表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
律の生活覗いてみませんか?  作者: 夏蝶(ほたる)
2/7

いつもの朝

 律の朝は、ちょっとだけ早い。

 決して日の出と一緒に起きるなんてことはないが、毎朝決まって7時半。会社勤めの人からすれば、遅い方かもしれない。のんびりアラームと一緒に起きて、カーテンを開け、ちょっと目を細める。窓の外では、遠くの方で蝉が鳴いているような気がするような静かな時間帯。

 ベットから起き上がり、うんと伸びをしてからキッチンへ向かう。

「今日は何にしようかなぁ」なんて独り言を言いながら律は冷蔵庫を開け、中を覗く。特に何も入っていない冷蔵庫を眺めながら、朝ごはんの支度を始める。数日前に買った食パンをトースターに入れ、冷蔵庫に唯一入っていた卵とベーコンをフライパンに落とす。ちょっとだけ楽しくなってきたのか、鼻歌交じりにコーヒー豆をミルに入れ、ガリガリと削り始めた。

 律は、この時間が一番好きだ。夏の朝、ちょっと静かな時間帯にコーヒー豆を削る音、パンの焼ける香ばしい匂い。おっと、コーヒーを入れるのにお湯を沸かしていなかった様子。あわてて、やかんに水を入れ、火にかける。「危なかったぁ」なんて言いながら、まだ削り終わってないコーヒー豆を削る。

 パンを焼いていたトースターが金属をぶつけたようなチンっという音で律を呼ぶ。ルンルンでトースターの前に皿を持っていき、あちちと言いながらほんのり狐色に色づいた食パンを皿に乗せた。流れるようにコンロの近くに皿を持っていいて、食パンの上にベーコンと目玉焼きを乗せる。

「さぁ、おまちかねのコーヒータイムですよ」

 律は一人でニヤニヤしながら、挽いたコーヒー豆をドリッパーの中に入れた。ペーパーフィルターも忘れずに。上からそっとお湯を注いで、静かにコーヒー豆を蒸らす。このたった30秒がコーヒーを美味しくする秘訣なんだと律は思っている。ほんのり豆がドーム状に膨らんだのを見るたびに、「今日のコーヒーは美味しいぞ」なんてひとりで呟くのだ。ゆっくりとお湯を足していき、サーバーに熱々のコーヒーが出来上がっていく。夏でも、コーヒーをドリップで入れる律はこだわりがあると見せかけて、単純に水出しコーヒーいわゆるコールドブリューコーヒーは一度にたくさん出来上がるので1日で飲み終わらなくて、何度もダメにしてしまったことがあるだけである。冷蔵庫に入れておけば大丈夫だと何日も同じコーヒーを飲んでお腹を壊してしてしまってから、律は毎朝2杯分だけコーヒーを入れている。

「今日のコーヒーも美味しいぞ」

 マグカップにたくさんの氷を入れて、コーヒーをカップに注ぐ。カランと氷が溶ける音とコーヒーがカップに注がれる音。

「夏にホットで楽しめるほど、律はコーヒーを嗜んではいない」

 と本人は言っているが、単純猫舌なのだ。そんなことはさておき、今日も律の朝が始まる。


「今日はどこへ行こうか」


 サクッとパンを一口齧りながら、律は外を眺める。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