真っ赤な鳥居と真っ青な空
さっき買ったパンをほくほくと美味しそうに頬張りながら歩いていく。日に焼けるからとさしていた日傘は邪魔になってカバンの中にしまっている。律には日傘をさして優雅に歩くなんてことはできなかった。
「やっぱり、焼きたてのパンは美味しいなぁ」
少し大きめに独り言を言いながら、本来の目的である神社を目指す。ジリっと地面が熱く、遠くの道には陽炎が見えるようなこの暑い日でも、律はお構いなしに楽しげに歩いていく。さっき買ったメロンパンを齧りながら、また地図アプリを開く。今回はちゃんと神社に向かえているようだ。
パンを頬張りながら、まるで小学生の男子のように歩道と車道の間にひかれた白線の上を歩く。たまに少しよろめきながら進んでいく姿はどう見ても社会人の大人には見えない。
神社に向かう途中、広い庭のような場所があった。さぁっと抜ける風は切り揃えられた葉を揺らしていく。
地図アプリを再度開くと、ここは昔建物が立っていた場所みたいだ。立て看板にも『政庁跡地』と書かれている。立て看板の反対側には小さな博物館も建っていたが、それよりもこの真っ青に広がった景色を律は見たかった。
「んー!空がひらけていて風が気持ちいい!」
ゆっくり整備された道を歩いていくと、そこには柱が立っていたとされる石畳が並んでいた。辺りを見渡すと広い間隔で石畳が並んでいて、とても大きな建物が立っていたんだと気付かされる。もう何百年も前のことなのに圧倒される、歴史とは偉大なものだと律は思う。
今歩いてきた道を振り返り見てみると、少し高台になっているからだろうか、すっと街を見渡しているような感覚がする。見えるものは違えど、何百年も前のお偉いさんも見ていた景色なんだと思うと律は胸を張り、顔を上げた。
真っ青な空と緑の草木が律を覆う。夏の暑さも和らぐようだ。
「おっと、こんなにゆっくりしている場合じゃなかった」
律はくるっと反対を向いて目的時の神社へと向かう。
そこには鮮やかな朱色の鳥居が立を待っていた。