも、やらなかったんだ。なんで?」
「好きでもない娘に愛を囁くなど出来ん。それに婚約破棄だとミリーに瑕疵が付く。それはダメだ」
「なんでダメなの?」
「ミリーには幸せになって貰いたいからな」
今の今まで、大人しく話を聞いていたミリアムさんが王子に噛みついた。
「それでは殿下の幸せはどこにあるのですか!」
「ミリー?」
「勝手な事ばかりおっしゃって!殿下を大切に思っている、わたくしの気持ちはどうして下さるんですか!貴方が不幸になって、どうしてわたくしが幸せになどなれましょう!」
「ミリー?」
「あんまりですわ!わたくし、わたくし…」
あーあ、ミリアムさん泣かしちゃったよ。ミリアムさん落ち着くまで話は中断かなあ。
王子が宥めて、漸くミリアムさんが泣き止んだよ。美人は泣いても綺麗だな…。
「話続けるよ?んで、その結果が王子がタコになる事なんだ?」
「そうだ。私が人でなくなればミリーも婚約を解消し瑕疵も付かないだろうと」
「殿下、わたくしは婚約を解消いたしません!」
またミリアムさん泣き出しちゃうから止めて王子!
「そこでさあ王子、提案があるんだけど乗る?」
「先ずは話を聞かせてくれ」
「んじゃあね、このまま『カイル王子は呪いでタコになった作戦』を事実にしようと思う」
「聖女様、私にはよく分からないのですが…」
「コホン、ちゃんと説明するから」
作戦はこうだ。
カイル王子は魔女に呪いを掛けられてタコになった。魔女は占いで、カイル王子が王になると国が滅ぶと卦が出たので、カイル王子を王にしない様に呪いを掛けた。
この国が滅べば、それが世界の崩壊に繋がる切っ掛けになるからだ。世界が滅びたら魔女も困るから、今回だけは国に関わる事にした。
「と、魔女に王宮で大々的に発表して貰って、アルト王子を立太子させるしかなくなるってのどう?完璧っしょ?」
「色々言いたい事はありますが…」
「聖女様、魔女は気まぐれで恐ろしいもの。わたくし達の言う事を聞いて下さるでしょうか?」
「何となくだけど、大丈夫な気がするんだ。聖女の感てやつ?」
「殿下、聖女様の策に乗ってみるのは如何でしょう?」
「勿論、アルト王子が王になるのが確定したら、カイル王子のタコの呪いはミリアムさんの愛で解けるっていうお約束で。そうなったらカイル王子たちは結婚するしかなくなっちゃうよね」
「それでいいのか?ミリーは」
「わたくしはそれが良うございます」
「もし、二人を引き離そうとかしたら、私が聖女の力で城の一つや二つ、ぶっ飛ばしてやるわ」
「聖女の力とはそう言うのとは違う気が…」
「いいの、いいの。政治的駆け引きはハッタリも大事だよ。じゃあ魔女に会いに行こうか。って、何処に居んの魔女?」
「一番近い所では、隣国ベルナー王国にある西の森に住んでいるとか…」
「じゃ、決まり。ベルナー王国に旅行だ〜」
二人が呆れ顔になっているのが解せん。名案じゃん。
「ミリアムさん、アルト王子と宰相に聖女の見立てじゃ魔女にしか呪いは解けないから、駄目元で魔女に会いに行くって伝えて」
「わかりました聖女様」
カイル王子はまたタコになった。ミリアムさんがアルト王子と宰相に上手く説明してくれたみたいだ。
宰相はカイル王子を何としても人間に戻したいから、嬉々として私たちの旅支度を整えてくれた。
馬車でベルナー王国まで一週間。途中に色んな街や村があるらしいから、観光しながらゆっくり行こうっと。
「聖女様、魔女に解呪して貰える様に祈っています。どうか兄上をよろしくお願いします」
「まあ、呪い解くのは魔女だから、精々頑張るよ」
このアルト王子は、いいヤツなんだよな。心から兄王子を心配してる。
「聖女様、必ずやカイル王子を人間に戻すのだぞ」
「あ〜はいはい。頑張りますぅ(棒読み)」
宰相は腹の中真っ黒で嫌になるわ。カイル王子を利用する事しか考えてない。聖女召喚も、兄王子を心配するアルト王子を誑かして行わせたみたいだし。
国王陛下は今回の聖女召喚は知らないらしい。王妃陛下は父親の宰相と繫がってるから知ってたみたいだけど。
もし、聖女召喚が失敗したら、それを公表してアルト王子を貶める目的もあったとか。
この宰相、ざまぁしてやりたいなあ。
宰相から『護衛を付けろ』って言われて、要らないって返したら『カイル殿下の身に何かあったらどうするのだ!』とか煩かったけど、私が民家一個分位の巨大な岩を一つ、半壊…ほぼ全壊したら大人しくなった。
