小鳥遊家襲撃事件
第6章 小鳥遊家襲撃事件
時は数時間前に戻る。
小鳥遊家では稽古の真っ最中だった。
「これはやばいメロン」
G拳など気力を持ちながら打つ格闘技拳法だった。
その様子をみていたのはサターン帝国・闇のカメレメロンだった。
カメレメロンは偵察にはうってつけの能力をもっていた。
透明化であるので、声さえばれなければ大丈夫なのである。
「弟よ、案ずるなメロロン、デビルズキラー様の力があればこのようなやつら屁でもないメロロン」
横に並んでいるのはカメレメロンの兄であるカメレマスクメロンである。
彼も同じく透明化能力をもっている。
「わかったメロン」
「時を待つメロロン」
小鳥遊家の生徒はそう多くはなかった。
昔は多くの生徒がいたが、時代の流れにより5人の生徒のみとなった。
もともと孤児である子供で、小鳥遊家が引き取っていた。
小鳥遊家流派を途絶えてはいけなかったからである。
小鳥遊家には、祖父、祖母、父、母、天音と4人の生徒である。
当時天音も稽古に励んでいた。
小鳥遊家の正式な子供は天音のみであった。
男の子の生徒が欲しかったのか、4人はほとんど男である。
「よしっ!今日はここまで!」
「「ありがとうございました!!」」
「よしっ!着替えたらご飯にしようか、天音。じいちゃんたち呼んできてくれ」
「あ、はい!」
父親としては稽古に参加してほしくなかった。
女の子としての道を選んでほしかったが、彼女の強い願いで一緒に稽古させていた。
「あの子には女の子らしく成長してほしかったんだが」
でも稽古している彼女には笑顔が見えていた。
「さて、ご飯だご飯!朱音~!今日はなんだ?」
「今日はから揚げよ」
小鳥遊宗司、小鳥遊朱音夫婦は仲良くから揚げを揚げては皿に盛りつけていた。
「食べ盛りだから、一瞬でなくなるね」
「あの4人もがっしりしてきたからな」
「天音も負けず食べるのよ」
「それはそれでどうなんだ」
「いいじゃない、男の子達に負けないくらい食べるんだって前、言ってたわよ」
「そうか」
あの4人を引き取って間もないころは、知らない子と交じってそわそわしていたが、時がたてば少しずつだけど、打ち解けているようでよかった。
でも最近年頃なのか、やはり男の子達となんでも一緒というわけにはいかなくなってきた。
「あの子も一応女の子なんだから、男の子と一緒にしちゃだめよ」
「わかってるさ、あいつら呼んでくる」
「ええ、お願いね」
食卓テーブルには次々とご飯やお味噌汁、から揚げ、サラダが並べられていた。
「ほう、今日はカレーかね」
「おじいさん、これはから揚げよ」
小鳥遊家のおじいさん、おばあさんである。
小鳥遊英二、小鳥遊トシ子は、自分の席にゆっくり座った。
最近物忘れが多いのか、ボケと突っ込みが多くなっていた。
「あれ?天音はどうしたんです?」
「ああ、なんか部屋で着替えてるよ」
どうやら胴着のまま呼びに行ったらしい。
「あの子も仕方ない子ね」
「年頃なんじゃよ、男目が覗いてなければいいがな」
「もう、あの子達はそんなことしませんって、多分」
そのころ男の子たち四人は、天音の着替えを覗いていた。
「やっぱ、天音の胸、小さくね」
「来年中学生であれかよ」
「姉ちゃん、まだあのパンツ履いてるよ」
「だめだ覗くだけでなんかむなしくなってきた」
めっちゃひどいことを言っていた4人だった。
彼らは孤児で施設に入っていたが、数年前この小鳥遊家に引き取られた。
現在、小鳥遊天音12歳小学6年生。
男の子たちは上から15歳、13歳、12歳、10歳である。
「飯食べに行こうぜ」
「だね、無駄な時間だった」
「あと数年後の成長を期待しよう」
「うん」
4人は食卓まで足を運んでいた。
「もう、覗くならばれないようにしてよね」
昔はあの4人は苦手だった。
今は、そうでもないけど。最近はなんか鬱陶しく思うこととか、一緒にはやだなと思うようになってきた。
「これが思春期ってやつかな」
自分で自覚している人も珍しいけど。
