表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/27

十六話

 体に振動を感じ、はっと理緒は瞼を開けた。朝餉の後、睡魔に負けて眠ってしまったことに気がつく。

「起きた?」

 目の前に鏡弥の顔があった。

「うわぁ」

 思わず声を上げた。のけぞり、壁で後頭部を強打する。ずきずきと脈打つような痛みが現れる。

「どうせ、夜に寝てないんでしょ?」

 問いかけに理緒はそっぽを向いた。

「俺は何もしないって分かったでしょ? だから今日はちゃんと眠るんだよ」

 頬に冷たい感触を覚えた瞬間、正面を向かせられた。赤い眼がじっと見つめてくる。

「返事は?」

「……はい」

 言いたくなかったが、理緒は仕方なく言った。


 就寝の時間になってしまった。今晩も鏡弥から手を引かれ、寝床に連れて行かれる。布団に横になると、昨晩と同様、体が全く動かせなくなる。

「いい? ちゃんと眠るんだよ。おやすみ」

 室内の明かりが消えた。ほどなくすると、鏡弥の寝息が聞こえてきた。

 昨晩は本当に何もしてこなかったけど、今夜は分からない。理緒は今夜も起きておくつもりだったが、どうしても睡魔に耐えられず眠りについてしまった。


 理緒が目を覚ましたとき、室内は真っ暗だった。ちゃんと眠ったからだろうか、今朝はもう体が動かせた。理緒は体を起こす。

 暗がりの中、目をこらしてまだ眠っている鏡弥をちらりと見た。ぐっすりと眠っているようで、胸の辺りがゆっくりと上下に動いている。

 見たところ、自分も鏡弥も布団と着衣の乱れはない。本当に何もされなかったのだろうか? でも、眠っている間に意識を操られて、あの汚らわしい夢のようなことを……。考えたらきりがない。

 理緒が頭の中をぐるぐるさせていると、

「おはよう」

 と、いう声が聞こえ、明かりがついた。

「昨晩はちゃんと眠ったんだね」

 鏡弥は体を起こしながら、

「眠ったら体が動かせるようにしたから」

 と言った。

 そんな複雑そうな力も使えるのか。それなら、眠っている間に意識を操ることだってできそうだ。

 理緒は胸元をぎゅっと握り、口をへの字に曲げて鏡弥を睨む。

「何?」

 鏡弥は首を傾げた。

「本当に何もしてないでしょうね?」

「疑り深いなあ」

 と、ほとほと呆れ顔だ。

「俺もそこまで野蛮じゃないよ」

 鏡弥の顔つきが変わった。目つきがぐっと険しくなる。

「ねえ、信じて?」

 怒りをにじませている赤い眼が恐ろしい。これ以上疑ってはいけない、理緒は直感する。だから、

「……はい」

 と、言わざるをえなかった。

「俺もずっと疑われてばかりでうんざりしてるんだ。だからもう疑わないでね」

 鏡弥は言い終わると、眼から怒りを消し、布団をたたみ始めた。理緒も急いで立ち上がり、鏡弥から言われる前に布団をたたんだ。


「信じて」と言われても、理緒はどうしても鏡弥のことが信じられないでいた。

 今晩からは眠らない。睡眠時間は、仮眠と鏡弥が外に出ていったときの昼寝で補う。そう決めて、理緒は布団に横になった。

 寝転がってすぐは、瞼を閉じて眠るふりをする。

 すぐに鏡弥の寝息が聞こえてきた。理緒は瞼を開け、暗闇を見つめ続ける。眠気を感じたが、瞼を開け続けて一晩を過ごした。

 何とか五日は耐えた。だが、仮眠と昼寝では体がもたない。瞼を閉じれば、一分で眠ってしまいそうな猛烈な眠気に襲われる。

 五日間、鏡弥は隣でぐっすりと眠っていただけだった。

 何もしてこないって信じていいのかな……。

 眠ったら、彼に心を許したみたいで嫌。でもぐっすり眠りたい。理緒はジレンマに陥っていた。

 働かない頭を頑張って動かし考える。眠っていないことがばれて、強制的に眠らされるのは嫌だ。……仕方がない。

 理緒は瞼を閉じた。そして深い眠りに落ちていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