どうやら、私の聖女としての力は魔法も少しは使えるけど、物理攻撃強化がメインだったみたいだ…。聖女としてどうよ?と思わなくも無い。
限られた人達に見送られ、私たちはベルナー王国に向かった。馬車には私とミリアムさんとカイル王子。後、馭者の人。
馬車の中でもカイル王子はタコのままだ。誰に見られるか分からないからね。変身は解かない方がいい。
ま、ミリアムさんに抱っこされて幸せそうで何より。リア充爆発しろ。
私とミリアムさんは村娘の服装で、途中の街や村で美味しいもの食べたり、温泉に浸かったり。ゆっくりのんびりさせて貰いました。は〜極楽極楽。
本当なら七日で着く筈のベルナー王国に十日掛かって着きました、テヘペロ。
もうすぐ西の森に着くって馭者の人が教えてくれた。
西の森に着いたと言うので、ここからは徒歩だ。なんだろ?魔女の魔力かな?すっごく森の中にいるのが気持ち良い。この魔力の持ち主が悪い人の筈がない。
しばらく歩くと森の真ん中辺りにポツンと小さな家があった。ドアをノックすると『はーい』と返事があって、私と年が変わらない位の女の子が出てきた。
「魔女に御用ですか?」
「貴女が西の森の魔女さんですか?」
「そうです。それで御用は?」
「ちょっと話が長くなるので中に入れて貰えませんか?」
「分かりました、どうぞ」
魔女さんの家の中に入る。部屋の中は薬草の匂いだろうか、漢方薬みたいな匂いがする。
テーブルに着くと魔女さんお手製の薬草茶を出してくれた…苦い。
「で、お話と言うのは?」
魔女さんが切り出した。
「えっと、まず自己紹介から。私はフェルディナン国の聖女らしいです。沙理奈って呼んでください」
「サリナさん、貴女から不思議な魔力の香りがするわ。この世界とは違う世界から来たみたいね。私は西の森の魔女ロッテよ」
「ロッテさんね。んで、こっちの美人さんがミリアムさん。この丸くて赤いのがカイル王子」
「この丸くて赤いのが王子様…ぷっ」
ロッテさん、王子見て笑いましたね?
「でね、ロッテさんにお願いがあるんだ」
「何かなあ?何だか面白そうな匂いがするわ」
私は『カイル王子が呪いでタコになった作戦』を説明した。
「面白そう。やってあげても良いわよ」
「本当でございますか?魔女様」
ミリアムさん、嬉しそうだな。
「但し、条件があるわ」
「何でしょうか?わたくしに出来る事なら何なりと」
「そんな難しい事じゃないわ。フェルディナン国で栽培されているカーナ草を分けて欲しいの」
「カーナ草ですか?でしたら我がダルタン家で取り扱っておりますので、お譲りする事は可能です」
「じゃあ交渉成立ね。で、いつフェルディナン国に行く?」
「すぐにでも」
「分かったわ。用意してくるね」
ロッテさんは奥の部屋に入って何かガタガタしてた。しばらくするとローブに着替えて、鞄を肩から掛けたロッテさんが出てくる。
「おまたせ〜さあ行きましょうか」
森を出て馬車に乗る。一路フェルディナン国へ!
馬車の中では、王宮で陛下や貴族達に話す話の内容を密に打ち合わせた。
特にロッテさんがノリノリで『王宮に登場する時は、いかにも魔女って感じのお婆さん姿で行くわよ。煙幕や雷も落としちゃおうか?』って。
ロッテさん、お願いだから雷は止めて下さい。私が怖いです。ミリアムさんも止めていた。
そんなこんなで話は纏まり、後はフェルディナン国に到着するだけ…なんだけど。駄目だ、歳頃の女の子が三人も集まれば、まともに進まない。
途中の街や村で観光を目一杯楽しんだ私たちが、フェルディナン国の王城へ到着したのは二週間後だった。
王城に到着するとアルト王子が出迎えてくれたが、カイル王子の姿が人間に戻っていない事に落胆していた。
そして、ミリアムさんがアルト王子に魔女とのやり取りを話して聞かせ、王宮の広間に主立った貴族を集めて貰う事にした。
広間には既に大勢の貴族達が集まっている。玉座には国王陛下だろうか、カイル王子やアルト王子に似た、カッコいいおじさんが座っていた。左側にはアルト王子がカイル王子を抱いて立っている。
陛下の右隣に座っているのは王妃だろうな。王妃の横にあの煩い宰相もいたよ。
国王陛下にも、ミリアムさんが魔女の件と私、聖女の件を上手く話してくれている。
さて『カイル王子が人間じゃなくなる作戦』決行と行きますか!
