4話 王国内の探索と旅立ち
アルスとソイルの二人は王様からもらったカギを持って地下室へと向かっていた。
「ソイルさんはなんでこっち側に来たんですか?」
「呼び捨てでいいぞ。そうだな、上にいると気まずいし外に出るとモンスターの相手をすることになるからな。」
「え、なんでですか?」
「俺らが集まってるって事は魔力が集中してるからな。普段魔力の多い方へ群がる習性のあるドラゴン…いや、この辺ならゴーレムか?そいつらが現れるだろうからな。ま、そういうのは外にいる2人に任せとけば何とかなるだろ。」
そんな会話をしつつ二人は奥へ歩いていくと、やがて頑丈そうな扉を見つけた。
「やっと着いたな。」
「同じ城の中なのに割と歩きましたね。」
二人はそうつぶやくと持ってきたカギでその扉を開けた。
すると中には壊れた魔法陣があるだけだった。
「これ、転移魔法陣ですね。あんまり遠い所じゃないので…セントラル諸島のうちのどこかだと思います。」
「直せるのか?」
「できますよ、少し待っていてくださいね。」
アルスは指先に光を集めると、欠けていた部分をあっという間に直してしまった。
直った魔法陣は青色に光っていた。
「流石はエルフの血が入ってるだけあるな、俺じゃ直せねぇし助かったわ。じゃ、いくか。」
「ありがとうございます。あとは乗るだけで転移できますし、行きましょう。」
二人は転移魔方陣に乗ると、どこかへと転移した。
光が明け、辺りを見回してみると、何かの研究室のような場所であった。静かに周りにあるものを見てみると、二人は机の上にあった一つの本があった。
その本に何か書かれているのではないかと思った2人はその本を読んでみることにした。
「これは…クロス博士の研究日誌⁉クロス博士って源素を発見したって言われているあの博士⁉」
「おそらくこの日記は本物が書いたものだろうな。この感じだと数千年前に書かれたものだな。」
そうして本を開いて読み進めていくと、数時間が経過していた。
二人はやっとのことで読み終わった日誌を机の上に再び置くと、会話しながら情報をまとめていった。
「昔ここに集められた優秀な博士達はコアの研究をしていた。クロス博士達は源素鉱石を使い、機械人形や、試作型源素変換貯蔵器《P_CORE》を作成していた。しかし、数十年が経って高性能源素変換貯蔵器《HP_CORE》を作成できるようになった頃には、寿命が近づいていた。そこでクロス博士は仲間と共に、クロス博士が作った機械人形5体にHP_CORE1~5と自分達それぞれの意識を組み込んだが、機械の体を手に入れられたのはクロス博士だけだった。悲しみの中、博士はさらに研究を進めた。1人で研究をしていた博士のもとに1人の少女が迷い込んだ。それからこの研究所で過ごしていくにつれ、少女は博士の助手として共に研究を進めていったが、ある時少女は病に侵されてしまった。少女の死が近づいていることに気づいた博士は、今までの成果を生かし、超高性能源素変換貯蔵器《UHP_CORE》を作成し、少女の許可を得て意識と共に機械人形へと組み込んだ。それからも研究は続き、自立機能付源素変換貯蔵器《WS-SF_CORE》を量産すると機械人形へと組み込んでいった。そこで生まれたのが結機族って訳か。」
ソイルはアルスと共に得た情報をまとめて話した。
これにはアルスもソイルも最初は難しい顔をしていたが、やがて情報を飲み込むと、置いてある物に目をやった。
そこにはHP_CORE7とHP_CORE8と記されたカプセルに入った物があった。
「他にも本があるみたいですし、なんとかして持って帰りたいのですが。」
「そんじゃあこれ使うか~」
ソイルは手袋をはめた手を机に向けると、手袋と机の上にある本やカプセルが薄紫色のオーラで包まれ、光になり手袋へと吸い込まれていった。
「何ですか⁉その便利そうな道具!」
「これか?ストレージグローブっつって100個のアイテムを収納して置ける道具だな。前に知り合った妖精族からもらったやつだ。」
「へ~そんなことがあったんですね。ずっとアイレにいたのかと思ってました。」
「妹はずっとアイレにいたが、俺は暇つぶしによくアイレを離れてたんだよ。まぁ村長には怒られたがな。」
二人でそう話しながら次々に持って帰りたい物を収納していった。
アルスは見ているだけであり、話すこと以外何もやっていなかったため、後で回収したものを見せてもらえるのか不安に思っていた。
しかしそれを察したソイルはアルスの頭にそっと手を置くと、
「安心しろ、ちゃんとお前にも見せる。それに最初に転移魔法陣を直したのはお前だ。あれは俺にはできないからな。」
「ソイル…ありがと。」
