戦いの後
第15章 戦いの後
エターナルシャドウ撃破後
街は崩壊した姿で朝を迎えた。
今回の騒動で、化け物の映像とそれに群がる人々
逃げ惑う人々の映像の中には、ぽつんとぎゃわれらが戦闘していた映像が報道された。
現在、この怪物が出現したことに関して何も書籍やデータに記されておらず
一部では一定地域が謎のオーラを放っていたとかなんとか
専門家なども謎の不明生命体としか判断されなかった。
それもそのはず、そのデータは小鳥遊家しか所有していなかったのだから。
そしてそれに立ち向かった謎の集団については特に何も言われなかった。
負傷した人の証言も取れず、メイド服、昆虫怪人、赤い男、ペンギンと鳥をつけた白い仮面。
頭おかしくなったのか?とおもわざる得ないものであるから誰も口にできなかったのかもしれない。
「どうしてあんなにボロボロになってまで戦ったのに、何もなしだよ」
部屋で寝ころびながらネットニュースを見ながらつぶやくぎゃわれ。
「まあ正体不明の謎のヒーローってSNSで持ち切りなんだからいいじゃねえか」
フォローするスマホをいじるイカ息子だったが、なんのフォローにもなっていない。
「やっぱり走ったからですかね」
天音はお茶を飲みながら部屋でくつろいでいた。
「しかし、なんで写真で一番でかく乗ってるのが、ガジンとミスターBなんだよ」
突っ込むぎゃわれにスマホをのぞき込むガジンとミスターB。
あの時横一列で走った時、一番目立っていたのが二人だったのだから仕方ない。
「俺ドアップすごいじょーー」
「当然だ」
自慢気な顔をする二人にムッとするぎゃわれだった。
「でもあれだよな、転送でこっちに帰ってきたとはいえ、あまり警察とか報道で我らが言われないのってあいつがいたからなのかな?」
フラグたんはクワガタ幹部を見てそう言った。
エターナルシャドウと戦闘時、何度か避難難民者が写真や動画を撮っていたものもいたが、クワガタ幹部の体質のせいなのか、よく映ってなかった(主にサターン帝国怪人が)
「俺の能力?体質のおかげか?」
もはやチームの切り札的存在なんじゃないのとも思えるクワガタ幹部である。
疲労や怪我もしているだろうに、ぎゃわれの部屋はにぎやかでがやがやしていた。
だが、一人誰かいないことにぎゃわれは気づいた。
「そういりゃ、ブナパルトマン、佐藤太郎はどこにいった?」
「転送に省かれたんじゃね」笑うイカ息子。
あの転送の後、いつまで寝ていたのか、いつの間にか朝になっていた。
ぎゃわれは痛い体を動かし、立ち上がった。
「そこらへん探してくる」
ぎゃわれはそういうと、軽くジャケットを羽織って外に出た。
辺りと見回すとそれっぽい人物が遠くに立っていた。
周りが見渡せる展望台みたいなところに彼はいた。
「こんなところで何やってんるん」
「ぎゃわれか、いや、いろいろ思ってしまってさ」
遠くを見渡す佐藤太郎に、哀愁すら感じるぎゃわれだった。
「なんだ、あれだ、これからだよ」と佐藤太郎はぎゃわれの肩をぽんと叩いた。
「どういうこと?」
一人の世界に浸っていた佐藤に対し、意味の分からない言葉にぎゃわれははてな顔をした。
「永遠の影はあくまでサターン帝国・闇の一つの作戦だってこと、あいつらの脅威は消えちゃいない」
「いいこと言おうとしてる?」
「それいっちゃ雰囲気ぶち壊しだろ」
佐藤は笑い、ぎゃわれもつられて笑う。
「でも、俺はお前らに比べればまだまだだなーって、気づかされた」
「なんで?」
そういうと佐藤はまた景色を見はじめ、握っていたブナパルト鉱石を見つめる。
「俺はこのブナパルト鉱石で戦うことしかできなかったしな、だからもっとお前らの役に立てるよう技術を磨きたいそう思えたんだ」
