episode41 夜叉・魔女・魔人の三竦み
歩く、一面の青空の下、天然の生え揃った綺麗な芝生の上、四季折々の花が咲いた中、まっすぐと歩く金のメッシュが入った黒髪の男
「やぁ、調子はどうだい?」
「順調だよ、特に意識を割かなくてもあの規模の雨ならいつでも保てる、それにようやく湖と認められる大きさのものが出来てきた。やっと両軍も撤退したよ」
小さなテーブルに座り用意された茶菓子に口をつける、正面には吸い込まれるような瞳を持った女が足を組んで座っている
「それはよかった、革命の方は?」
「そっちも順調だ、ジャック・グルーツェを私欲に駆られて戦争を起こした大犯罪者に、現国王をそんなジャックに操られた愚王として突き上げれることに成功した、今は現国王の弟を祭り上げてクーデーターを成功させる段階まできた」
黒髪の男がオルガ王国の国内で発行された新聞紙を女に渡した
そこには“現国王は傀儡!?シャルル・フォン・オルガ公爵が新王を名乗る!!”と書かれている
「人間の政治にはよく詳しく無いけどこんなに簡単なんだ、ちょっと市民を煽って事実を誇張しただけなのに気づいたら勝手に声が大きくなって行ってる」
「そういうものだよ、多少疑っても仲のいい隣人の言葉で、それと少し脚色の入った事実、それだけで確信にいたるから」
興味がないのか、彼女は角砂糖をそのまま口に含んで噛み砕き、紅茶で流し込んだ
「で、オルガ王国優位で終戦条約を結び、その後エリーシェを巨大な津波が襲って甚大な被害が出たのをオルガ王国が先のエリーシェから得た賠償金を支援に充てる。
オルガ側のエリーシェへの敵意は旧王室に向いて、エリーシェ側も支援のおかげで敵意が和らぐ、色々手順が多くて面倒だね」
指先に止まった蝶々を眺めながら他人事のように感想を言う
まぁ本当に彼女にとって他人事なのだからしょうがないが
「でも本当にうまくいくの?革命が起きたのはオルガ側なのにオルガ優位の条約の締結なんて難しいと思うけど」
「そもそもエリーシェ側にすでに余裕はなかった、その上英雄さえ失ったんだ、それに対してオルガ側は七賢者がまだいる上にエリーシェよりは戦争を続ける余裕がある、それでも頷かないなら私が頷かせる」
黒髪の男は徽章を取り出した
銀の杖と本の紋章が刻まれたオルガ王国内で七つしか現存しない七賢者を示す徽章だ
「あぁ、そうだったね、今の君は七賢者の第四位だったね」
「スムーズに作戦を完了するのに必要だったんだ」
男は徽章を仕舞い、紅茶にジャムを入れる
「で、君の理想へはどう至るんだい?やはり私の理想を叶えるために力を貸してくれたほうがいいんじゃないか?私と君が揃えば魔人に何もさせることなく明日には平等な世界を築ける!」
「人類の九割以上を殺してか?否定することもないけど私はそこまで振り切れてない…まずはこれほどまで人を殺すのを簡単にした重火器、それらを鉄塊に帰すための対策を講じるな、その後魔術と教育の発展と布教に尽くす、そしたら今よりは戦争への敷居が高くなるはずだ」
「ありゃりゃ、振られてしまったか、まぁ気が向いたらいつでも魔女会に来てくれ、……おっと、私の派閥にだよ?一緒に楽園を築こう」
「気が向いたらね」
男と女は妖艶に笑う
カップの紅茶を飲みきって男は立ち上がる
「もう時間か、じゃあね黒夜叉」
手を振る女に男は立ち止まって不服そうな顔を見せる
「やめてくれ、君だってネフィリスっていう可愛らしい名前があるのに“水銀の魔女”って呼ばれるのは嫌だろ」
「照れることを言ってくれるなぁ、ならなんて呼んでほしい?」
男は少し考え込み、答えを出した
「魔女や魔神と並ぶ……そうだな、導師とでも名乗ろうか」
「おいおい、人受けのいい言葉だな、……導師シャーレ、君の幸運を祈ってるよ」
「ネフィリス、私も願っておくよ、君の理想が叶うように」
男は満足げに笑って再び歩き出す
男が黒と金の刀を振るい、切り裂かれた空間に導師と名乗った男は入っていった
第一章完ッ!!
変なクラムボン「早くヒロイン出したいな…」
右下謎クラムボン「これは可愛い女の子を曇らせて栄養を摂取する人間の屑の変なクラムボンだね」