「これでいいかな」
最近は身だしなみも気にしている、稽古の後はできればお風呂に入りたいけど。
「ご飯が先なら仕方ないか」
天音も食卓まで向かった。
「天音!遅いぞ!」
父親の宗司は今にも瓶ビールを開けようとしていた。
「お父さんが早く飲みたいだけでしょ」
「でも姉ちゃん、おなかすいたよ」
「ごめんごめん、食べよか」
「そうね、みんな揃ったことだし」
「「いただきます」」
この家ではみんなが揃ってから食べる決まりになっている。
先ほどの母親の言う通り、から揚げはすぐなくなっていた。
「天音!そのから揚げは俺のだ!」
「私が先にとったんだけど!」
「目をつけてたのは俺だ!」
「ほら、じいちゃんのあげるから」
「じいちゃん、それ食べかけじゃん」
「いや、わしもうおなかいっぱいだもん」
「だもんって」
すこし引いている数人だった。
それでも最後は笑い声が絶えない食卓だった。
天音も笑っている。今この瞬間、家族で食べているご飯が好きだった。
「ごちそうさまでした~」
「食べたたべた~」
「私先にお風呂行くね」
「お!久しぶりにお父さんと入ろうか」
「それは遠慮します」
「ゲームしようぜ!」
「お!いいな!」
それぞれ思い思いにゆっくりしていた。
天音はお風呂に入っていた。
「ふう、さすがにここまで覗かないよね」
最近は覗かれることもあるので、警戒している。
「ま、大丈夫か」
天音はゆっくりお風呂に入っていると、外からガサガサという音が聞こえた。
「え?まさか外から?」
外から覗くつもりなのか、窓ガラスをあけるが、外には誰もいなかった。
そして自分が裸であることに気が付いて、すぐ湯船に戻った。
「危ない危ない、変態の思うつぼになるところだった」
でもこんな胸もない、拳法している体を見たい人なんているのだろうか。
いや、世の中にはロリコンという人種がいるからわからない。
「猫でもいたのかな」
その時天音は気にせずお風呂から上がった。
「お先~」
「はーい、ほら男の子たち!あなた!おじいちゃんたちも誰か入っちゃって~」
「はーい」
「なら私は部屋に戻るね」
天音は部屋に戻り、ゆっくりしながら宿題をしているといつの間にか眠ってしまっていた。
「今何時~?」
時計を探していると。
ドーーン!という凄まじい音が聞こえた。
「え?なに?」
天音はすぐ部屋から出ると母親である朱音が駆け出してこちらに向かっていた。
「天音!逃げて!こっち!」
天音はわけもわからず朱音に連れられ裏の倉庫に閉じ込められた。
「ここから出てきちゃだめよ!」と朱音は強く天音に対して今まで聞いたことのない声色で伝えた。
天音は何が起きたのかわからず頭が真っ白としていた。
「お母さん?どうしたの?なにがあったの?お母さんは?お母さんも隠れないの?」
「お母さんは大丈夫、あなたはそこでおとなしくしてなさい」
母親の朱音は倉庫の周りを確かめると倉庫のカギをゆっくりかけた。
「あの人たちはどうしたかしら...」
正直、朱音も状況は把握していなかった。宗司にいきなり天音を連れて逃げなさいと言われたが、おそらく先ほどの爆発と関係あるのだろう。
あの子達、男の子達のことも気になる。
おじいちゃんたちもどうしたのだろうか。
気になることがありすぎて、確かめに入られないけど、倉庫には天音もいる。
「倉庫には鍵もかけたし、大丈夫よね」
この倉庫はどんな災害にも負けないよう頑丈にできている。ちょっとやそっとで壊れるものではない。
「天音!お母さんはみんなの様子をみてくるから、そこにいなさい!」
「え?え?お母さん?」
「大丈夫、すぐ戻るから」
「う、うん」
そう告げると、朱音は家の中へと入っていった。
天音はというと、不安で仕方なかった。倉庫からは何も見えない。
ここでじっとしているほかなかった。
家の中では
「滅竜話武空5つ葉百人力舞月気斬」
ブシシャベリという怪人が家の中を破壊していた。
「やめてよ!家の中を壊さないで!」
