猫宮さんは助けたい
俺もローマにされたようだ
お前だけでも逃げろ
台風はもう要らないです
俺が教室に入った途端フシャーと威嚇された
先に入った先輩は何も言われたりしなかったので腑に落ちないなと思ったが思い返してみると手を下したの俺だけだったな
そもそもシントに手を出したぐらいで警察呼ぶぐらいのピント外れの変人だしどうでもいいか
「猫宮さん、こちら私のお父さんとお母さんです。目に余るようだと閉じ込めます」
閉じ込めるのか部屋は多いもんな
「え?カミサマの親?カミサマに親って、え?」
何度も何度も視線が俺達と真鏡の間を行ったり来たりする
「あれ?話し方も変わって、え?カミサマに親?」
巫候補は混乱している
愛染が前に出てきた
「猫宮ちゃんいいですかぁ?この人達は民間協力者なんですぅ。それがたまたま鏡移すカミサマのご両親だっただけなんですよぉ。なので揉めると大変なんですぅ。解ってくれますよねぇ?」
「カミサマに親って何それ。どういうこと。解んないよ助けてお姉ちゃん」
巫候補の目がぐるぐるしてるけど大丈夫なのか
「ボクたちに不満があるそうだよ、後輩くん」
『カミサマに親がいるなんて言われたら普通は混乱しますからね、先輩』
どう考えてもこちらがおかしいからな
これに関しては巫候補は悪くない
「以前に教えたようにあなたのお姉さんは既に華裂くカミサマに取り込まれてしまっています。なので今のあなたを助けに来ることはありません。どうしても理解出来ないようなら別の候補が取り込まれた時の映像を持ってきましょうか」
映像?華裂くカミサマのか?気になるな
そして巫候補がぐすぐすと泣き始めたんだけど
もしかして気を張り詰めていたからあんなにも攻撃的だったのか?
「まだお姉ちゃんいるもん。私と話してくれたもん」
駄々っ子みたいになってきたぞ、大丈夫なのか
「あなたのお姉さんの記憶や知識を利用しているだけです。あなたのお姉さんは他の巫候補同様の状態です。助けられるかどころか意識が残っているのかすら不明です。形が多少似ていてもあれはそう再現されているだけです」
形が似ている?わざと犠牲者と似せた何かがいるのか
俺達並みの悪辣さはありそうだ、警戒度を上げておくか
「でもお姉ちゃん、頭撫でてくれたよ。居なくなる前と同じ笑顔だったよ」
ボロボロと泣いている
うーん?口出ししていいものか
「わたしも映像を視たから言えますけどぉ。あれ言ってしまえば華ですよぉ。割れて蔦みたいなのがわっと出てきて凄かったんですぅ。猫宮ちゃんはまだ調整中だったから取り込まれなかっただけなんですよぉ」
蔦?調整?なんだか俺だけ置いてきぼりになってるんだけど
真鏡がこちらを見てきた
「お父さんには必要ないかもしれないけど伝えておくね。市長は巫や候補を薬で調整してから華裂くカミサマに取り込ませていたみたいなの。たくさんの人が混ざっているから今は混乱しているけどそのうち再誕するかもって話になってるよ。今は市長が考えてる通りになってるみたい。それで取り込まれた子たちに獅堂さんの知り合いが何人かいてその想いが合わさって強い執着になっているみたいなの」
自分の知り合いの女の子達の外見と記憶を持ったカミサマとは獅堂も大変だ
どの程度混ざっているのか解らねぇから俺の力で分けられるかは見てからだな
ドロドロからも形ぐらいは戻せたし何も出来ないなんてことは無い思うが
「お父さん、今考えてることってほんと!?」
ん?真鏡が驚いている
そりゃあ水気がそこにあるならそれを取っ掛かりにして元々の物と追加された物を区別するぐらいのことはできる
区別さえできれば明確に分けることもできる
植物がベースのカミサマだから効果覿面だろうな
人と植物の違いなんて明確だしな
最悪水気を奪い取って枯らしてしまえばいい
周囲の人も巻き添えになるからおいそれと使えないだけだからな
「助けられるかもしれないんだ」
『取り込まれた人か?完全に融解して混ざっていても分けるだけならできるぞ。以前にやったらできた』
「そういえばあの時の後輩くんは目が死んでいたね」
めちゃくちゃ面倒だったからですよ
