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3話 街に出かけよう


「本日護衛を担当します、司書隊一番隊所属ベンハルト・アトキンスと申します。よろしくお願いします」

黒髪にをセンターに分けていて、何を考えているのかわからない生気のない瞳が特徴的だ。司書隊の白を基調とした隊服は来ておらず今回は、私服で警備をしてくれるらしい。武装司書は街でも目立ち、こちらの行動も余計目立ってしまうため今回は私服だ。


「こちらこそ、ご足労いただきありがとうございます。私はリヴォフ家当主、バルトロメイ・リヴォフ、こちらが妻のエレーナ、娘のフェオドーラです」


まさか、ただの街に出かけるのに武装司書をお父様が雇うなんて…!いくらしたのだろう、と脳内でそろばんを弾いてしまう。



「お父様、ビシャモンは?」

「ビシャモンには館でお留守番だよ」

なるほど。それで武装司書を雇ったのか。


「今回は、国王の命令ですよ、フェオドーラ様」

「顔に出ていたかしら?」

「ええ、はっきりと」


いや待ってくれ、国王の命令だって!?たかが一人の令嬢に!?


「国王は脅迫状のことについて心を痛めております。せめて安心して過ごせるように、と僕を派遣した次第です」

「また顔に出ていたかしら?」

「フェオドーラ様は嘘がつけない性格なのですね」


何だろう、守ってもらっているのは嬉しいがなんかとっても舐められている気がする。いや、こんな非力な女子だししょうがないのだが、なんか腑に落ちない。


「それでさ」


「ラヴェンティ・ローゼンです。よろしくお願いします」

「シエル・アルムリッドです。よろしくお願いします」


「二人もいるのね」

「俺暇だったし。おじ様に誘われたら来る以外の選択肢ねぇだろ」

「僕は、純粋にドーラを守りたいって思っているだけだよ」

「うーん。さすが我が娘、モテモテでパパはヤキモチ妬いちゃう。ちなみにドーラの本命はラヴェンティくん、シエル、それともエル様?もしてダークホースのベンハルトくん!?」


なんか癖の強い男が集まって、カオスな空間が生まれた気がする。

「あのね、私の本命は…」

と言おうとするとお母様が私に被せるように言う、

「バルトロメイ様、あまりドーラを弄ばないで下さいな。皆様、今日はお集まりいただきありがとうございます。そして、我が娘フェオドーラをよろしくおねがいします」


お母様がこの場を取りまとめた、母は強し。母と腕を組み、街を歩く。


「ラヴィは寄りたいお店ある?久々の街でしょう?」

「俺は特にねぇな。あまり欲しいものもねぇし」

「シエルは司書隊の勤務はまだなの?」

「うん、学校の学期始まりと同じ時期に入隊だよ」


「………………」


…こいつら全然仲良くないのだった。

シエルはラヴェンティのことを好いているが、ラヴェンティにとってシエルは目の上のたんこぶだ。シエルはすぐに誰でもからかうため、プライドの高いラヴェンティにとっては耐えられないものもあり、鬱陶しい存在らしい。


「シエル、お前は本当に嫌われているのだな」

「ベンハルト先輩、心外だなぁ」

「心外とも思ってないだろ。何考えているかわかんなくて本当に気持ち悪いな」

「僕って気持ち悪いですかね?」

「お前の兄貴に似て人間らしさを感じない」

「兄さんよりも人間らしく生きているつもりですけどね」

「そういうところが気持ち悪いんだ。人間らしく生きているつもりとかじゃなくて、必然と人間らしく生きるものだろう」

「確かに、勉強になります。先輩」

シエルはベンハルトに乾いた笑顔で笑いかけた。



「き、綺麗…」


街中の宝石店に展示されている青い輝く宝石のネックレスに見とれる。お父様がくれたあの白いドレスに合うだろうなと考えてしまう。


「ドーラの瞳の色に似た宝石だ。君の瞳には負けるけど美しいね」

私の隣にシエルが立って、一緒にショーケースを見る。「プレゼントしようか?」とシエルが聞いたが私は首を横に振った。


「私にはもったいない宝石です」

そういった私をラヴェンティは見つめる。


「どうしたの?」

「お前って欲しいものとかねぇわけ?」

「欲しいもの?あるわよ、本とか」

「色気ねぇな」

「そんなのどこかに忘れていってしまったわ」



「うちの娘は物で釣れないわよ?」

「お、おば様!いや、俺は物で釣ろうなんて…」

「ラヴェンティ君も苦労するわね。あの子マイペースだから」

「それがあいつの良いところです。それに、俺はあいつの自由さ、憧れます」

「…ドーラはこんなに想われて幸せ者ね。母としてこんなに嬉しいことはないわ」

「おじ様やおば様に想われているだけであいつは十分幸せそうですよ」

「……あの子我慢してない?」

「我が子が実の親に我慢する理由なんてあるのですか?」

「そうよね」

「関係のないものがこんなこと言うのは烏滸がましと理解しています。でも、一言だけいいでしょうか?あまり、フェオドーラに遠慮をしてあげないでくれたら嬉しいです、あいつ、それでたまに寂しく思っているみたいで。…マダム、無礼をお許し下さい。」

「…ラヴェンティくぅん!」

「っはい!」

「なんて素敵な婚約者なのかしら、きめたわ、私はあなたとドーラを応援します。あなたとなら、あの子は幸せだわ!」

「えっ、いや」

「そして、ありがとう。あの子がいい子すぎて、こんな親でいいのかしらって引け目に思ってもいけないわよね。誰かにこうやって言ってもらわないと、自分のこと客観視するのは難しいわね」

「いや、俺はただ…」

「あと応援者からのアドバイスよ。ドーラは多分あの宝石を欲しいと思っているわ。今日の帰りにでも私が買おうと思っていることだけ伝えておくわね」


そう言って、エレーナはラヴェンティの隣を後にし、自分の旦那であるバルトロメイの隣に行った。


「…親子だな」


アトキンス物理化学

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