主人公についてのあれこれ・生前の姿
主人公 1
月代典仁
オユキの生前の姿。
高校進学直前に両親が失踪。行方を捜す者の、終に判明することは無かった。
両親は働いている姿は見る事が出来なかったというのに、生前に贈与された資産はすさまじいものであった。彼がその生活に困らないと、そう誰でも理解ができるほどに。
失意にくれた高校生活、それでも持ち前の社交性で、どうにか乗り切りつつも、家に帰ると空虚なそこで寂しさを紛らわせるためにと、ゲームに没頭するようになる。
友人も多かったのだが、そもそもそんな事が起こってしまえば腫物扱い。気を遣われているのも分かるため、それに突き合わせるばかりが申し訳ないと、一人で時間を過ごすためには、実に都合がよかった。
大学進学から少しして発表されたゲーム、世界初のVRMMOと呼ばれたゲームにはまる。
両親の遺したもの、その中にはこの世界によく似た、流用されているのでは、どころではなく間違いなく関わっている、そう信じさせるものが有り、なおの事この世界、ゲーム、それを隅々まで調べようと熱意を燃やす。
そして、ミズキリ、彼は知らないが従弟との出会い、両親の遺したもの、ゲームの設定だけではない機器の設計資料など、そういった諸々を見つけてしまった事で、その熱意はさらに加速する。
それらの資料を基礎として、VRMMOとしての専用筐体、それを流用するサービスの開発を行い、世界で初めて7人の天才、その後追いが出来た企業として会社を成長させていく。
その果てに出会った、たった7人の源流開発者、その中に両親と分る姿も、名前もなかったのだが。
改派陰流、大目録
刀術、棒術、当身術の3目録を取得。印状を得るには暗器術が残っているのだが、ゲームで使う予定も無く、どうにも正確に会わなかったため学ばないことにした。
その時間を刀術、太刀、剛剣にあてたため、事それを用いてであれば妻から極稀に試合をとる事も出来た。戦績はもはや数える事は諦めた。数千回の負けと、3桁に届かぬ勝利、そこには埋めようのない差がある。
師範代である秋守榛花との結婚については、義理の父や道場の兄弟子たちに散々やられることになるかと思いきや、榛花の手によってその全てがねじ伏せられる。
道場に大の大人が転がる中、模造刀を片手に立つその姿に、敵わないと、そんな思いをしっかりと刻まれた。
主人公 2
秋守榛花
トモエの生前の姿。
古めかしい武術を伝える道場、その長女として生を受ける。
5歳の時、生まれるはずだった妹が病弱だった母と共に、その姿を見る事も出来ずに亡くなる。
父の嘆きは深く、彼女にしても、それを当時理解は出来なかった。
残った家族、そのコミュニケーションツールとして家が伝える武術を始める。
刀を振る、それに没頭している時だけは、どうにもならない虚無感を忘れる事が出来たのだから。彼女だけでなく、その父親も。
月代典仁と出会うまでは立派なコミュニケーション障害を抱えた人物として育つ。言葉で話すよりも剣を交える、その方が互いに理解できると、そう信じて憚らないほどには、立派なアレとして育つ。彼女の父親にしても口数が多い人物ではなかった、それがあまりに悪い方向に働いた結果として、セメントな人格が形成される。
道場に何をとち狂ったか、ふらりと訪れた月代典仁の面倒を見ることとなり、そのあまりにあまりな生活を聞き世話をしなければと使命感を燃やす。
それは、体の弱い母への者であったり、もしも妹が生まれたら行いたかったこととして。
代償行為の果てに、いつからかそこには愛情と呼べるようなものも育っていった。なお彼女から押しかけて婚姻までこぎつけた。
改派陰流 免許皆伝。
小、中、大、の目録と印可、その先に、内伝、口伝がありその果ての皆伝。
当時の世界では、そこまで傾倒するものもほとんどおらず、碌に宣伝もしていない流派であるため、彼女の孫娘がなにを思ったかドはまりするまで、師でもある父亡き後、他に皆伝は道場に居なかった。
半生を武に捧げ、40目前でどうにかそこまで至ったというのに、碌に運動もせずに20近く、そこから日に少ししか練習しなかった典仁があっさりと目録を得たことに驚く。
実際の所、才覚という意味では、典仁の方が彼女よりも上なのだから。なおその才能は孫娘に受け継がれ、更には榛花を超える熱量で没頭した末、20後半で免許皆伝という化け物が後に誕生する。
娘からは、何度も相談を受けるが、孫本人が家出と称し道場に泊まり込みを始めたあたりで、周囲が諦めた。