動き出す世界
エリオスは窓辺に立ちながら、静かに思考を巡らせていた。13年という月日は、自分をこのノルヴィアの地に閉じ込めてきたが、兄ドレイガルの即位という知らせが届いた今、もう隠れてはいられない。
この世界は、三つの大国が互いに覇権を争っている。
フィオレント、ヴァーラント、そしてメカリス。それぞれが特化した分野で支配を広げる国々。彼らは互いに牽制し合い、どの国も他国に対して優位に立つことができず、三つ巴の状態が続いている。
フィオレントは魔法を、その頂点に君臨している。
自らもその一員であったはずのフィオレント――魔法を用いて国を支配し、特別なマノの力で人々を従える王国。王族は、その力を血統で継承し、国の繁栄を守ってきた。しかし、エリオスはその力に恵まれなかった。常人の12分の1しかマノを持たないことで、王位継承の争いに巻き込まれた。
一方で、ヴァーラントは力そのものを支配している。武力と軍事力による統治だ。
ヴァーラントは、魔法に頼ることなく、圧倒的な武力で他国を圧倒する軍事国家だ。フィオレントとは長年対立し続け、国境付近では小規模な戦争が絶えない。強大な軍事力で他国を支配しようとするその姿勢は、まさに力の論理を具現化したものだ。
そして、もう一つの勢力…メカリス。科学の力を駆使し、独自の技術で他国と対抗している。
メカリスは魔法にも武力にも頼らず、科学技術を武器にしている国だ。ロボットや人工生命体をマノで動かし、魔法を封じることすら可能な技術力を誇る。どの国よりも革新に富んだ技術力を持つが、その冷徹な姿勢は他国との関係を不安定にしている。
フィオレント、ヴァーラント、メカリス――この三つが、今の世界を動かしている。そして、その争いに巻き込まれる形で多くの小国が戦いに飲み込まれている。
三つの大国が互いに優位に立とうとしつつも、どの国も決定的な勝利を掴むことができずにいる。その間で、多くの小国が利用され、疲弊している。
エリオスは地図を見つめた。フィオレントの周辺には多くの属国が点在しているが、それらはすべて、フィオレントの影響を受けていた。自分がその力に押しつぶされかけたように、他の小国もまた、支配の一部となっている。
ラウディアもその一つだ。
フィオレントとヴァーラントの国境に位置し、戦争が絶えないラウディア。戦争によって疲弊し、フィオレントの支配を受けているが、それでも独立を維持しようと必死に抗っている国だ。だが、その努力も限界に近い。
フィオレント、母上に近づくには姿を隠しながらも結果を出さなくてはならない。
エリオスは冷静に、次の行動を見据えていた。マノを十分に持たない自分にとって、この戦乱の世の中をどう利用するかが鍵になる。力ではなく、知識と計略。それが、自分が進むべき唯一の道だ。
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