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カミサマのかぞえかた  作者: 蜉蝣丸
17/53

カミサマと騙ろう

ドラ娘めんどくさい伝説

これ来年もやらされるの?


そろそろ周回を本格的にしないと50箱ぐらいで終わってしまう

この場で五十嵐だけがまともなんだろう

俺にもそう思っていた時期があった

目の前の展開に思考が追いつかない

奴は現れたカミサマに土下座していた

他ならぬそのカミサマがご立腹だからだ

俺たちに対する態度が気に食わなかったらしい


「鏡移すカミサマ、どうかお許しを」


土下座して外見少女に頼み込んでいる

敵と見定めた相手のあんまりにもあんまりな姿に胃がキリキリと痛む

件の少女はその後頭部に足を乗せ


「まだ図が高い、めり込め」


そのまま足に力を込めて五十嵐の頭を床にグリッと押し付けた

物凄く先輩の血を感じる、本当に先輩の子なんだと理解させられてしまった

そしてこめかみがズキズキと痛い


「ありがとうございます!はい!ただいま」


なぜそこではお礼が出る

胃がさらなる悲鳴をあげる

その痛みはまるでギリギリと捻られているようだ


「羨ましいッス!俺もそのあんよで踏まれたいッス!お願いするッス!」


そう言いながら五十嵐の横で土下座し始めた

お前まで来るなややこしくなる

そこのカミサマもそれならと律儀に踏むな

五十嵐は床に頭をグリグリと押し付け始めた

え?ほんとにやるの?泣いていい?

先輩を見ると興味深そうにしていた

これははじめての味だじゃないですよ

獅堂に視線をやると目を逸らされた、小さくすまないと聞こえた気がする

もはやこれまでと愛染を見る


「あの男は人間に協力してくれる鏡移すカミサマに心酔しているんですぅ。あのカミサマからの暴力や暴言がぜーんぶご褒美になっちゃうんですぅ」


『対策課のエージェントがカミサマに心酔っていいのか?あと心酔と言うよりはもっと悍ましい何かだぞ』


どうやら件のカミサマは五十嵐に俺へ謝れと言っているようだ

頭を上げかけた五十嵐に対してまだ反省していないのかとばかりにその顎を蹴り上げるカミサマ


「がはっ……ありがとうございます」


遂に涙を流しながらお礼を言い始める五十嵐

やめてくれ、お前のそんな姿は見たくなかった

愛染がその冷たい眼差しをこちらに向けてくる

こいつの目が常に死んでいるのってもしかして


「竜胆先輩は自分達が死地にいる時に助けられたらどう感じますかぁ?」


なるほどそれは納得できる

だが眼前の地獄絵図には繋がらない気がする


『まあ恩を感じるな、他ならぬ先輩に対しての俺がそうだしな。でもあれは酷すぎないか』


「壊滅必至だった部隊が全員生還できたッス。その時に鏡移すカミサマがひ弱な人類に手を貸しにきたと言ったそうッス」


片割れがいつのまにか二足歩行に人間に戻っていた

そしてお前とは距離を取ることにしたから話しかけないでくれ


「鏡移すカミサマは戦闘能力よりもその優秀なサポート能力が正しく人類の救世主なんですぅ。相手の大まかな危険度が解ったり、遠く離れた場所に部隊丸ごと鏡を介して移動させたりとかぁ。制限はあるそうなんですがぁ。どうしてそこまで手を貸してくれるのかを聞いた時にそう頼まれたからって答えたそうなんですぅ。」


「ああ、それはボクだよ。統合政府に入って人類への協力とボクの邪魔をしてくれと頼んだんだ。それよりも名前は決まったかい?」


なんでまたそんな面倒なことを頼んだんだか

あれ?こいつら今の先輩の発言に反応しないな

名前、名前ねぇ?