「あー、つまり、戦力的には難しいから、サポート役に徹しようってこと?」
ぐさっと刺さる言葉にたじろぐ佐藤。
「そんなところだな」
佐藤太郎的にもこの戦いでの疲労が他の面々に比べて大きく感じたようだった。
今の自分、過去にEX部隊を封印して、守る側であったぎゃわれ、天音、サターン帝国の急成長をみて、追い越されたというか、いろいろ修羅場を乗り越えてきたみんなをみて、自分も成長したくなったとも思えたのかもしれない。
「俺、もう一度ブナパルト鉱石と研究に没頭しようかと思う」
佐藤太郎はぎゃわれに対し、宣言した。
「そうか」
ぎゃわれは優しく微笑んだ。
「だから、とりあえずサターン帝国・闇との戦いはお前らに任せたよ」
そういうと佐藤は、展望台を降りて、研究室に戻ろうとする。
「一人で背負いこむなよ」
「わかってるって、大丈夫だ、俺だってエターナルシャドウを倒した一人なんだから、ぎゃわれたちに負けないくらい、強い戦士になってみせるさ」
その後ろ背中はこれからすごい人物になっていく、そう予感したぎゃわれだった。
「でも、体きついからとりあえず病院いくわ」
方向を病院に変えた佐藤をみて、ぎゃわれは笑う。
「またな、ブナパルトマン」
ぎゃわれは小さくそうつぶやくと、ぎゃわれも部屋に戻ることにした。
佐藤との別れは、別れではなく、これからの戦いに備えるための準備運動、そうとらえることにした。
その分かれ道は封印した時と違う、なんだかうれしくも思う帰り道であった。
「ただいま」
ぎゃわれが帰ると。
天音はいつの間にか帰っており、ポル、フラグたん、サターン帝国の面々は眠っていた。
「疲れたもんな、俺も休むか」
先ほども寝ていたはずなのに、とてつもない疲れなのか、また眠くなってきていた。
「これからも頼むな」
ぎゃわれはポルとフラグたんの頭をなで、イカ息子らを見ながら再び眠りについた。
―サターン帝国・闇の基地―
「これで、これで完全に力が戻った」
デビルズキラーとアリ大佐は石板状態から脱却し、完全復活した体を取り戻した。
「ですが多くの仲間が失われてしまった」
ぎゃわれらに倒されたのは、デビルズキラーがサターン帝国から脱走した後、ひなのプログラムを元に作り出した怪人たち。
アリ大佐を筆頭に、モチラッパー、ゴールド、ゴキブリンゴ、カメレメロン、カメレマスクメロン、ビワハヤシ、なしお面、りんごお面、ホントリヒゲ、メースイマー、ゴムナル、ブシシャベリ、サソリボルト、チーターダッシュ、コウモリDJ、マシロ、コブラアイスと様々な怪人を作り出してきた。
「問題ない、もう一度生み出せばいい、それに」
デビルズキラーは戻ってきているひなを見ながら、奥にいる保管ポットを見る。
「最強種族から生み出した怪物がまだいるからな」
そういうと、デビルズキラーはポットのスイッチを落とし、起動のコマンドを入力した。
「目覚めよ、グライトよ。その力を俺のために使え」
保管ポットから排出されたグライトは、生気を取り戻したかのようにするりと起き上がっていく。
「ここは...」
グライトはデビルズキラーとアリ大佐をきょろきょろとみる。
「これが、グライトですか」
「ああ、最強最悪の怪人だ」
紹介するデビルズキラーだったが、ぼーっとして動かないグライト
「太陽が見えないな」
グライトは天井を確認すると、だるい感じで保管ポットに戻っていく。
「俺が必要になったら呼べ、それ以外は起こさないでくれ」
「ああ、好きにしろ」
そういうと再び保管ポットのスイッチを入れ、グライトは眠りについた。
「グライト以外にも怪人を作らねばならない、忙しくなるぞ」
「それはそれは、楽しみですね」