「なんなんだよお前!」
13歳と12歳の男の子は、ブシシャベリに向かい叫んでいた。
「ムム!これはこれは、子供でござるか、これはサターン帝国・闇の仕事の一環でござって、貴様ら子供にはようはないでござる、いや待てよここにいるということは一緒に破壊すべきでござろうか、いやでも子供も切らねばならないのであろうか」
「話が長い」
突っ込みを入れたのはコブラアイスという、コブラと氷の融合怪人である。
見た目は蛇そのものであり、氷の能力を使う。
「さ、さむいよ兄ちゃん」
「部屋が凍ってる!?」
「今、俺が凍らせた」
「ムム!それでは先ほど切った拙者の立場とはどうなってるのでござる?」
「あ、すまん」
「なんなのこの人たち...」
「おじさんたち、かえっ」と12歳の子が言おうとするとドスッと鈍い音がした。
いきなり倒れた弟を見て13歳の子は、震えた。
「ど、どうした!大丈夫か!」
13歳の子は12歳の子の背中を触ると手には赤い血が付いていた。
「えっ...」
13歳の子が恐る恐る振り返ると、そこにはアリの怪人がそこにいた。
「お前ら、遊びにきたんじゃないんだぞ、こいつらは全員処刑だ」
「ア、アリ大佐殿!すまぬ、つい話癖が出てしまい、拙者は子供も処せぬと思わなかったもので」
「言い訳するな、それにコブラアイス、氷漬けはよせ、冬眠するやつがでてくるだろ」
「ああ、大佐が」
「あ?」
「すみません」
「さっさとやれ」とアリ大佐は12歳の子を蹴り飛ばし、自身の刀で12歳の子の首をはねた。
「ひっ...」と13歳の子は、全身の血の気が引いてしまい、震えが止まらずただ下の子が殺されている様をみるしかできなかった。
「そいつはお前らがやれ」
「拙者、ここまで残酷にはできぬな」
「時間がないんだ、やれ」
「御意」
そういうとアリ大佐はその場から去っていった。
上空ではコウモリDJという飛行能力を持つ怪人、監視役であったカメレメロン兄弟が超音波で家の周りを攻撃しており、ゴムナルとゴールドという怪人が家を破壊していた。
「ちょっちょっちょちょちょ~、コウモリDJだYO!家破壊しちょ~」
「俺様にかかればこんな家は余裕だな、ゴムゴムベリーボンバー」
「消えるメロン!」
「消すでメロロン!」
家を破壊している一行を他所に。
食卓内で戦闘が始まっていた。
「お前たち!よくも俺の子供を殺したな!」
宗司は怒鳴る後ろには15歳と10歳の子が、血を噴き出して倒れていた。
「なっしーーーーー、俺じゃないなっしーーーーーー!」
「アップルーーーーーー、りんご違いアップルーーーーーー」
「問答無用!」と宗司は拳に気力をためた。
「小鳥遊家流!G拳!!」
宗司は、なしお面とりんごお面に向かいG拳を放った。
「なっしーーーーーーーーー」
「あっぽおおおおおおおおおおおお」
と2体は屋根を突き破り、どこかへ吹き飛んでいった。
するとどこからとも無く声が聞こえた。
「やはりあいつらは失敗作か...」
「誰だ!」
「俺か?俺は子供を殺した主犯者だ」
「お前か」と宗司は拳を構え、声の主に向かい、睨め付けた。
「何が目的だ、子供たちが何をした」
声の主は宗司のところまで歩みだす。
「何もしてないさ、俺たちの計画の邪魔なものは全て排除するだけだ、それが例え子供でも」
「計画?一体、その計画とこの家となんのかかわりがあるんだ」
「かかわり?フフフフ、まあ教えてやろうか?その亡骸のために、特別にな。俺たちはサターン帝国・闇。俺はその首領であり、世界を手に入れる存在、デビルズキラー。俺たちはこの世界を手に入れ、俺たちの思う通りに世界を作り替える。そのためには俺たちの脅威になるものは全て排除する、貴様らのその小鳥遊家流の拳法には古来の怪物、永遠の影を葬ったと書物があるが。俺その封印と解くカギを求めに来た。」
「永遠の影だと、そんな大昔の話。持ち出されてもな」
宗司は懐からキーホルダーを取り出した。
「ここからが本番だ。メイクアップ!」