二人はアイテムを回収し終えると再び転移魔法陣に乗り、城の地下へと戻っていった。
―――――
城下町へと出ていったしろとシエルの二人は、商業エリアにあるサンドイッチを売っている店にいた。
「いらっしゃい嬢ちゃん。」
「こんにちは!え~っと、私はこのカツサンドを一つください。シエルはどうする?」
「ん~私はサラダサンドを一つください。あと支払いは私がするよ。」
「ほんと!助かるよ~」
「まいどー!」
二人はそれぞれ好きなものを買うと、その店を離れて歩きながらサンドイッチを食べ始めた。
白とシエルは会ったばかりなのに、すでに仲良くなっていた。
「シエルはさ、賢者に選ばれたときどう思った?」
「私?そうだなぁ、今まで守ってもらう側だったけど、守る側の立場になれて嬉しかったかな。」
シエルは笑顔で答えた。
白は「もし嫌だったら一緒に旅を続けられないかもしれないし、負担がかかるかもしれない。」と思っていたので、シエルのその回答を聞いて安心した。
「白は…何とも思ってなさそうだよね。」
「なんか馬鹿にしてないそれ?…でも間違いじゃないかな。あ、でも私のかわいい弟が危険にさらすような暗黒神とかいうやつをぶっ〇せる力があるのは嬉しいかな。」
「白の弟かわいいんd……いや別に取って食ったりしないから大丈夫だよ、落ち着いて。」
白は自分の弟の話になると、すごく笑顔で話をしていた。
しかし、シエルが白の弟に興味を示すような雰囲気になると睨んだ。
シエルが‘大丈夫だよ”というとすぐに笑顔に戻ったが、「これからは余計なことを言わないようにしよう」と思ったのだった。
二人がサンドイッチを食べ終わったとき、城門の方で大きな音がした。
その音がした方に向かうと、城門の外側に岩のゴーレムが二体いた。
岩のゴーレムが自ら創り出した岩を城壁にぶつけており、一部が崩れていた。
白は急いで城壁の外へ出て岩のゴーレムの気を引き、シエルは城壁や岩の破片が当たり負傷した人や、まだその場から離れられていない人の誘導をし始めた。
「こっちです!焦らないで街の中に避難してください!」
「ロックゴーレムですか。何で襲い掛かってきたんだろ。」
ロックゴーレムは白を狙って岩を放ってきた。
白は虚空から刀を取り出し、抜刀で岩を斬ると距離を詰めてロックゴーレムを直接数回斬りつけた。
しかし妖力を全く使っていない純粋な物理的な斬撃ではロックゴーレムを傷つけることしかできなかった。
動きは遅いけど、当たったらやばそう。妖力使おうかなぁ、でももしかしたらそのせいでこいつが来てるかもしれないし、そうなるとさらにおびき寄せちゃうかもしれないんだよね。どうしようか…
そう考えていると、白の後ろから風属性魔法が飛んできてロックゴーレムの右腕を吹き飛ばした。
「白!さっさとやっちゃって~」
シエルが後ろから声をかけてきた。
白は「また来ても倒せばいっか」と思い刀を再び鞘に納め、鞘を持ち鍔に指を当て柄を握った。
「水纏:瞬水」
刀に水属性の妖力を込め、一瞬で刀を抜くと同時に斬撃がロックゴーレムをコアごと上下に両断した。
するとロックゴーレムは鉱石の塊を残して消滅した。
その少し後に、上空からソイルが降りてきた。
「兄さん、どうして来たの?」
「そこにある素材が欲しくてな~」
ソイルは白の近くにある鉱石の塊の方へ手を向けると、鉱石の塊は薄紫色のオーラで包まれると、光となってソイルの手袋に吸い込まれていった。
「いいな~私もそれほしいんだけど」
「これはエンスタシナに行ったときに妖精族にもらったやつだから、頼めば作ってもらえるかもな。」
白が2人に近づきソイルがしている手袋を欲しそうに言うと、ソイルはさらっと返した。
シエルはその手袋のことを知っていたようで特に驚いてはいなかった。
「んじゃそろそろあいつらのとこ行くか。」
「みんなは城に集まってるの?」
「いや、先にギルドに行ってもらってる。」
ソイルがそう言いながら歩き始めると、シエルが他の皆がどこに居るか聞いた。
そして3人はギルドへと向かった。
─────
白達は王様に言われた通りにギルドへ来ると、受付嬢が走って近づいてきた。
「お、お越しいただきありがとうございます。国王様からお話は伺っております、どうぞこちらへ。」
受付嬢はギルドの奥にある部屋へと3人を案内した。
すでにアルスとエリス、ヘスティアの3人がおり、仲がよさそうに話していた。
「ヘスティア、いつの間に二人と仲良くなったの?二人は私の子だからね!渡さないよ」
「いつから白さんの子になったんですか…」
「私はお姉ちゃん好きだよ?」
「白、そういうのじゃなくて仲間だから。」
いつも通りの白に、3人も普段通りに返した。
