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オルタレイション  作者: マグciel
オーヴァン大陸編
12/35

9話 風の竜王の試練

 白とシエルは翔に付いていき、閑静の丘の頂上へ向かっていた。

「秘境に行けるのは私たちだけなんですね。」

「ね~、なんで他の皆は入れないんだろう…。」

「我ら竜王は適性のあるものしか秘境に入れない。他の者が入れないというわけではないが、それは竜王が神々と交わした契約を違反することになる。」

シエルや白がなぜ自分たちだけなのか疑問に思い会話していると、前を歩く翔がその理由を答えた。

白たちは竜王についてあまり知らなかったため、それを聞いて驚いた。

「神々との契約って、竜王って神様の使徒みたいなものなんですか?」

「お前たちはあいつと一緒いると聞いていたが…。」

「私たちの中に竜王に詳しい人っていたっけ?」

シエルも白も翔が言った“あいつ”に心当たりがなかった。

竜王に関することを賢者達の中で話したことはなく、その他の人から聞いたこともなかった。

「あいつ、ソイルは盤悠竜王ばんゆうりゅうおう:郷華きょうかの弟子だ。郷華はあいつに我ら竜王やかつての大戦について話したと言っていた。何も聞いていないのか?。」

「兄さんは何も言ってくれなかったんだけど…。」

「シエルも聞いたことないって、相当言いたくないことだったのかなぁ。」

「勘がいいな。だが我が話すことではない、それはあいつに直接聞くといいだろう。着いたぞ、早速だが準備はいいか?」

「私はいつでもおっけ~。」

「…うん私も大丈夫。」

初めて聞いたことであり2人は驚いたが、同時にソイルの過去のことも気になった。

シエルはそれよりも兄が自分にも何も言ってくれなかったということに少し寂しさを覚えていたが、今は目の前のことに集中しようと思い、気持ちを切り替えた。

そして翔は2人に確認を取ると、自らの秘境を開いた。

「ここが秘境?何もなさそうだけど…。」

「確かに何も無いね。」

「お前たちに与える試練は“百戦錬磨”我が生み出す100体の眷属を倒すことが出来れば合格と認めよう。」

白とシエルは広い空間に連れて来られ、翔は2人に内容を伝えた。

試練は厳しいものであると2人は覚悟していたが、それを上回るほど過酷そうな条件であった。

それと同時に白はやる気に満ちていた。

「いいねぇ、早くやろ~。」

「私は戦闘あんまり得意じゃないんだけど…」

「では始めるぞ。」

そういうと翔はその場から消え、魔法陣の様なものだけが床に残されていた。

その魔法陣の様な所から早速数十体ほどの眷属が出てきた。

「ハウビーストにウィンドナイト?実際にいるやつみたいだね。」

「補助は私に任せて。アクアブレッシング、ヴェントブレッシング、ヴェントチュトラリー。」

シエルが魔法を唱えると、2人の特殊攻撃力,防御力、水,風属性の耐性、源素値レベルが上昇し、風属性のシールドを纏った。

魔法の効果を受けたのち、白は刀を抜き現れた眷属の方へ向かった。

かんなぎ斬雨きりさめ。」

白は目の前にいる狼型眷属に妖術を放つと、半分は攻撃を受け消滅したが、もう半分には避けられてしまった。そして避けた眷属は白を取り囲んだ。

水纏みてん:時雨しぐれ

白は刀に水属性を纏わせ、一瞬のうちにして取り囲んでいた眷属たちを切り伏せた。

そしてシエルの方に向かっていた騎士型眷属に対して妖術を放とうとしたが、シエルは自分で魔法を放った。

「コールドブロウ」

氷属性を含んだ強い風は眷属達を包み込み一掃し、白もシエルもほとんど一瞬で眷属たちを倒した。

「戦闘得意じゃないとか言ってたけど全然いけるじゃん。」

「補助魔法で強化してたからある程度は。でも白は流石だね。時雨?って技、なんで眷属たちが斬られてるのか全然見えなかったし、分からなかったよ。」

「まぁね。時雨は範囲が狭いし一瞬だけだけど時間を止めて、その間に攻撃できるんだよね。範囲外から攻撃されたりすると弱いから、ああいう時しか使えないんだよ。」

白とシエルが会話していると、再び魔法陣の様な所から数十体の眷属が現れた。騎士型と鳥型の眷属が出てくると、白は騎士型の眷属の方に向かい、シエルは鳥型の眷属を相手にした。