宗司の周りが光り、袴姿に変わった。
「それが小鳥遊家の戦闘服か」
廊下から何者かが走ってくる音がした。
「あなた!」と朱音がはしってきた。
「朱音!天音は!?」
「大丈夫よっ」
朱音は宗司の後ろで死んでいる15歳と10歳の子たちをみて絶句した。
「許せないっ!許せない!メイクアップ!」
朱音の周りが光、巫女服へと変わった。
「メイドG(巫女)フォーム」
「メイドG(袴)フォーム」
「メイドG?なんだそれは」
「知らないか、小鳥遊家は代々メイド、つまりMAID、力であるGを作り出す能力があるんでね。この服は想像力から作り出したものだ」
「メイクGじゃないのか?」
「ご先祖がメイドさん好きでそうなったんだ」
「天音もそれで勘違いして修行に励んでるんだけどね」
「ボス!永遠の影、エターナルシャドウの手がかりを見つけでしょ!」
「ビワハナシか、よくやった、お前は帰れ」
「今ですか?」
「ああ、今でしょ!」
「それ私のセリフでしょ!」
ビワとスーツを着た怪人はそのまま逃げだした。
「これで世界は俺のものだ」
「それはどうかな」
「私たち舐めないでよね」
「いいだろう、相手になってやる」
宗司と朱音は拳に力をこめた。
「小鳥遊家流、G拳!」
「メイド流、ライジングインパクト!」
宗司はデビルズキラーに殴り掛かるが、デビルズキラーはよけ、宗司の腹に殴りつけ、吹っ飛ばした。
だが、朱音のライジングインパクトでデビルズキラーは吹っ飛んだ。
「これは効いたぞ、女!お前、それ小鳥遊家流か?」
「ええ、一応ね、子供から教えてもらったけど」
「子供ね、おいっ!」
デビルズキラーは叫ぶと三体の怪人がやってきた。
サソリの怪人であるサソリボルト。
ゴキブリとリンゴの怪人、ゴキブリンゴ。
本と鳥とヒゲの怪人、ホントリヒゲ。
三体の怪人がやってきた。
「メースイマと他の奴はどうした」
「痺れるぜ、爺どもを殲滅しに向かってる」
「カサカサカサ、走ってるのもいるけど」
「あとはNO軍団製造で留守番でしたね」
「あのチーターと石。やはりあいつらは失敗か」
「アリ大佐が向かってるぜ!バリバリな」
「そうか、お前ら、他の子供を殺してこい!」
「そいつは痺れるな、毒で一発だぜ」
「カサカサカサ、いく」
「私のヒゲレーダーで見つけてやりましょうかね」
3体はその場を離れた。
「朱音!じいちゃんたちを頼んだ、俺はこいつを倒す!」
「わかったわ!」
朱音は3体を追いかけた。
「どうやらお前しかまともなやつがいないようだな」
「失敗作が多いだけだ、魔王皇帝閣下産がやはり素晴らしいだけか、皮肉だがな」
「お前より上がいるのか」
「上?違うな、敵が多いだけだ」
「そりゃ、よかったな」
宗司はG拳を連続で繰り出した。
「さっきの女の技は使わないのか」
「あいにく、基本型しかできないんでな。師範をしてるけど、不器用なもので応用は覚えられなかった、けどな。基本型を強くすることはできるんでな!」
G拳の力を打つたびにパワーが上がっていった。
「やはり脅威だな、潰しがいがあるもんだ」
「お互いさまにな、お前は俺が倒してやる」
何発もG拳がデビルズキラーに当たる。
「そろそろ、お前も限界なんじゃないか、デビルズキラー」
「そうだな」と宗司の手首を掴んだ。
「なっ!」と引き離そうとしても離れないほど、凄まじい力だった。
「我慢するのも限界だな」
デビルズキラーは片方の手に力をこめる。
「これがお前の子供を葬った力だ、キラーズデストロイア」
デビルズキラーは手から禍々しいエネルギー波を宗司に放った。
エネルギー派は宗司の体を貫き、家の天井まで貫き、上から屋根などの木片が崩れてきた。
その木片は亡き子供たちの上にのしかかった。
「ぐっは!」
宗司は倒れこみ、変身も解かれていた。キーホルダーは破壊され粉々に砕かれており、これ以上変身することは不可能だった。
「これが俺の力だ。貴様も所詮は人間か、脅威となる域ではなかったか」
「ま、まだだ」
