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ブランシュ

何を言ってもほとんど反応を見せないディアーヌを揶揄うことに飽きたのか、双子はつまらなそうに部屋から出て行った。



まったく原作通りの嫌な奴ら!

まだ子供なのにあんなに意地が悪いなんて、どんな育て方をしたのか親の顔を見てやりたい。

まぁ、父親はディアーヌの親でもあるんだけどね……。



双子がバタンと乱暴に閉じたドアを見つめていると人影がわたしに近づいてきた。

影を見上げるとディアーヌがじっとわたしを見下ろしている。

ディアーヌはわたしにむけて指を一本差し出して来た。その指にスリッと顔を擦り付ける。わたしの行動が予想外だったのか彼女の瞳が大きく見開かれる。



「チチチ……」

せっかく人間(?)としての自我があるのに悪意に晒された少女に優しい言葉ひとつもかけてあげられないことがもどかしい。




「痛かったね……ごめん…」

ぽつりと溢した彼女の小さな声は震えている。



やはりわたしはこれからディアーヌに大切にされる気がする。彼女の弱みとなり得るほどに。



彼女が何をしたというのだ。小さな肩を震わせながらうつむく彼女を見たわたしは決心する。ディアーヌのバッドエンドを回避するということを。



原作小説では抑圧されて育った上に、若干15歳で幽閉されてしまうディアーヌはろくな経験もつめないまま表舞台から消えることになる。

そんなことにはわたしがさせない。ディアーヌがしてみたいと思うことはもちろん、何なら前世でわたしがしたくても出来なかったこともディアーヌには経験してもらう。


そしておばあちゃんになっても幸せに暮らしてもらうのだ。

幸いな事に使い魔は契約が切れない限りは主人の命が尽きるまで側にいることが出来る。

ディアーヌの大往生はわたしの大往生。


熱く燃える感情が溢れるのを感じる。この思いがディアーヌにも先ほどの痛みの感覚のように僅かに伝わっているのか、何を考えているのかと困ったような瞳でこちらを見ているが伝える術がない為仕方ない。



断罪回避の必須条件はディアーヌに悪事を働かせないこと。つまりわたしが彼女の弱みになってはいけない。

だから彼女と距離を取り、双子に目をつけられないように……。




なんて鈍感空回り主人公のような選択をわたしは絶対にしない!

弱みになってはいけないのならば強みになるしかないのだ。鼻息荒くそんなことを考えるも問題がある。今のわたしは使い魔といってもほとんどただのしがないシマエナガ。ディアーヌが楽しく生きていく為に切れるカードが何もかも全く足りていない。



まずはわたしが知る原作小説の知識とこの世界の現実の情報をすり合わせること。主人公やヒーローの側にカラフルな動物が居てかわいい。戦闘にも役立つ!程度にふんわりとしか書かれていなかった使い魔のことを中心にわたしにまず必要なのは知識だ。


幸いディアーヌは読書をよくしているようでベッドサイドのランプの横には何冊かの本が積まれている。知識を得るにはまずは本。次に実際にこの世界で生活している人々を観察して生の情報を集めることかな。

当面の方向性がさだまったことに安堵し意気込んでいると「ブランシュ」とディアーヌが小さくつぶやいた。


目線を彼女にあわせると、すぐにパッと俯いてしまった。


「あなたの、名前…」


小さく言葉を続けた彼女はどうやらわたしに名前をくれたようだ。何このかわいい子…。

嬉しくてついディアーヌの肩にそっと飛び乗る。彼女は一瞬びくりとしたがわたしの頭をそっと人差し指の腹で撫でてくれる。


「これから…よろしくね」


「ピッ」




その時ドアがドンドンと雑にノックされた。


「ディアーヌ様、お食事です」


彼女の瞳に僅かに灯ったように見えた光が失われ一瞬で無表情になる。どうやらディアーヌは兄クロードが貴族院に入学してからは家族の夕食に招かれておらず、自室でひとり食事をしているようだ。



まずはこの家での生活をできる限り快適にしないといけないね。まだたった10歳の子供なのに、ひとりで食事なんて…本当にディアーヌを取り巻く環境が最悪すぎる!




わたしはブランシュ。今は白くてふわふわの可愛いだけの小鳥ですが、彼女のハードモードな人生を変えるため奮闘したいと思います。


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