「はぁぁぁぁ!!!」

白は騎士型の眷属に対し、水属性を纏った刀で次々に斬り掛かっていった。

眷属たちも白に対して攻撃を仕掛けていたが、どれも避けられては流れるように斬られていった。

「アイシクルレイン!」

シエルは鳥型の眷属の上に魔法陣を展開すると、そこから放たれた氷柱は眷属たちを撃ち落としていき、眷属たちを倒していった。

やがて出現した眷属たちを倒し終えると、翔の声が聞こえた。

「中々やるな。だが油断は禁物だ。」

すると巨人の騎士のような眷属が現れた。

シエルたちの数倍はあるその眷属は、その大きさによらず素早く動き、白に対して持っていた剣を振った。

白はその攻撃を受けたものの、体格差もあり吹き飛ばされてしまった。

「白!」

「…大丈夫。どんなもんか知りたかっただけだから。シエル、お願いがあるんだけど、補助は全部任せていいかなぁ?あいつは私にやらせてほしい。」

「いいよ、任せて。絶対白を傷つけさせないよ!」

「ありがと。」

白は吹き飛ばされたところからすぐに起き上がると、シエルの元に戻ってきた。

シエルは白を心配していたが、白の好奇心によるものであることを聞くと、別の意味で心配になってきた。そんな白はシエルに対して補助を頼み、攻めに集中することを伝えた。

「フィズインクリース、ヴェントブレッシング」

シエルは白に補助魔法をかけると、巨人型眷属は白の方へ攻撃をしてきた。

しかし白は全く動かず、静かに刀に力を溜めていた。

「ラファールランス!」

シエルが杖を使って放った魔法は眷属の剣を撃ち壊した。

眷属は一旦後ろに下がると、再び剣を生成し、今度はシエルの方へ攻撃を仕掛けてきた。

眷属が剣を振り下ろしてくると、シエルは後ろに下がり、魔法を唱えようとした。

「ラファール……ぅぐっ!?」

だが、シエルが魔法を唱える前に後ろから放たれた魔法を受けてしまった。

魔法を受けたシエルだったがすぐに立ち上がった。

眷属はシエルに対して剣を振り下ろしてきたが、シエルは壁を築いて攻撃を防いだ。

「ラファールプロテクト」

防御壁で眷属からの攻撃を防いでいると、眷属の後ろから声が聞こえた。

「水纏:幽寂貫流ゆうじゃくかんりゅう

白が刀を振り、静かに放たれた斬撃は、眷属の胴体をいとも容易く上下に分断した。

すると巨人型眷属はそのまま消滅していった。

「ふぅ、耐えててくれてありがと♪シエル。」

「これくらい大丈夫だよ、私は上級魔法までしか使えないし、あいつにとどめを刺すのは難しかったから。さすが白だよ。」

「そんなことないよ~シエルならいけたでしょ。」

白とそれを補助していたシエルは巨人型眷属を倒した後、少し話していた。

するとどこからともなく翔の声が聞こえた。

「2人ともよくやった。後半戦を始めるが、準備はよいか?」

「ちょっと疲れたけどまだまだやれるよ。」

「私も。補助に回ってたおかげで余力あるし。」

「では始めるぞ。」

そういうと魔法陣から再び眷属たちが現れた。

白は刀を構え、眷属たちを次々に倒していき、シエルは魔法を使って処理していった。

「う~ん、1体ずつ倒してると時間かかるなぁ。」

「最後にもまたさっきみたいなやつがあるかもだし、温存できるなら一気に倒してもいいかも。」

「じゃあそうしようかな。」

白はそういうと、眷属たちから少し距離を取った。

シエルもそれを聞き少し離れると、白は現れた数十体の眷属に向かって妖術を放った。

槍天雨そうてんう!」

すると数十体の眷属たちの上に紋章が現れると、水で出来た槍が雨のように振り始め、眷属たちを次々に倒していった。

「それ、温存できてるの?」