「キラーズデストロイア」デビルズキラーはエネルギー派を宗司の足に放つ。
「うっ!ぐっ!」
宗司はたちまち血を吐き出し、足を触るが、感触がなかった。
宗司の足は先ほどの攻撃で、切断されてしまっていた。
宗司はこの時、自分の死を意識してしまった。
恐ろしい、人生で一番の恐怖を味わっていた。
このまま死んでは朱音や、天音、他の子供たち、じいちゃんばあちゃんも死んでしまう。
ここで負けてはいけないという信念で立ち上がった。
「お前は俺が倒す」
「片足のお前に何ができる」
「俺には守る家族がいる、例えそれが亡き家族の弔いのためであっても、俺が倒す!」
「めちゃくちゃだが、俺はそういうの好きだぜ」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
宗司は拳に今までにないくらい力を込めた。
「面白い」
デビルズキラーも拳を握りしめ、力をこめる。
「これで終わりだ!小鳥遊家流G拳!」
「キラーズフィスト!」
2人の拳がお互いの体に当たった。
「この攻撃効いたぜ、さすが小鳥遊家だな。だが」
デビルズキラーの攻撃は宗司の心臓に貫通していた。
「あ、あ、あ、あ、」
デビルズキラーは拳を引っこ抜き、宗司は崩れるように倒れた。
「楽しかったぜ宗司、後はお前の家族を殺すから安心しろ」
「ううっ」
宗司は涙ながら声を放とうとするが、声が出なかった。
体から大量の血が流れだしており、もう動きこともできなかった。
「せめて死ぬところまではいてやるよ」
「お、お、まえは、い...つか、」
「もうしゃべらないほうがいいぞ、死ぬぞ、すぐに」
「お前はいつか!誰かが脅威となる存在が現れる、そいつがお前を必ず倒す!」
「他人任せか、面白い、それを楽しみにしてる」
宗司は、先ほど発した言葉を最後に息をひきとった。
宗司は最後に家族の安全を祈った。
「死んだか、あとはどうなったかな」
じいちゃんばあちゃんはメースイマという羊と睡眠能力の怪人により眠らされていた。
「眠りなさい、永遠に」
「これは痺れるな、メースイマ。あとは任せな」
通りかかったサソリボルトは尻尾を取り出すと、先端をじいちゃんの体に突き刺し、毒を注入した。
ばあちゃんにも同様に。
「これで任務完了だぜ」
「さすがですね。私は聖書でも読みましょう」
「怒られるぜ」
「私にはそれはないのです」
そのころ朱音は2体の怪人、ホントリヒゲとゴキブリンゴを追っていた。
「メイドG流!ライジングインパクト!インパクト!」
その技は体力を使うため何発もうってるため、徐々に差が離れていった。
「もうだめ、追いつけない」
家も攻撃されてるため、徐々に家が崩れ居てる音がする、攻撃されている。
「煙くさい」
どこかが焼かれている。家族の安否も心配だ。
朱音は追っていた2体を見失ってしまった。
「どこにいったの?」
朱音は子供部屋までいくと
「なんてことだ・・・なんてことだ・・・」
朱音が見たのは、13歳の子と12歳の子が死んでいる姿だった。
13歳の子は氷漬けでバラバラになっており。
12歳の子は首から下がなく、近くに生首が横たわっていた。
吐き気を催してしまい、口からゲロをぶちまけてしまった。
「よくも、よくも私の子供たちを」
天音は大丈夫なのだろうか、宗司の安否も心配だ。
うずくまっていると声がした。
「拙者はやはり子供は切れぬでござる」
「氷漬けでよかっただろ」
「さすがでござるな」
「カサカサカサ、ここにいたのか」
「ほほう、ここも崩壊寸前ですな」
どうやら追っていたやつらと子供を殺したやつが合流したようだった。
一体何体の怪人がこの家にいるのだろう。
あんなふざけた怪人たちのくせに、やることは残酷だ。
「私が、あいつら全員殺してやる」
朱音は走り出し、4体向かって攻撃を放った。
「メイド流!ライジングインパクト!」
攻撃はゴキブリンゴに当たった。
「うおおお、いってえな」
当たったけど、急所を外してしまい、攻撃をかすめた。
