未知の駅で猫が争う
後輩くんと先輩はどこにいるのか
今いるここはどこなのか?
熊が近づいて来る
ただしぬいぐるみとか着ぐるみとかそういう類の熊だ
パッチワークというか継ぎ接ぎというかチェック柄の賑やかな色合いだ
趣味で着ているのかそれとも悪辣なカミサマに祟られたかそれともまさか神様の禍だったり?
「おかえりぃ」
近くで見ると分かった中に人が入っている
口の部分から顔が見えているたぶん少女だろうか?
何処かで見たような朧げな記憶がある
「ただいま、まだ確定ではないんだけど言うなら彼らは協力者候補だよ」
「そうなんですねぇ。女の子は大学で見たきがしますぅ。みんなから先輩って呼ばれていた女の子に似ていますぅ」
「その人で間違いないよ、そして彼については君も知っているはずなんだけど見た目がだいぶ変わってしまっていてね」
「やっぱりそうなんですねぇ。先輩さん、わたしは愛染ささらですぅ。今はくまちゃんですぅ。竜胆先輩はイメチェンですねぇ。あと巫ちゃんおこですよぉ?」
愛染?誰だったか、聞いたことあるような
『普通に喋れんのなら黙っていてくれ、疲れる』
「ひどいこと言わないでぇ。でもなんかビビッと来ちゃいましたぁ。運命感じちゃいますぅ」
熊がこっちにぐいぐい来る
ふと顔を見ると目が冷たい、こちらを推し量っている気がする
何これ
先輩のスイッチも入ったままだし、怖い
「竜胆先輩はどうしてこの街にぃ?わたしはアルバイトで獅堂先輩の調査について来たんですぅ。その調査中にいきなり聴こえる……とか言い始めた時は何か再発したのかなぁ?とか思っちゃいましたよぉ。それで実際に倒れている女の子がいてびっくりしちゃいましたぁ。その時にすごくカッコいい人がいるなって見ていたんですぅ」
あ、嫌な予感通り越して悪寒が
「後輩くんはボクだけの物なんだ、近づくな」
ほらぁ!はいおしまい、これで幕引き
「モノだなんて竜胆先輩がかわいそうですよぉ」
どうして対抗するの
そしてどっちも目が怖い
「2人とも待つんだ」
獅堂が割って入ろうとするが先に熊が俺との間を詰めた
この熊、意図して無視しやがった
やっぱり関わっちゃダメな奴だ
「後輩くんが望んでボクの所有物になっているんだ、部外者が口を出すな。さっきも確認したからね、間違いないよ」
「無理やり言わせたんじゃないんですかぁ?竜胆先輩、慰めてあげましょうかぁ」
あ、これは無理だと後退りする
今度こそ獅堂が割って入ってくる
「2人とも待って、争うのはよくない。それに先ずは情報交換だ。反りが合わないなら仕方ないけれど協力し合うことは可能なはずだ。それぞれ別に動けばいい」
「わたしは竜胆先輩と一緒がいいなぁ」
感情を感じない無機質な目だ、怖い
「後輩くんはボクと一緒だ、これまでもこれからもずっと一緒だ」
憎悪すら見える澱んだ目だ、怖い
獅堂がこっちを見て来た、なんだ?
「先に確認しておきたい、竜胆は先輩と行動を共にするんだね?」
『そりゃあな、そもそもこの街に連れて来たの先輩だしな』
先輩が歪んだ目をこちらに向けて来ているのが見える
俺が獅堂の言葉を肯定すると和らいだ気がする
「というわけだ愛染。竜胆と先輩は行動を共にする」
「でもわたしだってぇ」
「時間は限られている、他に顔合わせして欲しい人もいるし情報交換を終わらせたい。この話は終わりだ愛染。こっちだ」
獅堂が話を打ち切って駅に向かって行く
そういえばなんで突然巨人もシントも消えたんだ?先に聞いておくか
『追っ手が消えたのはなんでだ?いきなり駅周辺に入った途端に消えたよな?』
「あ、それはわたしからぁ。ここの駅には別のカミサマが在るんですぅ。その領域を広げて貰ったんですよぅ。」
え、それ大丈夫なのか
「鏡移しのカミサマは人に対して害意を持っていないんですぅ。しかも統合政府に協力的なんですよぉ。そしてこここは既に鏡の中の世界なんですぅ。路地の出口のミラーを起点にして引き込んで貰ったんですぅ」
ミラーなんて覚えていないというか余裕がなかったな
そして鏡移しのカミサマって先輩が前にカチ割ったカミサマじゃなかったっけ?
ご拝読ありがとうございます
面倒×面倒=?
後輩くんは胃壁強いので大丈夫です
きっと顔色悪くても余裕です