夢■る■■■マ
後輩くんは恩と借りがあるので先輩を最優先にする
先輩は後輩くんと一緒にいると甘いので嬉しい
そこには歪だが確かな信頼関係がある
先輩が肩を竦め嗤う
やはり統合政府にあまりいい感情を持っていないように見える
友好的ではない
だが決定的に敵対するわけでもなさそうだ
「わざわざ自分で藪をつついておいてやはり協力できませんなんてことはないだろうね?五十嵐くん」
五十嵐が苦虫を噛み潰したような表情でこちらを見てくる
俺にやられた傷が痛そうだな、だが先に動いたのはお前だろう
これで俺や先輩に何か要求してくるなら当たり屋みたいなもんだよな
もう協力体制すら取れないだろう
それはそうと気になることと先輩に聞くことがあるな
「苦みばかりだね五十嵐くんは」
『そいつはもうどうでもいいでしょう先輩。とりあえず質問が幾つかあるんですけどいいですか』
「いいとも。是非とも聞きたまえ、甘い甘い後輩くん。ボクが答えたい範囲で答えよう」
知っていることでも答えられるでもなく答えたいか
その時の気分でかなり変わりそうだ
難しいな、とりあえず
『先輩のチェックは終わりましたか?』
「恙無く終わった。面白味は全く無かったよ。見学したかったのかい?なら後で好きなだけ調べさせてあげよう」
また変なこと言いはじめた
ほら獅堂が困惑してこちらを見ている
ここから見えないが熊はたぶんあの冷たい目をこちらに向けているだろう
瀬尾は羨ましそうに見てきていた、今後はあいつと距離をおこう
『遠慮しておきます。チェック中に協力についてやこの街について何か話しましたか』
「それは残念だ。そして世間話程度だったね」
先輩と世間話?本当に成立するのか?それ
獅堂となら多少は成立するのか?
『俺は少しこの街というか市長について聞きましたよ。その時に先輩は知っているはずという話がありました』
「知っていたね。もっと言えば今の状況に心当たりがある。それを確認しに行くためにも独りになりたい」
五十嵐がじっと見てくる、さっさと治療に行けばいいものをご苦労なこった
それともこの場で治療するつもりか?
熊が何かしているようだが
先輩は誰かか何かを知っているだけ?本当にそうか?
まあこれ以上聞いてもこれについては答えてくれそうにはないな
なら話を変えるか
『あの駅員は何なんでしょうか。倒したと思ったらまた出てくるし他にも殴ったら何か割れたような音がしたり』
無表情でその場に棒立ちの駅員について聞いてみた
全身どこにも僅かなダメージすら見えない
やはり何かがおかしい
「鏡移すカミサマの作った鏡を利用した虚像だね。ここは領域内だから実態があるように感じるだけだ。姿を移された実際の駅員さんには全く影響はないよ。そして後輩くんの聞いた割れたような音は本当に割れているからだろう。あまりに割りすぎると彼らの予測より早く突破されることになるからほどほどにね」
それは気をつけないとな
勢い余って準備が整っていない状況での決戦は勘弁願いたい
さて、そろそろ核心を聞くべきかな、答えてくれるかは解らないが
『華裂くカミサマは先輩の仕込みですか?』
「そうとも言えるし違うとも言える。市長にこういったカミサマが在ると紹介したのはボクだが今の状況はボクの手や誘導によるものではない。少なくとも人柱や贄を捧げるなんて無意味なことは勧めなかったね。きっと恩恵を受ける尤もらしい理由が欲しかったのだろう。カミサマともあろう存在が見返りなく力を貸してくれることに不安を覚えたのではないかとボクは推測したよ」
これは答えたと言ってもいいだろう
やはり先輩が黒幕だったんですね
ご拝読ありがとうございます
ただしお互いがお互いにめちゃくちゃめんどくさい
周囲に被害を撒き散らす信頼関係
巻き込まれる方はたまったもんじゃない
そもそもそれは本当に信頼と言えるのだろうか