ゴキブリの怪人だけあって、タフだった。
ゴキブリの怪人は怖がったのか隙間に逃げ出した。
「あっ!まって!」
「おなごよ、先ほどの攻撃見事でござった!」
「はあ?誰よ、あんたも殺してやる!」
「拙者何もしてないでござるよ」
「問答無用!メイド流G拳!」
朱音の攻撃はブシシャベリに当たった。
「痛いでござる」
「うるさい!子供たちはそれ以上に痛かったんだから!死ね死ね死ね!」
朱音は怒りに任せてG拳を何発もブシシャベリに当て、吹っ飛ばした。
「やられてるな」
「情けないですね」
「次はあなたたち!」
朱音はコブラアイスとホントリヒゲに向かって、G拳を繰り出した。
だが、
「当たらない!?」
「一応蛇なんで、交わすことは可能だ」
コブラアイスはG拳を蛇のように細くなり、ひらりと交わした。
「物理的な攻撃はすべてよけることができる」
「なっ!」
たじろぐ朱音の足元も氷で覆われていた。
「氷!」
「氷能力で足元を凍らせてもらった」
「私まで凍らせることないでしょ」
ホントリヒゲまで氷で足が固まってしまっていた。
「いてて、拙者は子供はやってないでござるのに、痛いでござるよ」
ブシシャベリがボロボロになって戻ってきた。
「怒ったでござるよ、空気斬り!」
ブシシャベリの攻撃は周囲の空気を切るようにして朱音を切った。
朱音の腕に切り傷ができ血が流れた。
「痛いっ」
血がたらたらと床をに染みる。
だが
「お前、氷漬けを空気で切ったら、足元まで切れてるよ」
「へっ?」
ブシシャベリは周囲をみると、空気斬りで切った後は、朱音の足元に氷がなくなっていた。
「もしかしていい怪人?」
「拙者としたことが!」
「あいつただのバカだろ」
「私もそう思う」
コブラアイスとホントリヒゲはともに頷いた。
「なんかわからないけど、今だ!」
朱音は力を拳にためた。
「メイド流!ライジングインパクト!」
3体に向けて攻撃すると3体は外まで吹っ飛んでいった。
「やはり拙者はいい人なのか?」
「馬鹿なだけだ」
「そうそう」
吹っ飛ばされながら、3体は壊れていく家を見た。
「やるな、あいつら」
「拙者たちも加わろうぞ」
地面に落ちた3体は家を壊しているやつらと合流した。
朱音は、3体と吹っ飛ばした後、亡き子供たちにタオルをかけ、先を急いだ。
祖父母の寝室に向かうと、息をひきとった後で、怪人の姿はなかった。
「遅かった...」
朱音は、祖父母の脈を図るが既に遅かった。
「宗司っ!」
天音も心配だったが、宗司のことも心配になった。
朱音は宗司のいた食卓まで向かうが、瓦礫で覆われていた。
「なにがあったの?」
瓦礫をどけるが、目の前には心臓を貫かれ、周りには血を流して倒れている宗司の亡き姿がいた。
「そんな、宗司!!いやああああああああああああああああ」
宗司を抱きかかえるが、すでにもう生気はなかった。
あとは倉庫で隠れている天音だけだった。
「天音だけでも」
朱音は天音のいる倉庫へ向かった。
だが、デビルズキラーの放つ、キラーズデストロイアが家を破壊していた。
その攻撃が朱音の体に当たってしまった。
変身解除となってしまった朱音は宗司のそばで倒れてしまった。
「ぐっ!天音,,,」
早く天音のところに行かないとと思った。
朱音は足を引きずりながら天音のいる倉庫まで向かった。
「今行くからね」
デビルズキラー一行は、外側から攻撃を仕掛けていた。
さすがに爆発音で周囲の人が出てくるかと思いきや、カメレメロン、カメレマスクメロン、コウモリDJの超音波でその音をかき消していた。
「燃やしてしまえ、すべて。必要なものは手に入った。死体残らず全部燃やせ」
「俺にかかれば余裕よ、OH!MY!ゴムゴムベリーボンバー!」
ゴムナルというナルシスト怪人はゴムという文字を放ち家を破壊しながら燃やしていた。
家は原型なく、人間がいることが不可能な状態となってしまった。
町でも有数の広さを放つ小鳥遊家の立派な屋敷は見るも無残な姿へと変えてしまった。
