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夢の中で会いましょう  作者: 池田圭


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おかしな国の少年の夢の中で

「夢神様、聞こえていますか?」

「あぁ、聞こえているよ、244番」

 私はモニター越しに、244番と会話をしていた。

 244番は私が作った使い魔で、彼は今日担当することになっていた人の夢の中に入って、仕事をしていた。

 私達、夢神と使い魔達の仕事は、人の夢に影響を与えることで人に干渉し、宇宙のバランスを取ることである。

 人と呼ばれる生命体は、宇宙史上初の知的生命体であり、彼らの存在は宇宙の進歩になる可能性もあれば、宇宙の滅亡が起こる可能性も秘めていた。

 その為、宇宙を守る為のプログラムとして作られた私達、神は、宇宙の滅亡を防ぐ為、夢と呼ばれる概念を使い、人間に干渉することでそれを未然に防いでいる。

 しかし、これらの仕事の中には、さほど重要では無いモノも存在する。

 こういった仕事の重要度を書き記してある指令書を、私は仕事をする前に使い魔から貰っている(今日は隣にいる使い魔、625番から貰った)。

 ちなみに、この指令書は、私の上司である想像を司る神、想像神が書いているものである。

 そして、この指令書には、主に2つ種類がある。

 1つは、そこまで重要ではない仕事内容が書かれた、白の指令書。

 もう1つは、この宇宙を守る上で最重要任務となる赤の指令書。

 白の指令書は、仕事が失敗に終わったとしても、宇宙にさほど悪影響を及ぼすようなことが現実世界で起こることは無いが、赤の指令書は違う。

 赤の指令書の仕事内容は、失敗した場合、宇宙に何らかの損失を高確率で起こす可能性があり、最悪、失敗しただけで宇宙滅亡という大惨事にもなりかねない仕事である。

 今回、244番の入っている夢は白の指令書の夢である為、宇宙が滅ぶ危険性は低い。

 ならば、「白の指令書の仕事は行わなければ良いのでは無いか?」と思う人もいるだろう。

 しかし、そういう訳にもいかない。確かに白の指令書の仕事は、一つ一つはさほど重要ではない。だが、塵は積もれば山となると言うように、白の指令書に書かれた仕事をやらなければやらないほど、宇宙に悪影響が及ぶリスクが出てくる。

 要するに、指令書の内容が白でも赤でも、私達は真面目に仕事をしなくてはならないのである。

 私は溜息をついた。

 すると、隣にいた625番は「仕事中なんですから、溜息なんてつかないでください。」等と私は怒られてしまった。

 やはり、彼女は私に比べると真面目すぎる。

 一体何故、こんな不真面目な私から、こんな真面目すぎる使い魔が生まれたのか、私は些か疑問であった。

 そんな事を考えながら、私はモニター越しの244番と夢の様子を見た。

 案の定、夢の中はまだ真っ暗である。

 夢の世界に入る時、大概、夢の中は真っ暗である。

 人は眠った時、いきなり夢を見ることは無い。その為、基本、夢の世界は人が眠りについてから、徐々に、徐々に、形成されていくのである。

 だから、そうこうしているうちに、いずれ夢の世界が形成されていくだろう。

 そんな事を考えていると、モニター越しの夢の世界が徐々に光を帯び、モニター全体を光で覆い尽くした。

 次第に、その光は収縮していき、次第に鮮やかな夢の世界の景色が見えた。

「夢神様、見えますか?」

「あぁ、見えてるよ。244番。」

 今回、モニター越しに見える世界は、緑の芝、赤色の木、150センチほどあるように見える、白い水玉模様がついた赤色の毒キノコ、お菓子でできた橋、サイダーのような水色をした大きな滝等、いかにもファンタジー世界のような空間で、今にも赤い服を着た小人がミュージカルのように踊りそうな雰囲気の空間だった。