ミリアムさんが陛下の前に立つ。
「我が国を照らす永遠なる太陽、国王陛下にご挨拶申し上げます」
「よいミリアム嬢、楽にせよ。して今日、皆を集めた理由を聞かせてもらおうか」
「はい陛下。その前に先日異界より召喚されました聖女様をお呼びしたいと思います。サリナ様どうぞ中にお入り下さい」
ミリアムさんの言葉で、ドアマンが扉を開けてくれる。私はゆっくりミリアムさんがいる所まで歩く。
「国王陛下、先日異界から召喚されました聖女サリナです。今日はカイル王子の事で話があるので、皆に集まって貰いました」
「そなたが聖女殿か。話すが良い」
「はい、では遠慮なく。西の森の魔女さん来て下さ〜い!」
私の隣にモクモクと煙幕をまとって、ロッテさんが現れる。事前に聞いてたけど本当にお婆さんになってて、マジ魔女だわ。
いや〜広間の全員、目が点になってて面白いわ。
「国王陛下、魔女さんからカイル王子に呪いを掛けた理由を聞いてください」
「そ、そなたが西の森の魔女殿か?何故、カイルに呪いを掛けた?理由如何によっては魔女と言えど許さんぞ」
…国王陛下、強気に言ってますが足、震えてますよ。
「ひっひっひ、ワシの占いでのう。カイル王子を王にすると、この国が滅ぶと出たんじゃ。始まりは干ばつが長く続き作物は採れず飢饉がおこる。人々の怒りは王家に向かい、あっと言う間に国は滅ぼされるじゃろう」
「そんなまさか…」
「そのまさかなんじゃよ。この国が滅んだのを切っ掛けに、干ばつや飢饉は世界中に広がり、やがて世界が終焉を迎えるとな。ひひっ」
ロッテさん、演技上手いなぁ。私も頑張らなきゃ。
「だから、魔女さんはカイル王子を王にならない様に、人ではない者に変えたんです。聖女である私には見えるんです!アルト王子を次の王にすれば栄えるフェルディナン国の未来が!」
なんて、ホントは分かんないけど。
「なんと言う事だ…。世界の危機ともなれば、アルトを次期王にしない訳にはいかん…」
「お待ち下さい!陛下。魔女の言う事が本当かなど、分からないでは無いですか!」
「そうです!陛下。カイル王子は正妃の子なんですよ。アルト王子は側妃の子ではないですか!」
おーおー王妃と宰相、必死だな。
「しかし…」
国王陛下、押し負けてんじゃん。仕方ない、いっちょ王妃と宰相に天罰落とすかなぁ。
(ロッテさん、王妃と宰相に死なない程度に雷落とせる?)
(大丈夫、やれるわ)
(じゃあ、やっちゃって!)
(了解)
いきなり、王妃と宰相にだけ雷が落ちた。二人とも髪の毛チリチリになったけど死んではいない。
「神からの罰です。魔女の占いは真実。聖女である私も神よりのお告げを受けました。アルト王子が王になるのは天命。曲げようとする者には天罰が下ると」
王妃と宰相は震え上がって、もう何も言えないようだ。
「…次期国王は第二王子アルトだ。立太子の儀は日を改めて行うものとする」
国王陛下が宣言した事で貴族達から拍手がおこる。王妃と宰相はがっくり肩を落として、侍女と侍従に別の部屋に連れて行かれた。
「して、魔女殿。カイルの呪いは解いて頂けるのか?」
「すまんのう。些か、呪いがキツく掛かりすぎてワシにも解けん」
「では、カイルは一生そのまま…」
「唯一、呪いが解けるとすれば『真実の愛』じゃろうて。カカカッ」
さあ、ミリアムさん!見せ場だよ。これでカイル王子の呪いが解ければハッピーエンド間違いなしだ。
「陛下、わたくしにカイル殿下の呪いを解く機会を頂きとうございます」
「おお、ミリアム嬢。そなたであれば解けるかも知れん。頼む、カイルの呪いを解いてやってくれ」
「はい。カイル殿下をお渡し下さいまし」
カイル王子はアルト王子の手から侍従に渡されミリアムさんの元に来た。
「カイル殿下、元に戻って下さいまし」
ミリアムさんがカイル王子にキスをする。刹那、カイル王子の体は人間に戻った。
「ミリー、ありがとう。君の真実の愛で私は人間に戻れた」
「殿下!」
ミリアムさんとカイル王子は抱きしめ合っていた。
「おおミリアム嬢。感謝する。見事、真実の愛であったな。ミリアム嬢には褒美を取らせよう」