白はエリスを膝の上にのせてソファに座っているアルスの横に座ると、ソイルとシエルは対面にあるソファに座った。
「兄さんは私のだから」とシエルが小声で言っていたのは、誰にも聞こえていなかった。
しばらく別れた後に会ってことを話していると、ドアがノックされて先ほどの受付嬢の声が聞こえた。
「準備が整いましたので、お迎えに上がりました。」
白たちは受付嬢についていくとギルド内にある測定室へ入り、6つの黒い縦長の石柱の前に案内された。
「こちらがギルドに登録するための装置でございまして、この石柱に手をかざしていただくと刻まれた紋様が光ります。光った色によってランクが分けられておりまして、ブロンズランクからマスターランクまでの6段階ございます。一般的にブロンズとシルバーランクが初心者、ゴールドとプラチナが中級者、ダイヤランクが上級者、マスターランクは下のランクから上がることはできず、測定時の総力値でしかなることが出来ません。それでは皆様、準備ができましたら石柱に手をかざしてください。」
そういわれた6人はそれぞれ石柱に手をかざすと、すべての石柱の紋様が紫色に光った。
すると石柱の前にカードが生成され、各々が目の前に生成されたそのカードを受け取った。
カードは表面の縁から紫に輝く紋様と名前が装飾されており、裏面には金色に輝く冠が印されていた。
「それは間違いなくマスターランクのギルドカードです!今登録されているマスターランクの方は1名しかおりませんでしたが、一気に6名も増えるだなんて…。ギルド始まって以来初の出来事です!」
テンションの上がった受付嬢がそういうと、ギルドカードをしまった白は受付嬢に聞きたいことがあった。
「これって名前だけでステータスは書かれてないんですね。」
「以前はステータスまで書かれていたのですが、そのステータスを見て低いランクの人たちを狙った事件がいくつも起こってしまったので、今のようになりました。」
悲しさと申し訳なさの混じった声で受付嬢は答えた。他の5人もそれに納得して静かにギルドカードをしまった。
暗くなりそうな雰囲気を感じたエリスは、元の雰囲気に戻そうと白に話し始めた。
「そういえばお姉ちゃん達ゴーレムと戦ってたんだよね?けがとか、大丈夫?」
「エリスちゃんがめちゃくちゃ優しいんですけど〜;;お姉ちゃん強いから大丈夫だったよ!いざとなればエリスちゃんのことも絶対守るからね!!あ、もちろんアルス君もだよ♪」
「ありがと、白お姉ちゃん」
「一応リーダーですし、頼りにはしてますよ。」
純粋なエリスとデレたアルスに対し鼻血を出してその場に倒れた白をシエルが背負って、部屋に戻るとソファに寝かせた。
エリスが膝枕しようとしたが、「また倒れられても困る」と思ったヘスティアが止め、白が目を覚ますまでの少しの間5人がそれぞれ話しをしながら過ごした。
「その地下室で見つけた日誌に、クロス博士がどこに行ったとか書いてなかったの?」
「書いてはなかったが、結機族を作ったんならレイネールにいるんじゃね。」
「確かにありえそうね。」
ヘスティアとソイルはクロス博士の行方について話していた。
シエルは白を横で見守っており、アルスとエリスは互いに家族の事について話していた。
「エリスのお母様、亡くなられてたんだ…」
「そんな顔しないでよ、霊界に行けたら会えるかもしれないし、私なら大丈夫だから。それよりアルスの両親はどんな人なの??」
「母さんは白さんみたいに僕にくっついてくるけど、普段はレース・アルカーナの然精族の女王として国を仕切ってて、お父様はウォードルスの国王なんだ。」
「二人とも国を納めてるなんてすごいね!」
エリスは明るい声でアルスに返した。
そんな話をしていると白が起き上がった。
立ち上がって「うーん」と伸びをした。
「みんなごめん。」
「やっと起きたんですね。」
「白はエリスとアルスに耐性つけないとね。」
「私のせいでもあるから謝んなくていいよ、お姉ちゃん」
「僕も悪いんですか!?」
「白も起きたことだし、ギルド内に用意されてるオーヴァン大陸行きの転移装置の方に向かいましょうか。」
「行くか~」
白たちは部屋を出てギルドの受付に向かい、転移装置のある場所へと案内された。
案内してくれたのは先ほどと同じ受付嬢だった。
「こちらがオーヴァン大陸にあるエンスタシナ国行きの転移装置となります。準備が出来ましたら魔法陣の上にお乗りください。」
転移装置に入り転移する前に、白はリーダーらしく鼓舞し始めた。
「いよいよ旅の始まりだね。皆一緒なら大丈夫だよ!じゃあ行きますか。」
受付嬢がレバーを下すと、白たちは転移した。
そして6人の賢者たちはこの日、暗黒神討伐のために動き出した。