「参式だけど、広範囲を攻撃するには効率いいからね。それにまだ半分くらい残ってるし、大丈夫でしょ。」

「まぁ私の方はまだまだ残ってるし、大丈夫多と思うけど…。」

妖術で一掃した白と、魔力を温存しているシエルが話していると、再びどこからともなく翔の声が聞こえた。

「最後の眷属、アウストルを倒すことが出来れば合格とする。そいつのコアは別の場所へ保管してある。存分に戦うとよい。」

魔法陣からは巨大な鳥が現れ、2人は強い威圧感を感じていた。

今までの眷属とは違う雰囲気に押されながらも、2人はアウストロに向かって構えた。

「あれが最後か、もう少し温存しといたほうがよかったかなぁ。」

「だから言ったじゃん。」

「あはは…さて、やりますか。」

白はアウストロに向かっていき刀を振り下ろした。

しかし、アウストロの周りには常に風が吹いており、刃が届く前に吹き飛ばされてしまった。

シエルは先ほどのように補助魔法を自分と白にかけると、魔法で応戦した。

「ヴェントブレッシング、ヴェントチュトラリー、カトルヴェントアロー。」

4つの風属性の矢は風域を抜け、アウストロに直撃したがあまりダメージを受けているようには見えなかった。

「魔法は通るみたいだけど、4位階じゃあんまり効果ないかも…。」

「妖術は通るのかなぁ。渦蒼球かそうきゅう

白は少し貯めて妖術を放ってみると、風域を抜けてアウストロにダメージを与えた。

するとアウストロは白の方に向けて翼をはばたかせ、風でできた棘のようなものを飛ばしてきた。

それらを刀で捌いた白は、妖力を刀に纏わせて攻撃をした。

「水纏:斬淌ざんしょう

その斬撃は先程とは違い、アウストロの羽を斬りつけることが出来た。

するとアウストロは白から離れ、魔法を放った。

「っと危ない。…攻撃は通ったけどすぐに修復されるし、中途半端な攻撃じゃだめか~。」

白はアウストロが放った魔法を避け、シエルの元に戻ってきた。

刀で傷つけた羽はどういう訳かすでに修復されていた。

「シエル、あいつを一撃で倒せるくらいの魔法を撃って欲しい。」

「…は?え⁉いや、私上級魔法までしか使えないしムリだよ…。」

「シエルならいけるって!てか、やらなきゃ倒せないしさ、やってみてよ。」

「…分かった。やってみるけど、あんま期待しないでよ。」

そういうと白は再びアウストロに向かって攻撃を続け、シエルは最上級魔法を撃つために目を瞑り、考え始めた。

「(最上級魔法を撃つにはイメージが大事って兄さんは言ってた。でもそんな魔法なんて今まで見たものには……あ、でも昔読んでもらった本に風の神様が使ってた槍があったはず。それをイメージすれば。)」

するとシエルの周りの空気が変わり始めた。それは白やアウストロも感じており、アウストロは白との攻防を急に辞め、シエルの方に攻撃を仕掛けた。白もそれに勘付き、アウストロを止めようと近づいた瞬間、急にシエルとアウストロから遠ざかってしまった。

「…っ⁉」

アウストロは目を瞑っているシエルに向けて風球を放った。

シエルはその風球に直撃してしまい、ダメージを受けて後ろに吹き飛んでしまった。

地面に倒れ、何とか起き上がろうとしていたシエルに対し、アウストロはブレスの追撃を放とうとしていた。

白は何故かアウストロからかなり離れており、このままではシエルが追撃のブレスを受けてしまうという状況に陥っていた。

「(あのブレスを食らったらシエルは…でもここのままじゃ間に合わない。もっと速く、もっと…)」

そしてアウストロはシエルに向かってブレスを放った。

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