ミリアムさんはカイル王子から体を離し、国王陛下に向き直る。
「陛下、でしたらカイル殿下をわたくしの婿に頂戴致しとうございます」
「真実の愛であれば、そうであろうな。許す、カイルはダルタン公爵家に婿入りとする」
「ありがとうございます、陛下」
「陛下、ありがとうございました」
良かったね。ミリアムさんカイル王子。
「ひっひっひ、良いもん見せて貰ったしワシは帰るとするよ」
ロッテさんは煙だけを残して消えた。
ひとまず『カイル王子は呪いでタコになった作戦』は大成功の内に幕を下ろした。
あの後、ロッテさんは家で旦那さんが待ってるからって、ミリアムさんから約束のカーナ草を貰って早々に帰ってしまった。
もっと話したかったなあ…。それに旦那さんて何よ。私と年変わんないのに…。彼氏すら居ないよ私。
私とカイル王子はミリアムさんのお屋敷に集まって祝杯を上げた。私は勿論ジュースだよ。アイスがあれば良かったけど無いもん、くすん。
「こんなに上手くいくとは思わなかったわあ。私の作戦が良かったんだね」
「本当に感謝しております、聖女様」
「カイル王子〜、もっと褒めてくれて良いんだよ〜ぉ」
「わたくしからも感謝を。聖女様」
「いえいえ、それ程でもあるけど」
「それで聖女様、貴女様はこの先どうなされるおつもりですか?この国で暮らされるのでしたら、ダルタン家が責任を持ってお世話させて頂きますわ」
「ん、とね。黙っててゴメン。私、自分の力で元の世界に帰れるみたいなんだ」
「そうなのですか?」
「うん、これも聖女の感ってやつ?」
「帰られるのですよ…ね?聖女様。寂しくなりますわ。わたくし聖女様が好きでしたのよ」
「ありがと。私もミリアムさん大好きよ。あんまりこの国に居ると帰るのが辛くなるから、もう帰るね」
「聖女様、でしたら何かお土産を」
「良いよ。気持ちだけで」
「ですが…。せめてこれをお持ちください」
ミリアムさんは自分の着けていた宝石の付いたアクセサリーを渡してくれた。
「ありがとう。これミリアムさんと友達になった記念に大切にするよ」
「聖女様、これは私から。せめてもの礼だ。受け取ってくれ」
「カイル王子、ありがとう」
カイル王子からは私が持てるくらいの量の金貨をくれた。向こうで換金出来るんだろうか?ちょっと悩む私。
私も何か渡せたらなあ…。スカートのポケットを探るとアイスの当たり棒が入っていた。
「私、こんな物しか持ってないや。これでも異世界の物だから、良かったら貰って」
アイスの当たり棒を差し出すとミリアムさんは笑って受け取ってくれた。
「聖女様が下さった物ですもの。大切にしますわ」
いや、アイスの当たり棒だからね。ただの木の切れっ端だから。
「さあ、お別れの時間だね。楽しかったよ。ありがとう、ミリアムさんとカイル王子、お幸せにね。元気で」
「聖女様もお元気で」
「聖女様、本当にありがとう。わたくし忘れません」
目を閉じ、体に流れる力に集中して元の世界を強く意識する。私の存在がこの世界で薄くなって、帰れる!
「バイバイ」
ミリアムさんに手を振って、私は消えた。
目の前には見覚えのある駄菓子屋、手には念願のアイス。カプッと一口。
「おいし〜い!」
大好きなアイスをかじりながら帰路についた。
こちらに戻ったら全然時間が進んでいなくて、あの世界の事は夢でも見たのかと思っていたが、スカートのポケットにはミリアムさんがくれたアクセサリーとカイル王子がくれた金貨がちゃんと入ってて…。
「またミリアムさん達に会えたら良いな…」
アクセサリーと金貨は私の宝物入れに大切にしまわれた。
数カ月後、あのアイスの当たり棒が私と、あの世界を繋ぐ架け橋になるなんて思ってもいなかった。
その話はまた機会があればね。今日の所はここまで、またね。
Fin
最後まで読んで頂きありがとうございます。
アイスは、ほらあれですよ、バニラで長方形で当たり付きの。今は箱売りですけどね。2025年夏迄は一本で買えたみたいです。
今の所、続編は考えていませんが、ご要望頂けちゃったりしたら、単純な春日野は張り切って書いてしまいます(笑)