デビルズキラーはアリ大佐を連れ、怪人作成の部屋に向かう。
「だが、その前に」
デビルズキラーはひなが帰還している転送部屋へと足を運んだ。
「ここは、一号の部屋」
「石板化の影響で自由にさせすぎた」
部屋に入るとオーバーヒート状態を鎮静化させていたひながいた。
「これからは俺の大事な駒として、この道具を使う」
「道具ですか」
アリ大佐は見る。アンドロイド、ただの機械であり転送するための道具でしかない。
「魔王皇帝閣下が作った最高傑作だ、利用価値は大いにある。それにやつらは永遠の影の事件で結束が強くなったと思われる、必ずやつらは俺たちに歯向かってくる、その時のための人質としてこいつは使えるんだ」
デビルズキラーは転送部屋の奥にある、保管ポットをもってくる。
「もしかして」
「ああ、ただの転送マシンとして、このポットに入ってもらう。転送式で逃げられないように」
転送式、聞きなれない言葉にアリ大佐は疑問に思う。
「転送式とは」
「転送式は、転送装置とは違い、こいつ自身の身体を転送できるチョボルム転送式、そして人や物を転送できるグレンマ転送式の二種類の転送式をもっている、これに加わり特殊な電子回路をもっている、光線技の使い手となれば、サターン帝国の中でも俺をも超える実力者ともいえる」
つまりはサターン帝国の切り札的存在でもあるひなの力はサターン帝国・闇の脅威ともいえる、それは小鳥遊家同様、ひなを利用しつつ、その脅威を封じ込めておくにすぎないことだった。
「こいつが二度と出ないため。転送だけのマシンだ」
保管ポットに収納され、ひなの意識は少しずつ途絶えていった。
「デビルズキラー様も悪い人だ」
「世界征服するためには、脅威や障害は取り除く、利用する、これが俺の流儀だ」
アリ大佐をみながらひなをみる。
「さて、怪人作成に向かうか」
「手伝います」
そういうと二人は怪人作成部屋へと向かっていった。
転送部屋のひなを残して。
(必ず、助けて...)とひなは保管ポットの中で途絶える意識の中、そう心の中で伝える。
サターン帝国の面々なのか、ぎゃわれなのかわからないが。
そして...
時は、永遠の影事件よりだいぶ前
ぎゃわれが部屋でメースイマーと戦った後くらい。
「雷で撃たれた人がいたらしいポルね」
ポルは新聞でその情報を得ていた。
それは、雨の日に突如不思議な色をした雷に撃たれた青年がいたという事件である。
その青年はしばらく昏睡状態で病院に入院していた。
そして、月日がたち、永遠の影事件。
「早く患者さんを避難させてください」
看護師さんらはエターナルシャドウの攻撃の中、病院が襲撃される前に患者さんを避難させていた。
「こちらの患者さんはどうしましょう」
「ベットで運んで救急車で避難させましょう」
「救急車の数が足りませんよ」
急いで避難準備させているが、歩ける患者はともかく、車いす、歩けない患者も多くいたため、なかなか順番に避難というわけにはいかなった。
「とにかく、ほかの患者を最優先で、救急車が空いたら搬送しましょう」
「わかりました」
看護師らは、そういうと青年を置き去りに、ほかの患者さんの避難へと向かう。
そんなとき、青年は昏睡状態から目を覚ました。
「ここは一体、病院?」
頭がずきっと痛み、自分に何があったのか確認する。
「確か雷に撃たれて」
そう手を見ると、手から電気が走るような感覚がした。
「電気?」
明らかに自身の身体がおかしいことに気づく。
「もしかして、電気が体からでている?」
体中からしびれるような感覚がする。それは生まれてから感じたことのない感覚だった。
「それにしては騒がしいな」
外を見ると真っ暗な空で、遠くで巨大な怪物が暴れまわっていた。