その時間10分もなかった。
朱音は天音のいる倉庫までたどり着く。
倉庫を開けると、天音は奥で震えながら隠れていた。
「天音よかった無事で」
「お母さん!足から血がでてるよ!お父さんは?おじいちゃんたちは!?」
朱音は、家族の亡骸を思い出し、震えながら天音に何があったのか伝えた。
「そんな...」
天音はショックのあまり、その場で倒れこんでしまった。
「天音!ごめんごめんごめん」
自分自身も許せなかった、子供たちを守れなかったこと、家族を守れなかったこと。
せめて天音だけでも。
すると誰かが近づいてくる気配がした。
感じ方だと先ほどのデビルズキラーだろうか。
「天音、あなただけでも逃げなさい!」
「お母さんは?」
「お母さんは大丈夫、後でかならず、追いつくから。この下に地下があるわ、これと通って逃げなさい!」
「いやだ!お母さんも逃げよう!」
「お母さんは、あの子達を見捨てられない、お母さんだもん、でもせめてあなただけでも生きなさい!大丈夫!きっとこれがあなたを守ってくれるわ」
朱音はそういうと天音にキーホルダー型変身アイテムである小鳩ちゃんを渡した。
「これって、メイドG?」
「いつか渡そうと思ってた。だから行きなさい!早く!」
朱音は地下に続く道に向かって天音を放り投げた。
「お母さん!絶対絶対だよ!」
「大丈夫よ!お母さん強いもの!」
天音はそれを最後に聞き、地下道を走った。
「さてとこれで最後の変身か、よっし、メイクアップ!」
朱音は静かにメイドG(巫女)フォームに変身した。
頑丈であった倉庫はデビルズキラーの攻撃で跡形もなく崩れていった。
朱音は目の前にいる怪人をにらめつけた。
「よくも主人をやってくれたわね」
「誰だ貴様」
「あら?ボスじゃないのね」
朱音の前にいたのは、デビルズキラーではなくアリ大佐だった。
「デビルズキラー様は先ほどその倉庫を壊した後、基地までお戻りになった」
周囲をみると火事になった我が家の周りにはもう怪人は目の前の一体のみだった。
「用が済んだら退散だなんて、とんだ組織ね」
「ただの後処理に大勢はいらないのでな、俺一人で十分だ」
「舐められたものね、やってやろうじゃない!」
「相手になってやろう」
「メイド流!ライジングインパクト!」
朱音は力の限り、アリ大佐に向かって攻撃した。
だが、朱音の攻撃は当たったが、彼女の体には刀が突き刺さっていた。
「惜しかったが、これでおしまいだ」
刀は朱音の体から離れ、朱音は倒れこんでしまった。
アリ大佐はもう一刺し背中に突き刺した。
「うっ!」
巫女の白い服は血で染みて、赤くなってしまった。
「まだ死なぬか」
「死ねない、それが私の最後の闘いなんだから」
「そうか」
アリ大佐は刀を捨て、火事で焼けている家まで放り投げた。
朱音の変身は解け、焼けている家からでようとするが、倉庫は崩れ、地下道までの道は閉ざされたしまった。
「あいつはどうやら天音の存在を知らないようね、よかった」
これで天音だけでも逃げてくれる。
アリ大佐は任務完了の確認をして、どこかに逃げていった。
超音波も切れていたのか、周りから野次馬と警察、救急車と消防車が来るサイレンが聞こえた。
朱音は、そのサイレンが聞こえたのを最後に息をひきとった。
投げ飛ばされた先にいたのは、亡き夫の姿だった。
ブナパルトマンが到着したのはその10分後だった。
天音は地下道の先で警察が発見し、保護していた。
保護された後は、家族の亡骸を見て、放心状態で話す気はなかった。
ブナパルトマンの言葉を最後に。
キーホルダーを握りしめ、母親の放った「化けものによって家族が殺された」という真実。
天音はかならずその怪人たちを倒すことを決意するのだった。
その後、新聞から謎の事件とし、襲撃された痕跡から、「小鳥遊家襲撃事件」という未解決事件となってしまった。
魔王皇帝閣下はそれを後で知り、止められなかったという後悔を得てしまうのだった。




