彼方より此方へ
一騎討ち不発
うちのエルバサもげきおこ
お前そういうところだぞ
後輩くんの胃壁を削ろう
実質的な黒幕発言に反応する奴がいない
当然だと思っているのか
冗談だと思われたのか
それともまだ確定ではないからか
流石に聞こえなかったという事はないはずだが
さてどうしようか
とりあえず元の話を進めてみるか
『その言い方だと先輩がこの事件の黒幕も同然ですよね。今の状況で独自に動くと統合政府の監視対象になるのでは?それでも先輩はその選択を譲らないでしょうから、俺はここに残って獅堂達の協力に回りますね』
「黒幕とは何のことだい?そもそも統合政府がボクのことを監視だなんてできないよ。後輩くんの立ち回りはそれで頼むよ。追い出されるなら連れて行ってあげよう。」
黒幕と言うほどの仕込みはない?それとも惚けた?解らないな
そして皆が驚いて俺に視線を向けて来た
先輩の声だけが届いていないのか?どういう事だ?
追い出されるかあり得るな
まあ先輩は独りでも何かやらかすつもりだから俺まで野放しにはしないだろう
『で、どうするよ。詰問が先か?』
獅堂達がこちらに来る
「なぜこんなことを?竜胆のことだから理由はあるんだろう?」
黒幕について触れない、やはり聞こえていないのか?
「竜胆先輩は悪くないと思いますよぉ。性格が最悪でぇ、粘着質な嫌がらせが唯一の特技みたいなぁ。会話するだけでパワハラになる、五十嵐弥勒はそんな人ですからぁ」
「竜胆は合法ロリ先輩と付き合ってるッスか?羨ましいッス!俺も合法ロリ先輩みたいな彼女が欲しいッス!是非とも紹介して欲しいッス!」
君たちは意見を統一してきてくれない?
とりあえず獅堂にだけ返事しよう
『俺の過去について聞いてきたな。で、その時に何度も俺を挑発してきたからだな』
「ほらぁ。あの人ちくちくとお小言ばっかり言うんですよぉ。わたしにもせめて下着ぐらいは身に付けなさいとか言ってきたんですからぁ」
「俺にも業務中の職員をナンパするなって言ってきたッス!自由恋愛万歳ッス!」
それは小言ではなく常識的な話ではないのか
あれ?こいつらもしかして現状を理解していない?いやいや流石にないな
ないよな?不安になってきた
獅堂が振り返り五十嵐に問いかける
「五十嵐さんの方から挑発するような言動をしたという事ですか?竜胆の過去には触れないという話だったはずです」
おや、骨折が治っているな
愛染が何かしていたようだがこいつ自身がヒトの可能性があるな
あと俺の過去に触れないのは獅堂がそう言ったのか?
それとも統合政府の見解なのか?
「分断している状況で竜胆にだけ話を聞くことができるならそうすべきだと判断をした。疑問に思っている職員は多い」
「そういう声があるのは知っています。でも聞くのは時期を見て先輩と一緒にという話のはずです。せっかく竜胆だけでも協力してくれる気になってくれていたのに余計な欲をかいて火種を作らないで下さい」
「欲ではない。必要だからだ」
「それで先輩達と敵対してしまっては意味がないでしょう。共に進めるなら手を取り合うべきです」
「君のそれも彼らへの不安と不信が増す原因なのだがね。本人達には自覚すらない、私達にとってそれがどれほど恐ろしいことか」
先輩も口には出しているんだよな協力について、ころころ気分で変わるから信頼出来ないんだけど
本人が乗り気ならその限りではないが
五十嵐すら黒幕については触れない、本当にどういう事だ
獅堂は思っていたよりはこちらに立っているな、五十嵐を殺しかけたのに
あれか悪いと良いみたいな懐柔策、いや獅堂に限ってそれはないか
なら俺の日頃の行い、それもないな俺は悪だ
なら演技か素なのかは解らないが五十嵐は職員全体から嫌われている疎まれている立場にあると考えられるか
なんとなく演技の気がするな共通の敵を作って団結をってやつ
この場でだけでなく普段からずっと統合政府という組織の為に下敷きになり続けている
組織に必要な嫌われ役ってやつだ
忍耐の人なんだろうが俺なら即日逃げるような境遇
俺が先輩に感じているような恩なりなんなりがあるんだろうか
だが許さない、許されない
いつか必ずお前は殺す
お前は必ず俺達の敵になる
だから五十嵐弥勒は俺が殺す
よじ登って来た先輩に頬をつつかれた
「それは美味しくないよ。後輩くんはボクをちゃんと見るんだ」
マイペースですね
「彼らは放っておこうか。そして向こうから来たよ。今は会うつもりは無かったんだが仕方ない。ボクと君の血を受けて再誕し愛しの我が子になったカミサマに会おうか」
え?それ聞いてないです
再誕って何ですか
我が子って何ですか
内緒で俺にまで仕込みをしないで下さい
あのバシバシ叩かないで下さい
前を指差さないで下さい
先に教えて下さい
お願いします
流石に看過できません
前の方から浮遊してこちらに滑ってくるように向かってくるのがそうなんですか
何処と無く先輩に似ていますか
でも先輩よりは大きいですね
「おお、新しい味だ。困惑の味わいに似ているが困惑よりも遥かに美味だ。この味は本当に初体験だよ。後輩くんはいつもボクを楽しませてくれるね」
「子どもが居たんッスか!?そのサイズ差で信じられないッス!!竜胆は勇者ッス!!あれがその子ッスか?可愛いッス。お嫁さんに下さいッス」
聞かれていた
大学生活どころか私生活も詰んだ
あとお前はもうダメだ
「ちゃんと聞いてましたぁ?今のは産んだんじゃなくて血を与えたって話じゃないですかぁ。まあ血の繋がりがあるとは言えますかねぇ?そんなものが流れているのならぁ。そんなことより竜胆先輩、わたしとの間にもどうですかぁ?認知してくれなくてもいいですよぉ。先輩の子どもが欲しいだけなのでぇ」
ぐいぐいと身を寄せてくるが目は冷めたままだ
この娘、怖い
そして先輩からの圧が凄い
そうこうするうちに目の前まで来た
「便りのまま母上とお呼びしても?」
いきなり過ぎない
「好きにすればいい」
「ならば母上で。そして父上で宜しいか?」
こちらを見てきた
待て待て
『よろしくないです。説明を』
「我についての説明ならば母上に。父上が竜胆であるなら我も氏は竜胆と名乗るべきか。名を賜りたい」
「ふむ、なら鏡は入れたいね。どうしようかな後輩くん。名は体を表すからね」
どうしようも何も説明を先に
「どう見てもわたしたちの知る鏡移すカミサマですよねぇ。竜胆先輩はいつカミサマの親になったんですかぁ?」
知らないです、解らないです
それは先輩にお願いします
「なぜ人類に友好的なカミサマが君達を親として認識している。何をすればそうなる。何を知っている」
五十嵐が詰め寄ってきた、動揺している
解る、俺も同意見
だから俺じゃなくて先輩にお願いします
「竜胆が先ほど言っていたカミサマを割ったというのが何か関係しているのだと思う。それよりも名前がないのは確かに不便だ、竜胆達で付けてあげるべきだと思う」
待て受け入れるな
お前までこのカミサマが俺の子どもだと認識するのか
ご拝読ありがとうございます
みんなしてなかなか来ないから来ちゃった
人と交流できるほどなのでお名前欲しいなと親に対して思っておりましたが先輩は無頓着かつ持っていないので
お父さんにおねだり