神社の取材
「お邪魔します!」
真っ赤な鳥居の前でぺこりとお辞儀をして、元気よく入っていく。
真ん中通るのはダメだよねぇ、っと思いながら律は石畳の端を通って行く。
「お手手を洗いましょうねぇ」
律は一人で言いながら、手水に向かっていく。ハンカチを準備してこなかった律は自然乾燥派だと言い聞かせながら、手をぷらぷらしている。
「お待ちしておりました、律様」
少し白髪の混じった、巫女装束の男性がすっと後ろに立っていた。男性の巫女はいないが、禰宜と呼ばれる神職を補佐する仕事がある。きっと、神職にもいろいろな役職があるのだろう。
「すみません、お待たせいたしました。少し道に迷っていたもので・・・」
反射のように謝ってしまう、販売員の頃からの癖だ。時間に間に合ってないわけではないのに
「いえいえ、時間ぴったりですよ。ここは時間を気にする場でもありませんし、ゆっくりされて行ったください」
にこやかに微笑むその姿は神職としての顔なのか、元々このような優しさも持った顔なのか、どちらにせよ悪い気はしない。洗練された、水色の袴がよく似合うこの方はきっと神職が身に馴染んでいるのだろうなと思う。
どうぞこちらに、そう言って本殿の方へ足を向ける。石畳をコツコツ言わせながら、案内してくれるようだ。風が抜ける作りなのか、はたまたその立ち姿が涼しげに見えるのか、夏の暑さを忘れてしまいそうだなと思いながら、後をついて行く。