「あれは一体」
起き上がった青年を確認できたのか、近くにいた看護師さんがやってくる。
「起きられました?すみません、起きて早々申し訳ないのですが、体調チェックなどはできないんで、車いすで避難をお願いします」
「避難?いや歩いて行けるので、大丈夫ですよ」
「そ、そうですか?それでは避難お願いします」
ずさんな避難誘導だなと思いながら青年も誘導に従う。
外に出ると上空は真っ暗で今が昼なのか夜なのかわからない状態で黒い影がうようよしていた。
「この電気は雷の影響なのか?」
手からピリピリとしびれる感じが続く。
「危ない!!」
遠くから看護師さんはいうと青年に向かって黒い影の手が迫ってきていた。
どうやら遠くの怪物の置忘れのようだ。
「うわああああああああああああああああ」
青年は恐怖を感じ、思わず叫んでしまう。そうすると。
体中からの電気を発し、黒い影にも電気が走った。
その電気により、黒い影は消滅した。
「嘘だろ、俺から電気が」
そういうと青年は気を失い、再び眠りにつく。
看護師さんが駆け寄る。
「大丈夫ですか?担架をお願いします!」
その後青年はしばらく目を覚ますことはなかった。
彼は永遠の影後、電気を発することが確認され、とある研究室に搬送されることとなる。
そして、永遠の影事件が終結して間もない時間。
「ふむ、この場所であるかな」
サターン帝国・闇でもない地獄組織メゲルドンでも、宇宙帝星国GAXAでもない、未確認生命体が永遠の影を葬った先に赴いていた。
手を地面に向け、ある言葉を唱える。
「コネクト」
そういうと倒された永遠の影、エターナルシャドウの力を自身の手の中に刷り込む。
「これで永遠の影は手に入れたぞよ」
そういうと、次の場所へと向かう。
「この地球には倒れてた怪人のデータが多い、わらわの怪人再生能力、この地で試すにはふさわしい」
エターナルシャドウを手に入れた後、永遠の影が封印された地に向かう。
「コネクト」
再びその怪人は、そういうとコブラアイスらEX部隊のデータを奪い取る。
「さて、次は」
その怪人は、ほかに倒された怪人の記憶をたどる。
それは、橋の下で倒されたGAXAのバジュラやサクジョ、メゲルドンの幹部ら
とあるビックサイトでのGAXAのラタテュースなど、かつてぎゃわれマンらに倒された怪人のデータを奪う。
「最後は」
ぎゃわれの部屋にたどり着くと、眠っている時間を狙い、寝ているぎゃわれ、ポル、フラグたん、イカ息子を起こさないよう作業に取り組む。
「コネクト」
そういうと部屋で倒されたサターン帝国・闇の怪人のデータを奪った。
「ふむ、こんなものか」
そういうとその怪人は部屋を後にする。
「これだけの怪人がそろえばもう十分、わらわの計画、BURST計画の助けになってくれよう」
怪人はそういうと手をかざす。
「コネクト」
怪人は地獄組織メゲルドンのボスであるブラックゼロ、EX部隊コブラアイス、GAXAラタテュースを再生させる。
「ここは一体」
「なぜ、生きてるんだ」
「誰だお前は」
ブラックゼロとコブラアイス、ラタテュースは倒されたはずの自身たちが生きていることに疑問をもつ。
「わらわはヨミ、怪人再生能力者のヨミだ、これからはわらわの下部となり、BURST計画を手伝うのだ」
「BURST計画?」
3体の怪人はヨミという怪人の言葉とその圧倒的存在感と能力に脅威を感じる。
「ふふふ、頼んだぞ」
そう微笑むと、これから起こるであろう計画遂行のために動き出そうとしていた。
「あとは器だけ...」
ヨミはそうつぶやくと3体の怪人を引き連れ、どこかに向かいながら進行するのだった。
【次回作 「ぎゃわれマン エピソードヨミ」につづく】