 244番は、その景色を眺めながら夢の世界を散策していると、何かに気づき、赤色の草の茂みに隠れた。

 おそらく、244番は夢の主である人間を見つけたのだろう。

 モニターをよく見ると、茂みの向こうに人が誰かと踊っているように見える。

 私はその光景がよく見えなかったので、モニターのカメラを少しズームさせた。

 そこに映っていたのは、人と黄色い姿をしたナニカだった。

 ナニカの見た目は、頭にチョコレートとカラフルなチョコチップ、全身が黄色い見た目で、長円形が縦になってるような形のモノだった。

 そのナニカは、腕や足が無いにも関わらず、夢の主である少年が楽しく踊っていると、それに合わせて体をフニフニと動かし、絵に描くようなニコニコな笑顔で踊っていた。

「夢神様、アレは何ですか?」

 モニターを隣で見ていた645番は、私にそう問いかける。

「アレは、チョコバナナの悪魔か、エクレアの悪魔かどっちかだろうな。」

 そんなテキトーな返答をした私は、手元にあった指令書を見て、現場にいる244番に指示を出した。

「244番、聞こえるか?」

「はい、聞こえます。夢神様。」

「宜しい。あの夢の中に、異常な見た目をした怪物がいるだろ?」

「はい、アレはパイナップルの悪魔ですかね?私にはよく分かりませんが、」

「そんな事は、今回どうでもいい。とにかくアレをお前の力で増やせ。最低でも100体は作っておけ。」

「はい、分かりました。夢神様。」

 そう言った244番の両手はみるみると光を放ち、その光はレーザーとなって、ナニカに直撃した。

 夢の中というのは、人の想像力次第でどんなモノでも、どんなことでも出来るようになる。それは、夢の中に入っている使い魔達にも同じ事が言え、夢の中にいる時は夢の主の想像力が豊かであればあるほど、使い魔達も想像次第でどんなことも出来るようになる。その力を利用することで、私達は夢に干渉を起こすのである。

 ナニカに光が直撃した光景を目の当たりにした少年は、少しキョトンという顔をした。

 それもそうだ。いきなり楽しく踊っていたモノが、いきなり攻撃を受けているのだから。

 その直後、光に当たったナニカは、みるみるうちに増殖を始めた。

 その数は2、4、6、12、24と倍々に増え、少年はそのナニカ達に取り囲まれていた。

 ナニカ達は、増殖を続けていても尚、にこやかでな顔でフニャフニャ、フニャフニャと少年に近づいていき、その様子は徐々に少年の恐怖心を煽るものになっていた。

 その無数のナニカに囲まれた少年は、見る見るうちに脅えた表情になっていき、そろそろ泣きそうな顔をしていた。

「244番、もうすぐ夢の世界が消える。オマエは今すぐ脱出しろ!!」

「承知しました。夢神様!」

 そう、244番は言うと右手で敬礼した。

 それと同時に、244番の姿はモニターの画面から消え、私達のすぐ後ろに現れた。

 その直後、モニターの映像は途切れた。

 どうやら、夢が閉じる前に脱出が出来たようである。

「よくやった、244番。」

「はい、もう疲れましたよ。あの夢は一体なんなんです。」

 そう言う、244番は汗をもの凄くかいていた。

 本来、使い魔達に疲れというものは存在しない。

 しかし、だからといって彼らに感情が無いわけでは無い。

 彼が汗をかいている理由は、疲れというよりも、夢の世界から急いで脱出しなくてはという危機感や焦り等のものだろう。

 そう考えていた私は、244番の問にこう答えた。

「アレは、少年の幸せな夢らしい。自身が想像した空想の友達と、仲良く踊るという夢だ。」

「え?幸せな夢だったんですか?それだったら、わざわざあの夢を悪夢にする必要なんて無かったんじゃ無いんですか?」

「いや、それはそうとも言えない。」

 244番の問にそう答えた私は、手元にあった報告書を見ながら、彼にこう答えた。

「あの少年は夢を見る前、母親が会社の同僚から旅行のお土産としてもらってきた、ドリアンチョコレートを夕食後食べている。ドリアンの味は食べた事のあるものなら、分かると思うが、強烈な刺激臭がして非常に不味い。しかし、それを好んで食べる者たちも人の中には存在する。少年はドリアンチョコレートの味がまだ不味いとも美味いとも思っていなかった。ドリアンという食材は、今はまだ一部の国でしか食べられていない。しかし、ドリアンがもし全世界で食べられるようになり、人気になった場合、世界ではドリアンが溢れるようになるだろう。そうなると、この神々の住む世界までドリアンの匂いが来ることになってしまう。今回の仕事は、それを危惧した想像神様が、送ったものだ。」

「じゃあ、それって、」

「宇宙の危機とか、そんなの関係無い、やらなくても良い仕事だった訳だ。」

 そう私が言うと、シーンとした沈黙が少しの時間、この空間を支配していた。

 その沈黙の中、いきなり大きな笑い声が響いた。

「ハハハ、可笑しい。そんな事のためにこんな仕事してたんですか。ハハハ。」

 笑い声の主は、625番である。

 普段、クールな雰囲気を漂わせる彼女が、いきなり笑うのは珍しく、私は少し驚いた。

 だがしかし、彼女の言っていることも確かにそうだと徐々に感じ始めた私は、彼女につられて大笑いをした。

 244番は、「へっ?」という顔をしながら私達を見ていた。

 それを気にせず、私達は当分笑い続けた。

 こんなくだらない仕事がいっぱいあれば、私も日々楽しいのだろうなと思いながら、私は笑っていた。

 だが、こんな楽しい仕事がそんなに無いのが、この仕事だ。

 笑い終わった私達は、冷静になり使い魔達に言った。

「さぁ、次の仕事に取り掛かるぞ。」

「はい、夢神様。」

 そう返事をした使い魔達と私は、また次の仕事に取り組むのだった。

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