普通の人は混ざってしまった水溶液を区別したりまして分けたりなんか出来ないですからね
「竜胆先輩、確認してもいいですかぁ?」
愛染の目が爛々としている
生気が戻った?なんでだ
『解ることなら』
「その時にカミサマに混ざっていた人ってどうなったんですかぁ?分けても助かりはしないんじゃないですかぁ?」
『ちゃんと人型に納めたぞ、先輩に人体について勉強させられていたからな。結果は人によりけりだったな。既に自意識すらない奴らが多かったか。そういえば他の奴と完全に混ざってしまっているのがいたな、あれは家族で水気が近かったせいだったな。他には外と中が別人というのもあったな、これは外が不足していたからだったな。空っぽの奴に入っちまったんだよ、たまさか相性が良くてそのまま固定されちまったんだ。それ以外の奴らは消耗は激しかったが復帰はできた。PTA?とかいうので困ってるらしいけど』
「お父さんそれはたぶんPTSDだよ。その力で気をつけるのは周囲だけ?時間が必要だったりする?」
特に準備に時間が必要だとかはないな
あと俺よりも真鏡のほうが明らかに賢いな
まあ伝えるべきことはある
『形態維持に気を使うのと操作する時に対象に触れないといけないからそこが注意点だな。消耗は数による』
まあそれらも何とかなるんだがな
真鏡と愛染が考え込み始めた
そして言っておかないといけないことがある
『最も重要なのは見るからに化け物だから攻撃しないように厳命してもらわないと困る。あと助けた奴が文句言ってきたり、死にたいって言ってきたら即切る』
「後輩くんのあの勇姿が見れるならカメラの準備が必要だね」
「やっぱり負担は大きいんだ。お父さんって人やヒトよりカミサマ寄りなんだね。少し嬉しいな」
そういう真鏡は人に感性が近すぎる気がするな
形態変化中は俺がイラつくと他の助かりたい奴らに支障を来たしかねないから気を散らすと大惨事だ
わざわざ力を使うなら助かりたい奴らを優先すべきだろ
「お姉ちゃんを助けて」
巫候補がこちらに来た
まだ泣いてやがる
ミネラル流し続けるのは好ましくないんだがなぁ
『それは獅堂の役目だな。俺は暴れて斃す方が得意だからな。力を使って助けるかどうかはその時の状況と気分次第だ』
「お父さん、最初に助けてあげるのは難しいの?サポートなら私がするよ」
『それはイコール俺の力を温存することになるぞ、ちゃんと理解しているか?それに第一目標にしてしまうと必ず助けられるんだと余計な希望を持って攻撃を躊躇する奴がでるぞ。それで無駄に時間をくって結果的に犠牲者が増えて助けるのも間に合わないなんてこともあり得る。できるかもしれないを当てにして作戦に組み込むな』
真鏡の言うことといえどきちんと突っぱねる
何ひとつ残っていない可能性もあるんだ、希望を持つのはいいがそれを第一目標にするのは違う
予想が外れた時の士気に関わる
あくまで目視で状況を確認した時に僅かでもその可能性があって更に余裕があればだ
そして真鏡に対して不安を覚える、人に寄りすぎている
後々に何か問題が起こるかもしれない杞憂だといいんだが
ここまで人に寄っているのならいっそ学校にでも通わせるように相談してしてみようか
ある程度の常識は持ち合わせているようだし無茶はしないだろう
俺や先輩が居なくなった後に暴走されるのも癪だしな
そういえば伝わってしまうんだったか何かショックを受けたような顔でこっちを見ているな
『先ずは映像を見せてくれるか?それで少しは情報を得られるだろ』
「ならボクはそろそろここを離れようかな」
俺は止めるつもりが無いので先輩をお母さんを止めたいなら頑張れ真鏡
先輩を野放しにすると大変なことになるぞ愛染と巫候補も頑張れ
ご拝読ありがとうございます
不穏そのものの先輩
後輩くんはなんだかんだで先輩の行動を肯定してしまうのでこういう時に頼りになりません
市長はヤベェ奴なので
別に先輩に唆されたとかではなく得た情報で自分のやりたい放題にやって来た人なので
どれだけの犠牲を出そうが関係なくステップアップして次のステージに上がろうとしている人なので
明確に人類の敵
こういう奴ほど普段の外面はいい