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第24話 ひとりぼっちの通学路

 朝日が眩しく、小鳥の鳴く声が頭上を飛び交う穏やかな火曜日の朝。純蓮はひとり、学校へと続く道を歩いていた。


 「……影吉ったら、本っ当に頑固なんですもの」


 むむと眉を寄せながら彼女はぼやいた。

 

 今朝も、彼は多少の気まずさは感じさせたもののおおむねいつも通り、といった態度を崩すことは無かった。そして、そんな彼の態度こそが純蓮を余計に苛立たせたのだ。

 送迎はいらない、と勢いのままに言い切った純蓮はひとり屋敷を飛び出して、こうして今通学路を一人歩いている。

 幸いと言うべきか学校までは徒歩でも十分に向かうことができる距離であり、純蓮の計算通りにいくのなら授業に間に合うような時刻には到着できる予定、のはずだった。だが、


 ――歩きはじめて十数分、純蓮は早くも道のりの遠さに心を折りかけていた。


「学校までって……、こんなにも遠いんですのね……」


 いつもは影吉が送ってくれているから知らなかった、と彼女はつぶやく。純蓮が気付いていなかっただけで、きっと今までの純蓮は影吉にいつも守られていたのだろう。なんだか気分が落ち込んで、彼女はしょんぼりと肩を落とす。


「で、でもやっぱり発信機? を勝手に取り付けるなんていけないことですし! それに、わたくしの大切なキーホルダーにそんなことをしたのですし! アルマさんにひどいことを言ったのですし! ……許すわけには、いきませんわ」


 自分に言い聞かせるように、彼女はうんうんと頷いてみせる。そして、ふと顔の近くで握った拳に視線を向けると、手首に嵌められた腕時計は、始業に間に合わせるにはギリギリの時間を指し示していた。


「い、急がないと遅刻してしまいますわっ!?」


 彼女は歩く速度を早めて、学校への道のりを急いでゆく。彼女の歩く後ろでは、朝露に濡れた葉が揺れる。


 そんな、いつもと同じようで何かが違う一日は始まった。


 ◇◇◇


「……さてと、そろそろ私の動く時間かな?」


 喫茶ルミナリクの地下。隠された応接室の長椅子で、彼女はゆったりと体を起こした。その動作は気怠げながら、どこか品すらも感じさせる。机の上に散らばる資料に目もくれず、彼女はその場を後にする。


 コツコツと足音を響かせて、真紅の髪をなびかせた彼女は階段を登ってゆく。


 長い睫毛を瞬かせ小さく唇の端を吊り上げたその表情は、どこか新しい玩具を見つけた子どものようなものにも見えたのだった。

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