いつもの朝
律の朝は、ちょっとだけ早い。
決して日の出と一緒に起きるなんてことはないが、毎朝決まって7時半。会社勤めの人からすれば、遅い方かもしれない。のんびりアラームと一緒に起きて、カーテンを開け、ちょっと目を細める。窓の外では、遠くの方で蝉が鳴いているような気がするような静かな時間帯。
ベットから起き上がり、うんと伸びをしてからキッチンへ向かう。
「今日は何にしようかなぁ」なんて独り言を言いながら律は冷蔵庫を開け、中を覗く。特に何も入っていない冷蔵庫を眺めながら、朝ごはんの支度を始める。数日前に買った食パンをトースターに入れ、冷蔵庫に唯一入っていた卵とベーコンをフライパンに落とす。ちょっとだけ楽しくなってきたのか、鼻歌交じりにコーヒー豆をミルに入れ、ガリガリと削り始めた。
律は、この時間が一番好きだ。夏の朝、ちょっと静かな時間帯にコーヒー豆を削る音、パンの焼ける香ばしい匂い。おっと、コーヒーを入れるのにお湯を沸かしていなかった様子。あわてて、やかんに水を入れ、火にかける。「危なかったぁ」なんて言いながら、まだ削り終わってないコーヒー豆を削る。
パンを焼いていたトースターが金属をぶつけたようなチンっという音で律を呼ぶ。ルンルンでトースターの前に皿を持っていき、あちちと言いながらほんのり狐色に色づいた食パンを皿に乗せた。流れるようにコンロの近くに皿を持っていいて、食パンの上にベーコンと目玉焼きを乗せる。
「さぁ、おまちかねのコーヒータイムですよ」
律は一人でニヤニヤしながら、挽いたコーヒー豆をドリッパーの中に入れた。ペーパーフィルターも忘れずに。上からそっとお湯を注いで、静かにコーヒー豆を蒸らす。このたった30秒がコーヒーを美味しくする秘訣なんだと律は思っている。ほんのり豆がドーム状に膨らんだのを見るたびに、「今日のコーヒーは美味しいぞ」なんてひとりで呟くのだ。ゆっくりとお湯を足していき、サーバーに熱々のコーヒーが出来上がっていく。夏でも、コーヒーをドリップで入れる律はこだわりがあると見せかけて、単純に水出しコーヒーいわゆるコールドブリューコーヒーは一度にたくさん出来上がるので1日で飲み終わらなくて、何度もダメにしてしまったことがあるだけである。冷蔵庫に入れておけば大丈夫だと何日も同じコーヒーを飲んでお腹を壊してしてしまってから、律は毎朝2杯分だけコーヒーを入れている。
「今日のコーヒーも美味しいぞ」
マグカップにたくさんの氷を入れて、コーヒーをカップに注ぐ。カランと氷が溶ける音とコーヒーがカップに注がれる音。
「夏にホットで楽しめるほど、律はコーヒーを嗜んではいない」
と本人は言っているが、単純猫舌なのだ。そんなことはさておき、今日も律の朝が始まる。
「今日はどこへ行こうか」
サクッとパンを一口齧りながら、律は外を眺める。