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第6話 鈴木の追放を阻止しろ1


 どうにか鈴木の追放を阻止しなければ!


 俺がオタクだとばらして知識を教えるか? いや、今俺がオタクだと知られたら、オタクがオタクを庇っていることになる。オタク嫌いなヤツらが騒いで、収拾がつかなくなるだろう。俺も一緒に攻撃されてクラスがバラバラになるかもしれない。ここはオタクを隠したまま防がなければならない。


「とりあえずこいつは、役立たずだしハブろうぜ。」「こいつはあゆみを見捨てたのよ!」

 マズい!とにかく適当なこと言って何とかしよう。

「待ってくれ!」 俺は皆に言った。

「なんだよ光輝!まさか鈴木を庇うのか?!」 ハイドが睨みながら言った。

 この感じじゃ正論や一般論でいくのはマズそうだ。そうだ!

「そうじゃない。あゆみのことは俺はまだ詳しく聞いていないんだ。鈴木を追放するなと言っているわけじゃない。これは俺の我がままだけど、できれば俺が詳しく話を聞くまで進めないで欲しいんだ。あゆみは俺にとっても大事なヤツだったんだ。俺にも関わらせてほしい・・・」

 あゆみが大事だと色々匂わせて情に訴える作戦だ。実際あゆみが気になっていたのは嘘じゃない。あゆみならオタクも受け入れてくれるんじゃないかとか思っていた。マジ悲しい。こんな状況じゃなければ俺も泣いていただろう。

「そうか・・・。分かった。」 ハイドは悲しそうに言った。

「光輝君・・・」 瑞希も泣きながらこっちを見ている。


 皆にも一応言っておこう。

「皆も聞いてくれ。さすがに職業を理由で追放はやめよう。ここは異世界だ。俺達の常識が通じるとは思えない。弱そうな名前の職業が強かったりするかもしれないし、俺の勇者が予想外に弱かったりしても、俺を追放するのは勘弁してほしい。」

 俺は追放を防ぐために言った。

「いやそれはないでしょ。」「光輝を追放はないわよ。」「変な事言うなよ。」「まあ異世界だしな。」「そもそも職業が何なのかわからないしな。」

 みんな微妙な反応だが一応納得したようだ。


「光輝君の言う通りよ。それに単純に職業差別は良くないわ。」 愛理が追加で言ってくれた。さすが聖女だ。

「確かに職業差別は良くないな。」「いや差別なんてするつもりはないよ。」「追放ルートにならなかったな。」「いや鈴木はまだ分からない。」

 とりあえず追放の流れは阻止できたようだ。しかしまだオタク連中が逃げないか心配だ。



 すると様子を見ていた司祭が話しはじめた。

「皆様!今日のところは皆様もお疲れでしょうし、ここまでに致します。今後の詳しい説明はまた明日になります。お食事とお部屋を用意しますので、ゆっくりとお休みください。」

 どうやら今日は終わりのようだ。

 多分俺達の職業などの情報を見て、お偉いさんが話し合って今後を決めるのだろう。

 ゾンビウイルスの対応も話し合うのかもしれない。隔離されたりしないかちょっと不安だな。魔法で治療できたりすれば良いんだが。


 その後、皆で大聖堂の食堂に移動して食事をとった。とくに豪華ではない普通の食事だった。内容は固めのパンと具がたくさん入ったスープ、野菜の漬物、謎のフルーツ、薄いワインのような飲み物だ。味も普通だ。いや日本人にとって普通なだけで異世界では豪華な部類かもしれない。黒パンとかじゃなかったしな。

 そういえばステータスの見方の説明がなかったな。俺が隠していると不信感をいだかせるから、俺から皆に伝えておくか。

「皆!聞いてくれ!」

「おう。何だ?」「どうした?」 ザワザワ

「気づいた人もいると思うが、頭の中でステータスと念じてみてくれ。」

「え?」「何これ?」「おお!」「光輝君も気づいていたのか。」「ゾンビウイルスが・・・」

 皆見えたようだ。そしてやはりゾンビウイルスにも感染しているようだな。

「自分の能力が見えただろ? 気づいたから皆にも教えておこうと思ってな。ゾンビウイルスに感染しているかもしれないが皆同じだから落ち着いてくれ。俺達と一緒にいた人は知ってると思うが死ななければ影響無いはずだ。」

「そうなのか?」「うん。」「ネット情報だけどね。」

「この世界なら治す魔法とかあると思うから、落ち着いたら聞いてみる。皆も治す方法を見つけたら教えてくれよな。」

「わかった。」「ああ。」

 よし皆落ち着いているな。大丈夫そうだ。

「それと危険そうな能力は室内で使わないでくれよ!」 一応注意もしておこう。

「おう!」「わかったわ。」

「特にミレイは絶対使うなよ。」 大魔導士の魔法はヤバいだろう。

「え~何それ~、私は危ないことなんてしないし~、確かに魔法使いたいって思って色々試そうとしてたけど~。」 やっぱり危なかったじゃないか。

「ダメじゃねえか。光輝がいなかったら爆発してたかもしれねえぞ。」 剛士がつっこむ。

「何よ~、そんなことないし~、多分。」

「多分かよ!」

「キャハハ!」

「しかしよく気づいたな?」 ハイドが聞いてきた。

「俺も小さい頃はゲームとかしてたからな。」 適当に答える。

「へ~意外。光輝はそういうのしないタイプだと思ってた。」 亜美が言ってきた。

「子供の頃なら買ってもらったらやるだろ普通。」

「そらそうね。」

 何とかごまかせたようだ。



「光輝。それより早く瑞希の話を聞こうぜ。今も落ち込んでる。鈴木をシバいて早く元気づけてやらねえと。」 ハイドが言ってきた。

「そうだな。」 俺は真剣な顔で頷いた。


 皆友人がさっき死んだ割に落ち着いているのは、今までも家族や友人が死んだらしい情報を得たりしていて、色々覚悟していたからだ。それでも一番の親友を失ったばかりの瑞希はすぐには立ち直れないだろう。



 俺は覚悟を決めて、瑞希の話を聞くことにした。




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