表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

どこでもあること

作者: 梟

初ホラーの初短編です

ん? おばさん、急に声を掛けてきたけど、何の用?

え? 息子さんが死んだ?

それは大変だけどそれと俺に声掛けるのに何の関係があるの?

……

………

あの駅で事故死したのか… それは運が悪かったね…

? どこで調べて来たんだ?

ふーん、新聞記事でね…

まぁ、良いや… 話してやっても良いけど、飯奢ってくれない?

あ? ОK? 


……

………

いや~、奢ってもらって悪いね~

なんせ、高校を中退して働き始めてバイトで食い繋いでいるからね

なぜって?

あんたが聞きたい話と関係あるのさ…



もう6年も前になるか…

俺もあんたの息子と同じようにあの駅を使って学校に通っていたんだ…

田舎と都会の中間位の街だったけどさ… 地域の結びつきが強い場所だったよなぁ…

俺は高校進学を機にその街に家族で引っ越したんだけどさ、みんな良い奴ですぐに打ち解けたよ

で、もちろん仲間と一緒に電車に乗っていたんだけどさ…

あの夏の日… 忘れもしない7月18日だよ… 

あの日、俺はいつもと同じように友人と一緒に電車を待っていたんだ…

前日にやったTV番組のことをワイワイ話しながらも、ふざけることなく待っていたんだ…

そんな何処にでもいる高校生グループだったんだ…

周囲にもそれなりに人がいてさ… 誰も迷惑な様子も見せてないかったんだ…


で、列車がホームに近づいてきた時だった

急に小さく声が聞こえたと思ったら、背中を強く押されてホームから転落した

一瞬何が起きたか分からなかったよ

でも目の前に電車が近付いてきているし、死に物狂いで退避場所に逃げ込んだ…

目の前に列車の車輪が見えて、自分が生きていることが不思議に思うくらいだった

今でもあの時の恐怖を思い出すと、震えそうになる…


その後、誰かが押したことが分かれば良かったんだがね…

勿論、駅のホームに上がった時には大騒動だったさ

でもな、みんなが助け出された俺を見ているんだけどさ、助けに来た駅員もどこか冷たい目をしていたのが気にはなったけどな…


で、その後はお決まりの警察からの事情聴取だったんだけどさ…

ん? 結論を言え?

分かったよ…

結論から言えば、「ふざけていて自分から落ちた」ってことになった

いくら俺が押されたって言っても警察は信用してくれないし、目撃者全員が、俺の友達だった奴らまで俺がふざけて落ちたって言ったらしい

あ? あんたも疑うのか?

違う?

……

そうか… あんたの息子もふざけて落ちた事故で処理されたのか…

ん? そうだよ… あの駅での出来事は全て事故で済ませられる…

特にあの時期に起きた事故は絶対な…

ああ、あんたもどうしてこうなったか不思議に思って調べたのか…

で、ぶち当たったのが俺か…

そうだな、話しておくか、それが俺の役目だろうからな…


……

………

あの土地はさ、昔から人柱信仰があるのさ

一年に一度人柱を捧げることでその地域の安寧と豊作を祈っていたらしい

それが現代では地域の安寧を願って行われているらしいんだよ

実際に洪水や大雨、地震などの天災も、大きな犯罪も起きたこと無いから、ずっと信じられているんだろうな…

でも、今じゃ人柱なんて認められる訳がない

だから、ひっそりやっているんだよ…

地域の外から来た奴を事故に見立てて殺してな…

一番、都合が良いのがあの駅での事故ってわけさ

そう、つまりあんたの息子は人柱にされたのさ…

今考えると分かるんだよなぁ…

あの時、後ろから俺を突き飛ばしたやつはきっと「これで今年も良い年だ」って言っていたんだ…

……

ん? 帰るのか?

そっか、奢ってもらってありがとうな

引っ越すか… それが良いだろうな

でもさ、気をつけろよ?

何がって… あんたもお人好しだな…

あの風習が残っているのがあの街だけだと思うか?

良く調べると分かるんだよ…

毎年、同じ日付に同じ事故が起きる街が多いってな…

だから… 次に行く街も本当に安全か分からないだろう?

……

ああ、そうだな、十分に気をつけろよ?

それと頼んでばかりで悪いが、一個伝えておくぜ?

今後、あんたに話を聞きに来る奴がいたら同じように注意してやってくれよ?

何せ、俺にこの話をしてくれた奴は同じように注意してから1週間後に死んだらしい

その前の奴もそうだったらしいぞ?

その前の前も、更に前もな…

迷信って言いたいんだろ?

だったらそう思えばいいよ

でもさ、きっと分かるよ、あんたにも…

それじゃあな… あんたに話を聞きに来る奴が来ないことを祈るよ

……

俺?

はっ! 何のためにバイトで食い繋いでいると思ってる?

いつでも逃げる準備は出来ているんだよ!

特に車通りの多い所や、電車には気をつけろよ? 

俺はあれ以来、電車は使ってないけどな

あんたは自分のことだけ気にすればいいんだよ!

飯、ありがとうな…




1週間後

私の目に留まったのは1人のフリーターが、踏切で電車に跳ね飛ばされて死亡したというニュースだった…

「引っ越してきたばかりで」と言う近所の住民の口元が少し笑っているように感じたのは、私だけだろうか?

気が向いたらブクマをお願いします…


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