『真美鏡からとって真鏡まみとかですかね』


「ボクにはそういうのが解らないからね、それでいいか聞いてみようか」


『ところで何でまた俺が父親認定されているんですかね?あと娘でいいんですかね?』


疑問は聞いておくべきだろう

何か齟齬があると致命的になりかねない


「娘かどうかは知らないね。どちらでも構わないだろう。ほら前に割って食べた時に後輩くんはすぐに吐き出したじゃないか?口の中を切ったんだったかな。あの時の欠片に血が付いていたんだよ。回収して見ていたらその血を吸っていることに気がついてね。そこにボクもドバッと流し込んでみた。」


何してますん


「するとね驚くべきことに手の平サイズの人型になったんだよ。その上にその時点で言葉を理解していてね。何処からその知識を得たのかは解らないけれど新しい味が見つかりそうだから育てていたんだ」


いや、本当にに何してますん


「聞いてみたところ他の鏡を吸収することで成長するということでね。曰く付きの鏡を吸収させてみた結果だよ」


やらかしていたことだけが解った

どうしたものか


「父上、先ほど挙げていたのが我の名で良いのか」


近くまで来ていた

気配が解りにくいな

そこに居るようで居ない、居ないようで居る

いやカミサマだから在るか


『まあお前がそれでいいなら竜胆真鏡を名乗ればいいよ』


「うむ、では今より竜胆真鏡を名乗ることにしよう」


気に入ったのか笑顔になった

そして本当にカミサマなのか疑問が出て来た

カミサマってこんな感情豊かじゃないよな


「これは父上の血の影響と考えられる。母上には無縁であるが故」


なんか堅苦しい

もっと気楽でいいんだが


「素敵な名前をありがとうお父さん。こんな感じでいい?」


お、いい感じだ

もしかして俺の思考を読み取っているのか?


「うん、解るよ。お母さんのは解らないけど」


繋がりは先輩の方がありそうだけどよく解らないな


「お母さんはいつも一度にたくさんのことを考えてるから、難しいの」


成る程、常に余計なことをしてやろうと目論んでいるわけか

とりあえず情報交換するか

といっても俺はほとんど情報を持っていない上にこの街を理解しているとは言い難い


「お父さんが見てきたことはもう確認したよ、だから私が知っていることでお父さんに必要そうなのを後で伝えるね」


頭脳労働が苦手な俺にそれは有難い

なら今日は休むか?


「竜胆はもう自分の子だと受け入れたんだね、その適応力は素直に尊敬するよ」


獅堂が復帰してきた、俺もお前を尊敬しているぞ


『俺だってあんな奴やこんな奴らと共に居られるお前を本当に尊敬しているぞ。まあそれはともかくカミサマとは言え俺の子だそれなりにしてやってくれ』


よくそれぐらい察しろとか言う奴がいるがこういったことは口に出した方がいい

だからあえて口にする


「解った、今後はまず竜胆の娘を前提として対応するよ。真鏡ちゃん敵意を持っていてすまない。直ぐには変えられないと思う。それでも変わっていこうと思う」


「ありがとうございます。それを口に出せるあなたは強い人です」


俺もそう思う

こいつは怒りや憎しみや敵意を自分でコントロールしてしまえる

それだけだとただ我慢しているだけだから良いこととは思えない

でもそれらを自らの意思で一つ一つ乗り越えて変わっていけるのならそれはかけがえのない美徳だ

そして俺にはいつの日かこいつと敵対して殺されるんだろうなという予感がある

獅堂も気付いているだろう

それでも俺達と関わるのをやめようとしない

いっそ明確に敵対すればもっと楽に生きられると思うんだがなこいつも

でも諦めきれないんだろう

ご拝読ありがとうございます


後輩くんは娘を手に入れた


獅堂は運命に抗う


先輩は楽しみが増えたと喜ぶ


五十嵐さんは人に見せられない顔でうつ伏せのまま悦んでいる

どうしてこうなってしまったのか

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