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第18話 人形師

 カウンターの上に広げられたのは、 いくつもの新聞記事や雑誌の切り抜き。しかもそれらは全て同一の連続殺人事件についてのものだった。


 その量と内容におののきつつ、純蓮は向かいに立つアルマを見上げた。資料を見下ろす彼の表情は、今まで見た事がないほどに暗く冷たい。


「本当は……、見せる気はなかったんだけどな」


 小さく息を吐いて、彼はそうひとりごつ。彼はすっと手を伸ばすと、ひときわ大きな見出しを指さした。


「……まず前提として、この事件のことは知ってるか?」

「え、えぇ。確か……、十年ほど前にこの街周辺で起きていたという連続殺人事件、ですわよね」


 おぼろげな記憶をたどりつつ、純蓮は頷く。そこに書かれていたのは、当時話題になった連続殺人事件の概要だった。確か連日報道されていたのにも関わらず、犯人はいまだ捕まっていないという話だったはずだ。


「まぁ大体はそんなところだな。ただ、お嬢サマの話をひとつ訂正するなら……、」


 アルマはすっと純蓮を見据えると、重々しく口を開く。


「この事件は、八年前の事件をきっかけに一切の犯行が止まっている」

「八、年前……」


 胸がざわつく。嫌な赤色が、忘れられない赤色がフラッシュバックする。どくどくとうるさい鼓動をおさえつけながら、純蓮はアルマに言葉の先を促した。


「――この事件は、ここ白崎市を中心に起きた連続殺人事件だ。被害者はいずれも二十代の女性で、その遺体は河川敷などに遺棄されていた。そして……、その遺体に損傷が見られずまるで人形のようであったことから犯人にはこう異名がつけられた」


 そこまでを言うとアルマはひとつ言葉を区切った。新聞記事を見つめる彼の眼光は恐ろしいほどに鋭く尖っている。


「『人形師(ドールメイカー)』と」


 彼の言葉を心の中で復唱する。人形師(ドールメイカー)。その異名はまるでフィクションのようで、どこか現実味のない響きを帯びていた。


「……どうしてアルマさんは、そのような事件について調べていたんですの?」


 嫌な予感に目を逸らし、彼女は疑問を小さく吐き出す。彼女の声に彼は一瞬顔を歪めると、渋々といった様子で語り始めた。


「それは……、この事件がお嬢サマの家にも関わるかもしれない事件だからだ」


 アルマの言葉を咀嚼する純蓮を確認しつつ、彼はなおも言葉を続けていく。


「これはあくまで推測になるが……、この事件は最終的な標的を定めていた、いわば予行練習にあたる事件だったんだと思う。そしてその最終ターゲットはきっと……、」


 どくんと心臓が跳ねた。息が詰まる。その言葉の先を聞きたくないのに。純蓮の耳は少しだって彼の声を遮ってはくれない。


 彼は揺れる純蓮の瞳をまっすぐに見据え、重たい口をそっと開いた。


「きっと、一之瀬陽乃だった」

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